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消費税は社会をぶっこわす…斉藤貴男「消費税のカラクリ」

目取真俊(めどるましゅん) さんのブログ海鳴りの島からで紹介されていたので、さっそく購入して読んでみた。
斉藤貴男さんは、管理社会や格差社会、少数者を排除する社会に異を唱え、その根底には財界の動き、すなわち日本支配階級のイデオロギーが反映されているのだと訴える著書を多く出しているが。経済・財政の問題について詳しく書かれたものを読むのは、私はこれが始めてである。001
一般的な消費税への批判(および税率増への抵抗)は逆進性であるとか、「益税(消費者が払ったハズの税が事業者の懐に合法的に入ること)あるいは物価上昇による消費の落ち込みだとされている。また消費税を「増税」したい側は、「公平」で景気に左右されず「安定」した安定した税収が得られるため、「社会福祉」のための財源に最適(実際は法人税・所得税減税のために使われたのに)という議論がある。しかし斉藤さんは、「議論のためには消費税の実体や本質が広く一般に周知されている必要があるはずだ。だが現実はどうか。制度や法律の要点さえも、圧倒的大多数の人々は理解していないのではないか。」(p4)と、本書を著した。「本書の指摘を無視した消費税増税は論外だ。もっと言えば、本書を読む前は“議論”もしてはならない。」(p5)と喝破している。

 内容を見てみよう。とりっぱぐれがないハズの消費税だと私も思っていたが、実は消費税は国税滞納額のワースト1である。国税庁の発表によると、2008年度に新しく発生した国税の滞納額は、全税目で約8,980億円、前年度比1.8%増、そのうち消費税は約4,180億円で前年度比3.4%増、滞納額の45.8%を占めている。これは中小零細企業が価格に消費税分を転嫁できず、逆にそれ以上の値引きを強いられているからだ。「益税」どころか売れば売るほど払えない税金がかかる仕組みになっている。
 その一方で大企業には有利な税制だ。特に輸出比率の大きい企業は「輸出戻し税」といって、輸出取引については国内で発生した消費税負担(輸出品を作るのに国内で購入する原材料に支払った消費税)が完全に除去…還付される。つまり輸出企業は消費税負担をしなくて良い、事実上の「輸出補助金」となっている。2007年度にはトヨタ自動車㈱が3,219億円、ソニー㈱が1,587億円、本田技研工業㈱が1,200億円、日産自動車㈱が1,035億円の還付を受けている。いずれも売り上げに占める輸出の割合が65~75%を占めている。「なぜ財界は、消費税の税率引き上げに固執するのであろうか。じつは、彼らは消費税の税率をいくら引き上げても痛痒を感じないのである。」(p105)
 一方、「仕入れ税額控除」という制度がある。納税義務者は売り上げ高の5%全てを消費税として収めるのではなく、仕入れのために支払った消費税額を差し引いた分が控除されるわけだが。控除されない経費の中には「正社員に支払う給与」がある。そこで制度を「悪用」し、労働者を正社員として雇うのではなく、労務・役務の提供を別会社から受けた(仕入れた)ことにすれば控除分が戻ってくる。風俗店や人材派遣業でこのようなダミー会社を作って「脱税」をしていることが「事件」になるのであるが、これを合法的にできるように追求してみたら…そう、派遣・請負労働の活用ということになる。非正規雇用が増えたのは直接、消費税のせいではない。しかし消費税が中小零細企業に過大な負担をかけ、(価格添加だけでなく、納税や控除のための事務手続きも膨大になる)従業員を抱えきれない会社が、節税のため無理やり従業員を「独立」させ一人親方…会社の社会保障・健康保険がなくなる…にしてしまう。これは建設業界に多いらしい。
消費税を増税するということは、日本社会を支えてきた中小零細企業をつぶし、その従業異と家族を路頭に迷わせる(その事例も紹介されている)ばかりでなく、非正規雇用・ワーキングプアーも増やし、格差社会をより深刻化させるのだ。そんな「社会福祉のための財源」もあったものではない。
 いま紹介した以外にも、格差社会・管理社会、あるいは日本的な同調社会への批判が込められた、斉藤さんらしい視点の論述・記述が一杯ある大変面白い本である。本書を読んで、生コンストライキと連帯し、改めて消費税にウエスタンラリアートじゃ~

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コメント

私も読みました。
斎藤氏、渾身の1冊、という気合が入ってましたね。
消費税批判の書籍は数あれど、斎藤氏の切り口は、秀逸だと思います。

私は、消費税にハーフネルソン・スープレックスをお見舞いします。。。

投稿: | 2010年8月19日 (木) 08時27分

さすが風さん、7月にはもう読まれていたのですね。内容が濃いので、まじめに紹介すると「全文引用」になってしまうくらいの、スゴイ本ですね。
この本を広めて、消費税に「上手出し投げ」を

投稿: GO@あるみさん | 2010年8月19日 (木) 23時28分

すみません、出版社はどこでしょう?ケータイだと画像が小さくて。
私も読みたいので。


実際、零細企業を経営する友人は消費税に悲鳴をあげています。
小泉改革による規制緩和で雨後の筍の如く同業者が増え、過当競争のたたき合いで消費税分などとても上乗せ出来ず、それでも国税に踏み込まれて「消費税破産-夜逃げ」した同業者を間近に見てるから払わない訳にもいかず、税金払う為に銀行から借り入れる。そんな事を繰り返しています。
このうえ10%なんて、中小零細にとってはほとんど死刑宣告ですよ。

投稿: 正太郎 | 2010年8月20日 (金) 13時37分

正太郎さんすみません、出版社は「講談社現代新書」です。
事業を育てるためでなく、税金のためにお金を借りるなんてやっぱりおかしいです。
「事業者が集めた消費税は、預かり金である」という論もあるようですが、預かり金ならばちゃんと納税できるハズ。この「預かり金」論も批判されていますよ。

投稿: GO@あるみさん | 2010年8月20日 (金) 22時10分

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