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悪の組織を作って世界征服をしよう!

「侵略!イカ娘」なんぞに萌えているついでに、こんな本が目に止まった。「『世界征服』は可能か?」(岡田斗司夫 ちくまプリマー新書 2007年6月初版)である。過去に「オタキング」とも呼ばれたオタク文化の神様みたいな人(近年は50キロダイエットにも成功し、「ダイエットの神様」としても有名)が語る、初の世界征服学!
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 「世界征服」を目指す「悪の組織」があって、それと戦うヒーローやロボットが毎回活躍する…という、昔から特撮やアニメなんかでは定番の設定…幼稚園バスを襲ったり、「正義」のロボットを倒すべく、毎回1台ずつ新型ロボットを繰り出したりして「そんなことで世界征服できるのかよ~」というツッコミを入れたくなった人は多いだろう。それでは、世界征服って本当にできるのか?世界征服をして何がやりたいのか?ってか、世界中の人々があなたにひれ伏す「世界征服」すばらしいじゃなイカ(^^)(^^)//
 ということで、「世界征服」とは何か?を定義し、実際に悪の組織をつくって「」世界征服事業を行うシュミレーションをしたのが本書である。
 皆様おなじみの「仮面ライダー」や「レインボーマン」(そういえばコレ、幼稚園のころリアルで見ていたと思うが、「死ね死ね団」というのは「日本人絶滅」をもくろむ、ネトウヨさんもびっくりの「反日」組織だったんですね)「ドラゴンボール」等を例に挙げながら、第3章「世界征服の手順」において
 1.第一段階 目的設定
 2.第二段階 人材確保
 3.第三段階 資金の調達と設備投資
 4.第四段階 作戦と武装
 5.第五段階 部下の管理と粛清
 6.最終段階 世界征服とその後
 と、展開されていく。
 第三段階で、「悪の組織」もスタート時点ではまじめにお金を貯めるしかないが、普通に働いて儲かってしまった場合、

世界征服の「モチベーションが下がらないよう、ハングリー精神をしっかり持ってください。p100~101
とか、第五段階では、「悪の組織」は正規の人材募集・宣伝ができない。ヤクザにもなれなかったから、ショッカーでも行くか、
みたくただでさえ最低の人材が集まりやすいところへきて、おまけに『人殺しが好き』という問題児が多くて、たぶん、ルールを守らなくて遅刻が平気なヤツが集まっているところです。p116
から、そんな中で組織に忠誠を誓う人材を大切にしないといけない
…ビジネス系啓蒙書なども嫌がらず立ち読みして、頑張りましょう。p112
とか、なかなかその過程はオモシロく、また過酷である…わはははは

そうまでして実現した、「世界征服」 でもそんなことをする意味があるのか?世界中の人々を奴隷化して、自分だけ超贅沢をしようと思っても、資本主義社会から奴隷制にもどしてしまっては、生産力が落ちてしまうので、結局自分も贅沢はできない。欲しい物や文化、情報は、市場やネットにあふれ、お金さえあればなんとか手に入る。しかもそれらを作るのは、「支配」されている人である…これが大衆社会ということだ。しかも

世界の支配者や独裁者になった瞬間に、世界中から難題・難問を持ちかけてきますよ…パレスチナ問題で紛争が絶えない中東や、中国・チベット問題など、歴史や民族の恨みなどでグチャグチャになった問題で、自分の時間など完全になくなってしまいます。p159
世界征服には、その労力にあった「うまみ」が、もはやないのである。ヒェ~

 ということで岡田氏は「自由経済」(資本主義的生産様式)と、「情報化…ネット社会」を否定する現代の「世界征服」の論理を提唱する。

いままでの悪の組織はもう無理だ、不可能だとして生まれた「ネオ悪の組織」です。
おそらく、その旗印は、アンチ経済社会ですね。つまり「貧富の差をなくします!」「みんな、もっと貧乏になりましょう」というわけです。
 次に、アンチ・ネットです。この世界をもう一度「情報」という信仰から解放する運動です。情報ではなく、生きた人間の発言、それも自分の知り合いの人を肯定し、それを尊敬して目指さなくてはいけない。
 がんばって働いても貧富の差ができない社会で、なおかつ、世の中のことがさらにわからなくなる社会。ネットや「情報」に頼らず先生や上司や親などの「目上の人」の言うことを守る社会。すごいでしょう?」p181

そして
「悪」は時代によって変わります。
というより、「その時代に信じられている価値観に反対すること」が悪の定義なのです。P182~3
そして現代の「悪の組織」とはボランティア形式で、エコロジー団体みたいなもので、案外ハートウォーミングな合言葉で集まっているような団体ではないでしょうか?(中略)
世界征服を目指す人とは、現状を否定する人のことです。
人に優しく、環境に優しく、良識と教養ある世界を目指すことによって「悪」の栄える世界を目指しましょう。p185
とまとめられる。

後段の「理念」は、なんか保守のようであるが、「世界征服を目指す人とは、現状を否定する人のことです。」というところでは、社会変革、社会革命を目指すということは、「悪」なのだということがす~っと入っていく。
 ということは、社会主義を目指す、共産主義を目指す、もう一つの社会を作る…などという組織は、十分「悪の組織」であり、世界の変革…世界革命とは「世界征服」のことである。もし新しい「共産主義インターナショナル」なんてものができたら、それは「世界征服を企む悪の秘密結社」…おお、ショッカーやギャラクターみたいなモンか

 よし、社会変革を目指す左系の人たちは、今年こそ「悪の組織」を立ち上げ、「世界征服」の第一歩として「統一地方選挙」で議会に議員を送り込むぐらいの気概が必要なんじゃなイカ

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コメント

え?
大坂仰山党のことですか?
歓迎しますよ。ま、左翼なんて自己規定しませんし、党首は自称極右ですし、世話役同志なんて幕府再興を狙っていますが。

http://www.geocities.jp/osaka_multitude_p/index.html

ちなみに、小生の書評。
http://red.ap.teacup.com/tamo2/547.html

投稿: TAMO2 | 2011年1月 5日 (水) 21時46分

あと。存在論的悪性について自覚のない「正義の組織」こそ、最悪の団体になっちゃうものです。

仰山党イデオロギーの武器庫から。我々の弾丸は貧弱ですが。
http://www.geocities.jp/osaka_multitude_p/waru_ni_tsuite.html

投稿: TAMO2 | 2011年1月 5日 (水) 22時20分

TAMO2投手「仰山党」もイメージしてますよ…というより、もっとスゴイ悪の組織を作りたいものです。
>存在論的悪性について自覚のない「正義の組織」こそ、最悪の団体になっちゃうものです。
岡田氏の本でもありましたが、正義感の強い人が世界制服を目指すと、「人類絶滅」を目指す魔王タイプになっちゃうそうです。「最悪の団体」とは、大小の魔王が潜む伏魔殿ということになりますな。
「正義感が強く、不正を許せないタイプのあなた、世界制服をするときはくれぐれも気をつけてくださいね。p58」

投稿: あるみさん | 2011年1月 6日 (木) 21時46分

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受信: 2011年1月 4日 (火) 22時56分

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