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FTAやTPPを検討する際の基本的視点

前回の続き…真の国益とは何か TPPをめぐる国民的議論を深めるための13の論点(東京大学大学院教授 鈴木宣弘/コーネル大学客員研究員 木下順子論文の2章目
④アジアとのFTAは「協力と自由化のバランス」で 
ここではタイ、フィリピンとのFTA合意の例を上げ

「日本側が重要品目の例外扱いを求める代わりに、FTAの利益から取り残されがちな相手国の零細農民に対する優先的配慮を可能な限り行ない、アジア農村の貧困解消と所得向上に貢献することによってバランスを確保すれば、双方の利益を高めるFTAが成立するのである。(p43)」

としている…まあ、実態や現実はそううまくいっているのか、別途検証する必要はあるだろうが…
⑤TPPで重要品目の例外化は認められるか 
「オーストラリアや米国のように、そもそも協力や援助の対象ではない国が交渉相手の場合『協力と自由化のバランス』の手法は通用しない。(p43)「TPPは、日本にとって最も厳しい条件の日豪FTAと日米FTAを一気に締結するようなものである。(p44)」
以下
⑥個別所得保障としての財政支出額試算 
では、概算で米だけで毎年1.7兆円、米以外の農産物も含めるとこの2倍近くになる可能性があると試算され、財源の裏付け等を国民に説明し、許容してもらう必要があり、現在(といっても震災前だが、今も?)の議論は拙速であるとしている。そして
⑦外部効果も含めたTPPの影響評価を ⑧食料は国民の命を守る戦略物資 と展開し
⑨食料危機は米国が創り出した「人災」 
として
「米国は、いわば、『安く売ってあげるから非効率な農業はやめたほうがよい』といって世界の農産物自由化を押し進めてきたため基礎食料の生産国が減り、米国をはじめ少数の輸出国に国際市場が独占されつつある。少数の売り手に依存する市場構造では、小さな受給変動に反応して価格が急上昇しやすく、逆に低価格化が起こりにくくなる。また、高値期待からの投機マネーが入りやすく、不安心理から輸出規制という食料の囲い込みも起きやすくなり、価格高騰がますます増幅される。(p47)」

と主張している。そして
⑩日本も米国の食料戦略の「標的」⑪農産物輸出国の手厚い農業保護 と続く。
おお、「国益」とかアジアとの「協力と自由化」という、革命的左翼が大嫌いな言葉を使いながら、「現代帝国主義」について考えるヒントが、いっぱい埋まっているではなイカ!

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コメント

食料とエネルギーは、左翼の皆様の大嫌いな「国益」マターであり、市場経済の論理の外に置くのは世界の常識です。日本だけです、こんな「馬鹿げた」ことをやろうとしているのは。

投稿: TAMO2 | 2011年7月 4日 (月) 08時00分

同時に考えなくてはならないことは、発展途上国の優秀な農産物が、先進国の関税などによって先進国の市場から排除され、発展途上国が本来得られるべき利益が得られないという構造があることですね。

投稿: TAMO2 | 2011年7月 4日 (月) 08時01分

TAMO2投手殿、確かに発展途上国でも先進国でも、食料の自給だけでは現金収入にはなりません。しかし、穀物等は基本的に関税障壁等で各国が自給できるようにすることは大切でしょう。珍しい、優秀な農産物は、他の国では生産できないわけですから、自由化しても問題はないでしょう。
ただ農産物を効率的に(生産力を向上させるという意味でも)生産するには「適材適所」でやることが最もエエわけですが、「資本主義的生産様式」のままですと、当面「儲かる」作物が適材適所もへったくれもなく作付けされる…そして自然破壊や投機→暴落によって農地が破壊されることも見逃せません。

投稿: あるみさん | 2011年7月 4日 (月) 23時55分

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