沖縄縦貫鉄道構想があったんだ
先日、「「たたかうユニオンへ」というブログを覗いてみたら、これが普天間移設容認の振興策?そうではないよね!仲井間さん!と言う記事があった。
鉄道、総事業費8600億円導入可能性、県が報告書というもので、もとネタは琉球新報のこの記事らしい。
鉄道、総事業費8600億円 導入可能性、県が報告書2010年6月30日
県は29日までに、沖縄本島を縦貫する鉄道導入の可能性を探る調査報告書をまとめた。報告書では糸満~名護区間(約81キロメートル)を整備した場合、総事業費8600億円、1キロ当たりの建設コストは105億円になると試算。費用に対する収益や利用者の移動費節減、渋滞緩和など、運用開始から50年間の費用対効果(費用便益比)は0・63で、事業化の目安となる基準値1・0を下回った。
1日当たりの利用者数は約17万5千人と試算。そのうち、8割近く(約13万5千人)を那覇空港~沖縄市区間(約25キロ)の利用者が占める。同区間は需要が見込めることから、事業費4千億円、1キロ当たりコスト154億円に対して、費用対効果は1・25と事業化の可能性が高いことが示された。

沖縄~名護区間(約46キロ)、糸満~那覇空港区間(約10キロ)の2区間は、それぞれ事業費3600億円、1千億円に対して、1日当たりの利用者数は2万人程度と低く、費用対効果は0・1にとどまった。
報告書では、いずれの区間も整備費が膨大で運行会社の負担が大きいことから「事業化が厳しい」とした。導入実現のためには「沖縄鉄道整備法」(仮称)などによる高率補助制度の創設が必要だと指摘した。

仲井真弘多知事は29日、県議会6月定例会一般質問で「沖縄に公共交通がない点から(国に導入を)主張すべきだが、(予算規模から)保守的にならざる得ない」と述べ、国の本格調査をみて慎重に検討するとした。
同調査は県企画部が2009年度に実施。鉄道ルートは普天間飛行場の跡地利用を前提に、人口密度の高い地域の経由を仮設定。鉄道事業法により、鉄道線路は道路に敷設できないことから、都市部を中心に三十数キロを地下構造としている。
図は、新報WEB版から、拝借・・・
沖縄タイムスにも同様の記事があって、
県は5日までに、沖縄振興計画終了後の次期基本計画(ポスト振計)で、沖縄本島を縦貫する鉄道の整備を国に要望する方針を決めた。また、膨大な建設費による運行会社の負担を軽減するため、国の補助金を活用する新たな法制度も併せて求める考えだ。米軍基地などによるいびつな都市構造や、体系的な道路整備の遅れなどを背景に、利便性の悪さが指摘される既存の公共交通体系の改善を目指す。(中略)
そのほか、導入を検討するシステムも鉄道と専用軌道多用型LRT(次世代型路面電車)の二つに絞り込んだ。
鉄道は最高速度が130キロ、1キロあたりの建設費が約200億~300億円。専用軌道多用型LRTは最高速度100キロ、1キロあたりの建設費が約20億~200億円となっている。
現段階で事業化が決定したわけではなく、内閣府が本年度から2カ年計画で実施している調査の結果も踏まえて判断されることになる
とある。
長々の引用であるが、戦前、沖縄にちゃんとした経済政策を取らず、1922年改正鉄道敷設法にも鉄道を引く計画が立てられなかったこと(これは沖縄差別の1例として、「1㎞の国有鉄道もひかれず」といわれている)しょうがないので県営の軽便鉄道(拙ブログケービンの跡を歩く参照)ができたものの、沖縄戦で壊滅、車社会のアメリカに占領されたこともあって、軌道系の交通は2003年8月に開業した「ゆいレール」まで無かった。
沖縄県はこっそり、本格的な鉄道導入計画を検討していたんだ。知らんかった。
テツとしての私は、これが実現すれば大変うれしい!あるみさんも大満足!である。沖縄の糸満~名護は細長いところに人口が密集しているので、鉄道事業は成り立ちそうだ。「飛行機+レンタカー」観光では、時間が読めないが、鉄道の開通はそれを緩和するであろう。バス路線をフィーダー化して、沖縄の公共交通を再編するのじゃ~
だが、記事を見てみても分かるように、実現は厳しそうだ。都市部を中心に“30数キロを地下化”とあるが、これだけで採算が取れるであろう那覇~沖縄間の建設費が厖大になる。現在、新規にタイムスの記事に見られるよう、最高速度130㎞で走る普通鉄道を作ろうとすると、安全上、道路とは必ず立体交差とすることが要求されるので、構造物の比率も上がる。むか~しの地形にそってのんびり走るローカル線を建設するのとは、わけが違う。
既存のゆいレール(モノレール)との有機的結合が考慮されていないのも気がかり。那覇市街地を地下化するとなれば、乗り換えは地下から高架へ…バリアフリーは考慮されるのだろうが、やはり延々と移動しないといけないのであれば。軌道系システム全体が敬遠されるだろう。
タイムスで紹介されているLRTはどうか…これなら建設費は安くなるだろう。那覇~嘉手納ぐらいだったら、国道1車線つぶして作れば用地費はいらない。(ついでにジャマな米軍基地も、どかそうね)しかしそこから名護まで、あるいは那覇―糸満の区間だと、結局新規の用地を買わないといけない。(そこのところで建設費がキロ当たり20~200億と大きくぶれているのだろう)車線をつぶす…にしても、堺市のLRT東西線計画でたった数キロ作るのにも、地元同意が得られず中止状態…車社会の沖縄で簡単に同意が得られるか
モノレールとの連携については、モノレールを郊外まで延伸…地上に下ろすか、LRTをそこだけ高架化にすれば、バリアフリーはより楽にできる面、普通の鉄道よりは有利だろう。(それにしても、じゃーモノレール計画って何だったのという話にもなるが)
とはいえ、「たたかうユニオン」さんが危惧するように、この鉄道計画が「沖縄振興計画終了後の次期基本計画」と連動して、基地建設の見返りに、「感謝の気持ち」を込めて湯水のように金をつける…あるいは計画は了承した、だが基地を作らせないと、お金はあげないからね(岩国市みたく、秤量攻めにするぞ)などということを、日本政府ならやりかねない!ということだ。なにぶん成田空港で
1件の反対農家をつぶすために、200億もの金を無駄な誘導路建設に平気で使う国だ。
こんなやり方で推進される鉄道計画なら、私はテツの矜持にかけて、断固反対する
とはいえ、車社会の沖縄、長寿県沖縄で元気なオジー・オバーが多い沖縄でも、さらなる高齢化(+アメリカ・本土化された食生活の影響)に伴い、車で移動できない人が増えてくることは間違いない。沖縄のバスはネットでも分かりにくく、停留所の路線図なんかも錆びてなんも見えない~ってところも多い。
沖縄観光だって、車をつかうよりも、エコな公共交通機関でのんびり、ゆっくり自然を味わうことが求められるだろう。軌道系の公共交通システム建設と、バスをはじめとする公共交通の再編は、基地に依存しない沖縄経済(じっさいほとんど基地依存はしていないのだが)のためにも、やらなければいけないことだ。そしてそれをどのようにやるのかは、沖縄の人たちが決める。自己決定権を持ってやることだ。
基地はな~んの使用価値も生み出さない。破壊と殺戮を撒き散らす。鉄道は利便と福祉と雇用を創出する…。
「基地建設止めて、鉄道を!」全国の反戦系鉄道趣味者は団結して、たたかおう
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コメント
さすがてっちゃんは凄い!私の場合は意見は題字のみだったが、記事楽しく読みました。
私がいろいろ書くには振興策を奨励しているようで気が引けるから止めました。
ゆいレールとの関連が今回の記事には書かれていませんが、ゆいレールの延伸計画もどこかで企画されているはずです。モノレールなら高速脇を使用すれば可能でしょうが、沖縄の右側から北上刷る場所は過疎地域ですから利用が不便です。
民間バス会社はどこも赤字続きでバス会社統合と鉄道への乗り継ぎ路線変更が進んでいません。さらに、経営側の思惑、労組の思惑がからみ、沖縄の交通網整備には時間がかかります。それらを勘案しても採算はもうまったく無理です。それらを道州制実施で乗り切ろうとしていますが、それとて破綻はみえています。まーその前に革命やりましょう!
投稿: たたかうユニオンへ | 2010年7月 3日 (土) 23時03分
すみません。
あの国鉄分割民営化の折に敵(権力・当局・やつら)に対しなんの闘争もなしえなかった人間としては、ノーコメントを貫くしかなさそうです。
投稿: 神道革新 | 2010年7月 4日 (日) 21時45分
たたかうユニオンさん、私も新報やタイムスのHPをいつも隅々までチェックしているわけではありませんから、そちらで大きく取り上げてくれなかったらこの記事は書けませんでした。タイムリーな情報をありがとうございます。
「道州制」の問題について、これが導入されると権限だけ与えられても、公共政策を立案する公務員やそれをチェックする議員が減らされるという問題がありますね。それに資本の自由だけにまかせるだけでは公共交通の問題は解決しません。方法論や組織論はともかく「革命」は必要ですな。
神道革新さんへ、あまり「国鉄分割民営化問題」と関係なく、テツちゃんが鉄道を実際走らせて見たい…ロマンのような形で語っていただいてかまいませんよ。夢をみましょう、そしていい形で実現させましょう。
投稿: GO@あるみさん | 2010年7月 4日 (日) 22時10分
本土でも実は軽便鉄道の廃止論がでていました。
近鉄北勢線です、三岐間(桑名市~阿下喜)と長距離を762mmゲージで結び三岐移行化は冷房化と先頭車動力台車改造で安全性も確保でき噂では三菱MB-464型38KWモーター釣りかけ式は構造上仕方ありません。
しかし更に弱め界磁段(ビギナ-さんにやさしく説明すれば「牽引力=トルク」は減りますが、電動機の界磁ってまあ模型の磁石の磁力を少なくすること)で高速運転が可能となるのです。
三岐鉄道では公には公表されてませんが、先頭車動力台車とすることで事故も波及も少なくなる側面もあって安全確保にも有利なのでよ。
ちなみに、北勢線改良した三岐は京急や阪急の理論つまり先頭台車に動力装置を付けることで安全性と安定性を理解し、ただ単に冷房改造とかの見かけのサービスではなく本質のサービス向上も考え70km/h運転も考えています(台湾では762mmゲージで西暦80年代ですら80km/h安全運転の実績あり。
今度は近鉄が内部・八王子線の廃止を四日市に出してますが、バス代行でさばけるのか不安です。
三重県の輸送状況に詳しい方はご存知ですが、高田高校という普通から特進まで網羅するサイエンスシティがあって最寄駅がJR一身田駅しかもキハ40系エンジン換装高速車によるラシッュ5連でも裁けずバスも積み込め不可、ましてや三重大もあって江戸橋駅は混雑。
それ以上の高校が内部・八王子線沿線にあり、果たしてバスで輸送可能とはとても考えにくい。
結論:元々沖縄県営鉄道とは762mmゲージであって、三岐や近鉄のこれら支線と規格は同じで、台湾では80km/h走行と現JR支線並みのサービスを行ってます。
現在762mmゲージの旗頭は三岐であって沖縄県が762mmゲージ80km/h運転(元々沖縄県営鉄道は762mmゲージだったそして本土程輸送量は見込めないが国道や高速救済で70~80km/h運転の冷房車は必要です。
基本的に日本国内は三菱のみで他社が参入すれは(沖縄の需要や台湾は大きい)、部品共用可能で、三岐や近鉄もコストダウンが図れ冷房化も可能と考える。
投稿: うりたん | 2013年6月11日 (火) 20時37分
沖縄県民です。
僕は、基地建設を止めて鉄道建設しようという意見に賛成です。
早く鉄道できてほしいですね!!
投稿: tapiokapan | 2015年1月 7日 (水) 16時59分