「TPP反対の大義」は革命の書となるか?
震災と原発事故以降、すっかり影をひそめたTPP(環太平洋経済連携協定)について…
ずいぶん大仰なタイトルをつけたが、「TPP反対の大義」(農文協ブックレット)をよく読んでみると、現代資本主義の矛盾を克服するためのヒントが一杯つまっているように感じたからだ。
TPPに関しては、様々な批判がなされており、記事や書物もでている。当初、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの「小国連合」で始まった「例外なき関税撤廃FTA(通常FTAは2国間で時間をかけ交渉して決めるので、自国の弱い産業部門を保護する例外規定等を設ける余地がある)」として始まった「TPP」(環太平洋経済連携協定)であるが、そこ米国やベトナムが参加するそこに、新たに日本が参入する経済的・社会的メリットは無い。保守・右系の方からも、日本に有利なルール作りの余地が無く、また新たな参加表明国に日本と産業構造が同じで利害が一致する国も無いことが指摘されている。そんなTPPへの参加の理由は「自由貿易」=「良いこと」「成長の源泉」という「ドグマ」だけなのだが、それが現代資本主義(帝国主義)がグローバリズムに「発展」させると同時に、格差・貧困を広げ、地域や社会を破壊している。だからこれに反対する「大義」の中には、現代資本主義批判と次の社会モデルのエッセンスがつまっていると言えよう。
何回かに分けて、本書の内容で肝となる箇所を紹介し、感じたことを書いていきたいと思う。その前に本書の構成は
PART1 TPPと農業・農村・日本社会
PART2 TPPをむらと地域から考える
PART3 自治体、協動運動とTPP
の3部から成る。PART1は各分野の研究者による包括的なTPP批判、PART2、3は、農業などの各経済主体、運動主体に近いところからのTPP批判であり、性格上PART1の分量が多い。
PART1 TPPと農業・農村、日本社会
ここでは11の論文があるが、そのうち
・TPPは社会的共通資本を破壊する 農の営みとコモンズへの思索から(日本学士院会員・東京大学名誉教授 宇沢弘文)
・真の国益とは何か TPPをめぐる国民的議論を深めるための13の論点(東京大学大学院教授 鈴木宣弘/コーネル大学客員研究員 木下順子)
・世界貿易の崩壊と日本の未来 TPP=タイタニックにのりおくれるのは結構なことだ(評論家・思想史家 関 曠野
・北東アジアにおける食料・農業協同の芽を摘み取るTPP 高知大学教授 飯國芳明
の4つを取り上げる。
(思いましたように、つづくよ)
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コメント
農業に関して日本が壊滅するとか言っていたけど、その前に日本人自身が放射能で農業を壊滅させたでござる。
まぁ農業云々は目くらましで、実際のところ日本に移民をぶち込んで安価な労働力を手に入れたいというのが本音でしょう。
何度も言うけど、現在60以上の団塊連中は死滅してほしい。
一概には言えないけど、全体的に害の方が大きすぎる。
戦前世代が築いたものをどれだけ破壊すれば気が済むんだよ・・・
投稿: ROM人 | 2011年6月17日 (金) 22時59分
まあ昔から資本主義反対の方が革命起こしたことはなくて、資本主義の方が革命起こして来たと言えますね。
IT革命とか経済グローバル化とか。
ホントにこの10年程の間に世の中は革命的といえる程に大きく変わったと思いますね。
今まで誇りを持っていた働いていた人たちの技能や技術がドンドン古いものとされて価値が認められなくなっている。
本来なら、ベテランとか先輩として敬われなければならない人たちが年寄りとして馬鹿にされて追いやられて行くのを目の当たりにしました。
このように古きよきものや人間社会の秩序と言ったものが破壊され続けている原因は、資本主義による革命ですね。
決して、団塊の世代が悪いとかの話ではない。
まさにその人たちが転職もままならない齢で仕事を喪っていったわけです。
しかし、資本主義という列車から降りることはできないし、別な乗り換えるべき列車は現実には存在しません。
どうしようもなく、この列車にしがみつくしかない。振り落とされないようにね。
投稿: BM | 2011年6月18日 (土) 09時53分
>今まで誇りを持っていた働いていた人たちの技能や技術がドンドン古いものとされて価値が認められなくなっている。
※ただし国内に限る
資本主義だからじゃなくて、技術者研究者を軽視する日本特有の文化です。
戦争体験者はレーダーとかでそれを見せつけられて学んだから、科学技術に力を入れた。
一方団塊はそれを知らないから、経営とか外資とかに夢を持って技術を軽視した。
そして日本の技術者が引き抜かれて、中国韓国で活躍中なわけで。
日本の体質から変える必要があるかと。
そういえばもんじゅの撤去作業の話を聞いていたら、撤去後に運転再開するらしい。
もう、だめだこの国
投稿: ROM人 | 2011年6月18日 (土) 12時15分
>ROM人さん
俺がここで言っている技能や技術とは主に職人によって担われる手仕事のことなんです。
レーダーに象徴されるような科学的な近代技術は日本でもどんどん進歩を遂げていますね。
例えば、石を切ったり彫ったりする石屋さんの仕事も今ではITによって機械化されてると聞きます。
つまり近代的な技術の進歩によって、職人的な技術技能が不要なものとなって行っているわけです。
その近代的技術進歩は効率化を目指したもので、そうしなければ企業は競争に勝てないわけで資本主義と多いに関わりがあります。
そして近代技術の進歩だけではなくてグローバル化によって仕事は海外に出て行っているわけです。
先ほどの石屋さんの例で言えば、中国などへの外注化が進んでいるようです。
これもそうしなければ生き残って行けないからと思われます。
石屋さんに限らずそういう事態はどんな業界でも起こっているでしょう。
もちろん俺も不景気を割り引いても仕事は減っているし労賃は切り下げられてきているわけです。
今は何とか飯を食って行ければ御の字だと思いますね。
まあこうなったのも、誰が悪いとは言えないと思います。
あえて言えば資本主義のせいなんですけど、しかしそれに代わるものは見つからないですね。
投稿: BM | 2011年6月18日 (土) 17時34分
ROM人さんとBMさんの指摘に対してそれぞれ賛成(いい加減ですけど)、団塊世代早く引っ込めってところ。
願望として60歳以上は選挙権・被選挙権を剥奪しちまえ、右だ左と言う前にそれしか日本の再生はない。
20歳未満の若者よりも老化によって腐り仕事能力以上に給料だけ稼ぐ(公務員の世界かな)昔から技能者に関しては一定以上の経験と出来高が認められれば基本的に平等な人格・収入でだったはずはないか。
60歳定年でも長すぎると思っていたのが年金財政悪化などと詐欺師の手口で65歳さらにそれ以上に定年延長が企まれる。(年功序列廃止は言わない奇妙さ、さらに若者の首を絞める)
僕が左翼にいかがわしさを感じるのが労働者は資本家に虐げられるとするメッセージです、むしろ既得権益による労働者間の不正な格差(成果によらない年功序列)こそが矛盾です。
さらに左翼は年齢収入による差別(特に公務員・大企業系)を是認しさらに拡大する中での労働運動(利権運動)で成立していること。
TPP反対は既存序列を崩されたくない勢力と思ってしまう。
以前取りざたされた希望は戦争のフレーズには既存序列(差別解消・平等化)を破壊するには天変地異の外力しかない日本の現状を嘆いたと考えます。
自民も民主も支持しない者として民主党の東日本震災の対応姿勢にはヤッパリナーでしかない。
政治にそれほど期待しない行動しない傍観者としては恥ずかしながらあるみさんの姿勢にだけは敬意を払います。
投稿: tatu99 | 2011年6月19日 (日) 11時35分
あるみさん、調子悪いのかな。
>昔から技能者に関しては一定以上の経験と出来高が認められれば基本的に平等な人格収入だったはずはないか
相場の日当というのはありますね。
これが下がって来ているわけですが。
ただ、出来る人の中でより高めの日当を要求する人もいますね。
それをどう判断するかは、その現場における人を使う立場の側の経営判断でしょう。
また、同じ日当でも能力や使い易さの点から仕事の多い少ないの違いから収入の高低は発生します。
ま、これは俺のいる業界での話なんですけど。
で、独立してやってる者は結構自由競争なんですけど、雇われてる場合はやはり年功序列というのはありますね。
その会社に貢献して来たことに酬いるためと、年数頑張れば昇給して行くことで人材を確保しようという狙いでしょうね。
だから必要ないと判断すれば昇給させませんけどね。
今は雇われてる者はドンドン減ってますよ。
団塊とか歳とか関係なしに容赦ないですよ。
むしろ歳のいった給料の高い者から切られていますね。
大企業とか公務員とかは別として、年齢によって何か特権が与えられているようなところってどれだけあるのでしょうかね。
そういう大企業や公務員の中高年が退場したとしても、あとそういう恵まれた所に入れる人ってどのくらいいるのでしょうね。
中学校の同級生でそういう所にはいった奴何人いたかなぁ。
投稿: BM | 2011年6月19日 (日) 13時03分
BM氏
そりゃぁ簡単に作れるのならばそれで良いでしょう。
それは時代の流れと言う物です。
またそれに乗り遅れても、伝統産業などではブランド化を進めて生き残っている物も無数にあります。
古い物が淘汰されるのは資本主義以前に人間社会として当然のこと。
そこで進化の方向へと向かぬ物は滅びるのみですよ。
雇用が危ういって、経団連側から提示されたワークシェアリングを蹴ったのは労働組合なんだよなぁ。
本来ならば労働組合は企業との対立をする社会の味方のはずなのに、今は必要以上の給料を求める利権寄生虫でしかない。
本当に困っている人は労働組合を作る余裕すらない。
tatu99氏
まぁ引っ込めたら云々とうるさいから、とある所で面白い案がありました。
選挙権被選挙権を含め、衆議院を20~50程度の若者、参議院をそれ以上の年齢の者にする。
知ってのとおり国会は衆議院に優越があるので、これならば結構うまく運用できると思うのですが。
投稿: ROM人 | 2011年6月19日 (日) 14時59分
ROM人様
60歳以上の人たちは暴力革命成就意外に生きる道はない。ということですね。
早速、励みます。
投稿: 神道革新 | 2011年6月19日 (日) 18時23分
皆様コメントありがとうございます。
BMさんのご指摘どおり、団塊も含めた世代の「大量退職(首切り等含む)」の技術継承の問題ってのが起こっています。もちろん、若い者を正規に採用してこなかったというところにも原因があります。
これは95年に出された日経連だったか経団連だったかの雇用のあり方提言…一部の幹部候補生以外は正規雇用にせず、中堅技術者や末端の労働者は非正規雇用として流動化させる…というものが、十数年かけて貫徹したためであります。もっとも、あまりそれを貫徹しすぎて能力主義一本でやったキャノンとかは大失敗しましたが…それが年功序列的要素が残っている要因ではないかと思います。
その意味でROM人さんやtatuさんのように「上の(団塊)世代が悪い!」というのは、そういうものと闘ってこれなかった労働組合、左翼にも大いにあるわけで、赤木智弘の「希望は戦争」という言葉が出てきたときには、大いに反省し、責任を感じたものです。(既存のリベラルとかはこれにかなりトンチンカンな回答を寄せていたようですが)なお、赤木氏の論考は「若者を見殺しにする社会」として文庫化されていますね。
神道革新さん、知花昌一さん(これもバリバリ団塊の方ですね)が昔「60歳を越えたら、バンバン実力闘争をやって、警察に捕まろうではないか。留置所では規則正しい生活が送れて、体にも良いぞ(実際はストレスきつそうですが)」というようなことを述べていました。それはともかくとして、若い人、年をとった人区別なく意見や主張を聞いて、闘っていきましょう。
投稿: あるみさん | 2011年6月19日 (日) 21時12分
>神道革新氏
暴力革命(笑)
流石ダントツで犯罪率の高い世代は、ゆとり世代とはちがってパワフルですな。
政治に口を出すなって言っているんだよ。
言わせんな恥ずかしい。
自分たちが若者から尊敬されるようなことをしているなら、若者だって相応の扱いをしてくれるだろうさw
あるみさん
勘違いをしているが、おそらく大体の世代の憎しみはそこじゃない。
寧ろ逆。
保護、保障などと声を上げて、若者から搾取し老人に還元するシステムに対して怒っている。
寧ろそういう連中の企業年金のせいで若者への還元が難しくなり、そいつらへの年金や介護関連の予算のために教育の予算が減らされる。
老人は年金をもらえるが、若者はもう払った学以下しかもらえない。
またそういう世代は差別廃止運動やらが大好きで、在日利権、同和利権を生み出し、過剰な生活保護の切っ掛けを作りだした。
すでにプログラムも組めないような老人一人を解雇すれば、若者2人3人雇うことができる。
それをできなくしたのが年功序列と終身雇用。
そして景気が悪くなっても自分の給料を落とすのが嫌だから、若者への給料を削減するんだからもうね……
そして民主主義では人口の絶対数において負ける若者の意見を通すことができない。
優秀な人間はもう日本を見限って外へ出ていくと……
投稿: ROM人 | 2011年6月20日 (月) 16時41分
赤木氏の論考をまとめた「若者を見殺しにする国」(朝日文庫 2011年5月30日第一刷)を買って、パラパラ眺めてみたのだが、上のROM人さんが考えていることと、かなりシンクロしてるところがあると感じました。
またじっくり読んでみませう
投稿: あるみさん | 2011年6月23日 (木) 22時38分