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「沈黙を破る」先行上映会

昨日は十三の第七藝術劇場において、土井敏邦監督「沈黙を破る」先行上映会および、土井監督と岡真理さんのトークがあったので、参加してきた。
「沈黙を破る」というのは、占領地に赴いた経験を持つ元イスラエルの若い将兵たちのNGOで、占領地で自らが行った、あるいは経験した虐待、略奪、殺害等の加害行為を告白することで、イスラエル社会にパレスチナへの不当な占領に向き合うことを願っている。映画は、2002年の「ヨルダン川西岸」で起こったバラータ難民キャンプ包囲と、ジェニン難民キャンプ侵攻を追うと同時に、「沈黙をやぶる」元イスラエル将兵・・・ほんとうにみんな若い、20代の普通の若者だ。彼らがどんなふうに自分の良心を麻痺させ、絶対的な「権力」を持ってパレスチナ人に対して非人道的なことをやってきたかが「語られる」ついこの間までゲームで「戦闘」を体験してきた18歳ぐらいの若者が、本当の銃を持って人を「殺す」相手は人間ではないと感じるようにされてしまっているから、殺人ではなくなる。入植地に向かう道路に爆弾がしかけられないよう、両側の果樹を切り倒すこと・・・それはパレスチナ人にとっては、生活を破壊されることなのだが、イスラエルから見れば、軍事作戦を成功させただけにすぎない。
 これまで描かれてきたパレスチナは、破壊され、虐待され、殺され続けられてきた側からその悲惨さを描いたものが多いが、戦争というのは相手があり、イスラエルの側がどう苦しめている、あるいは自らを苦しめているのかが描かれている。多くのイスラエルの人たちは、パレスチナの占領に向き合おうとはしない。アメリカからの大量の軍事を含む援助をもってハリネズミのように武装しながら、なおパレスチナ人の「テロ」におびえ、憎しみ、相手を人間と思わない。「沈黙を破る」若者達がパレスチナの子どもを殺さないよう訴えると、「テロにおびえるイスラエルの子どものことを考えろ!」と怒鳴られる。「沈黙を破る」若者たちの親にも会って取材されている。このなかに小さなイスラエル社会がある。父親は息子を信頼するが、軍人には軍人の務めがあると主張する。母親は息子の苦しみを理解しようとするが、パレスチナの苦しみがあることが、息子を苦しめていることには気づかない・・・もっとも、気づいた母親たちは、自ら反戦のため、検問所の監視行動などを始めているが・・・。

映画は130分、終了後10分の休憩の後、土井監督(と言うよりジャーナリストなのですね)自らが今年ガザに赴き撮影してきた映像が紹介され、トークが始まる(メモとってないので、以下正確性に欠ける記述はお許しを・・・)まず初めに土井さんは、この映画をパレスチナ・イスラエル問題としては見て欲しくない。自らの加害性を問うことは普遍的な問題で、日本でも過去の戦争での残虐行為の問題があると切り出し、欧米の人達に見てもらいたいと言われた。
簡単な紹介の後、京都大学准教授の岡真理さんが始める。パレスチナ問題の本質・・・占領の不当性、占拠の不当性を語った後、日本ではイスラエルとは何か、イスラエル社会というのは何かというイスラエル学が成立していない。だからホロコーストを生き延びたユダヤ人がなぜ、パレスチナで残虐なことができるのかが分らないとした上で、イスラエルがアメリカの経済力・軍事力に支えられたシオニズム国家であることや、絶えず自分達がアラブ側からやられ続けているという意識を、教育やマスコミも使って浸透させている社会であることを指摘された。そして土井さんが日本の過去の加害性にふれたことを受けて、現在の日本の加害性について、たまたま北朝鮮ロケット発射問題があった日でもあり、日本では北朝鮮が怖い、恐ろしいとキャンペーンされ続けているが、北朝鮮側から見れば、日本はアメリカ軍が駐留し、その基地には核が持ち込まれているかもしれないわけで、この問題は現在の私たちの問題でもあると述べられた。(ここでちらほら拍手あり。私も過古だけでなく、現在の加害性に気づかないとあかんなぁと思ってたので、ちょっと拍手)
 あとは観客からの質疑応答に答える形で、例えばイスラエルの攻撃の前にはハマスのロケット攻撃があって云々については、ハマスのおもちゃのようなロケットとイスラエルの最新兵器による攻撃との非対称性の問題もあるが、その前に40年前、あるいは60年前の占領、難民化が問題なのであり、これをはっきりさせないで現象だけ見ても何もならないとか、占領というのは、真綿でジワジワと殺されてゆくこと、イスラエルは道路を自由に検問することが出来き、暮らしていくための移動でも何キロも迂回することを日常的に繰り返される、こんなことが何をもたらすのだろうか。戦争状態が終わると世界はまたパレスチナに対する関心を失うが、私たちはガザ(攻撃)の後を生きるのではなく、次のガザ(攻撃)の前を生きている、それがいつ、どのような形で起こるのか(起こらないのか)は、私たちのありようにかかっていること。占領にたいする抵抗とは、何も銃や爆弾を持って突っ込むことだけではない。そこで生き続けること・・・女たちは爆撃で家が壊され、家族を殺されても、家族のために料理や洗濯をしなければならないし、実際にしている・・・と、まあいろんな話を聞くことができ、非常に有意義な時間が過ごせた。
 映画「沈黙を破る」は土井さんの「届かぬ声―パレスチナ・占領と生きる人びと―」のシリーズ第4部にあたる。第一部は「ガザ―『和平合意』はなぜ崩壊したのか」第二部「侵略―イスラエル化されるパレスチナ」第三部「2つの“平和”―自爆と対話―」である。「沈黙を破る」は岩波書店から本が主出版され、また年末年始に様々なMLで回覧された、サイード・アブデルワーへド教授のメールをまとめた本「ガザ通信」(青土社)といっしょに、七藝のカウンターで販売されていた。最後、ずいぶん遅くなったが、サイン会なども開かれた。会場は劇場のイスの他、パイプ椅子も並び大盛況であった。

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» 映画「沈黙を破る」を見る [志村建世のブログ]
 東中野ポレポレで、昨日の朝日夕刊に評が出ていた土井敏邦監督のドキュメンタリー映画「沈黙を破る」を見てきました。イスラエルによるパレスチナ占領の実態を、イスラエル軍の退役将兵へのインタビューを交えて描いています。今日は初日で監督の挨拶もありましたが...... [続きを読む]

受信: 2009年5月 2日 (土) 21時54分

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