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アジア圏の強化を視野に入れつつ日本農業の体質強化をめざす

真の国益とは何か TPPをめぐる国民的議論を深めるための13の論点(東京大学大学院教授 鈴木宣弘/コーネル大学客員研究員 木下順子)の最後のパート
3.アジア圏の強化を視野に入れつつ日本農業の体質強化をめざす
⑫まずASEANプラス3からアジア圏拡大へ 
の中で

「TPPをFTAFP(アジア太平洋自由貿易圏)実現への一里塚と位置づけて重視する見方もあるが、そうではなくて、むしろアジア圏形成に対する米国の攪乱戦略の一つとして考えられる必要があるだろう。(p49)」
とはじめる。数カ国にまたがる外交交渉の駆け引きには「多数派工作」が必要となるがTPP参加(表明)国で、日本と利害が一致している国などない。日本経済の成長は「外需依存」だとよくいわれるが、対GDP比でみると外需は2割程度しかない「内需依存国」なのである。ひるがえって、他の国はおしなべて経済を外需に依存している割合が高い。(日本より低いのは、アメリカぐらい)そしてシンガポールを除き、アメリカも含めて一次産品の日本市場への輸出を目指している。また、TPP参加(表明)国のGDPは、日本とアメリカで95%近くを占め、オーストラリアが4.4%程度、要するに他の参加国への輸出はそれほど伸びない。
(このへんは別の本「TPP亡国論」中野剛志 集英社新書 2011年3月初版を参考にした)
そして欧州圏や米州圏の拡大・深化に対抗し、日本のプレゼンスを高めるにはアジア圏の強化を優先課題とせよ…と説く。
「特に最近の日本工業は、ある産業分野の製品製造を丸ごとどこかに移すのではなく、完成品になるまでの製造工程をいくつもの生産ブロックに分割し、高度技術者の必要な部分、安価な単純労働にまかせたほうが効率的な部分、というように、各工程を最も適した環境のアジア各国に割り振って分散的に生産している。(中略)東アジア全体が共通市場化することが極めて有効である。これは、アジアの先頭を走ってきた先進国である日本が、自らの国益だけでなく、アジア諸国の長期的・持続的繁栄への方向性を提示することにもつながる。(p50、p51)」
 この段では、鳩山らが言っていた「東アジア共同体」につながる潮流にあたるのだろう。ここで「持続的繁栄」と言いながらも、「高度技術者の必要な部分、安価な単純労働にまかせたほうが効率的な部分」を固定化し、全体、数字としての「繁栄」はしてるものの、格差や貧困が拡大しているおそれがある。また、日本における震災、原発事故…脱原発の潮流は、これまでの「アジアの先頭」の日本モデルに重大な欠陥があるということを示しており、そこに無理やりこれまでの日本の論理や技術をもってきても、「持続的繁栄」など不可能ではないかとも考える。全く「新しいもの」が東アジアのローテクと思想の中から出てくるかもしれないと私は考える。
⑬本当に「強い農業」と食の未来に向けて 
では、これまでの大規模化、コスト低減を否定するわけでなないものの、オーストラリアなどとは競争にならない、それよりも
「地元の地域はもちろん、日本の食料品を高く評価してくれるアジアや世界にもつくることである。(p52)」
と説く…オイオイ、貿易立国的農業のススメ、ではなイカ!もっともこれは「本物」の農産物…環境にも、動物など他の生き物にも優しい生産過程でつくられたもの、無農薬や減農薬、自然の循環サイクルを壊さない、景観や文化を破壊しないという「本物の農業」「本物の農産物」を育てることである。しかし、消費者(労働者)が価格の高い「本物」を買うことができなければ…単純に言うと、消費者…労働者への分配を増やすことが必要なのだが、この論文にはその視点が欠けている。
 最後のほうには、「強い農業」のためへの「担い手」に対する重点的な支援強化や、集落営農で中心的に働いているオペレータを他産業並みの給与水準(もちろん給与だけではない。社会保障全般である)を確保するための財政支援のメリハリの必要性を提起し、まとめられている。支援のフレームがどうなるかで色々違ってくるだろうが、このへんは「異議なし」である。
(次の論文に、つづくよ)

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コメント

茨城大学人文学部の河野直践(こうのなおふみ)先生(農業経済学)によると、農を始めとする第一次産業の問題は農協・漁協・生協といった縦割りの『協同組合法』有るそうですよ。

詳しくはこちらをどうぞ。

『人間復権の食・農・協同』
http://www.soshinsha-pub.com/s-241.html

参考までに・・。

投稿: 正太郎 | 2011年7月 8日 (金) 21時57分

正太郎さん、本の紹介ありがとうございます。
TPP関連のブックレットも、新たに2冊出てるようですね。

投稿: あるみさん | 2011年7月16日 (土) 22時34分

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