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「大日本帝国」崩壊(朝鮮篇)

さて、「日本」領域の外側…すなわち植民地だったところに目をむけてみよう。ただ、南樺太は1943年4月に、住民がほとんど「日本人」であるということもあって、「内地編入」されている。また、千島列島は行政的に北海道の一部であり「内地」ということになっている。

さて、最も重要な朝鮮半島であるが、その前にソ連の戦争目的はヤルタの密約に基づき、日露戦争で失った権益の奪還という「帝国主義戦争」そのものであったことを押さえておく。よってソ連は当初、朝鮮半島まで進出する予定はなく、あくまでも「満州奪還」作戦の側面支援として朝鮮半島の北部に軍隊を進めた。これをみたアメリカが、38度線で朝鮮半島を分割占領することを提案し、ソ連も「じゃぁ、もらっとこうか」となったものである。ちなみに旧日本軍もソ連侵攻時に、38度線を境に北は関東軍、南は第17方面軍の管轄と分たのであるが、それと現在の「朝鮮分断」は関係ないものと見る。

さて、日本降伏後、朝鮮ではすぐに独立国家樹立の動きが広まった。あちこちに民族団体が結成されるとともに、朝鮮総督府は機能不全になった。(ただし朝鮮における対米戦にそなえた第17軍の存在は無視できず、大きな混乱はすぐには起こらなかった)朝鮮人有力者による政府の早期樹立を望み、そこに日本人居留民の保護をゆだねようと考えた、朝鮮総督府ナンバー2の遠藤柳作のような人もいた。
やがて「朝鮮建国準備委員会」(建準)が結成されたが、雨後の筍のゆおに出来る民族団体、独立団体を統括することはできなかった。また、朝鮮はカイロ宣言において「独立」が約束されていたはずなのだが、実際はソ連軍とアメリカ軍による「分割占領」という事態を迎える。「左傾化」した建準は9月6日に「全国人民代表者会議」を開き、「朝鮮人民共和国」の即時樹立を決定した。
しかし日米の実務者レベルの予備交渉の中で、アメリカは朝鮮人有力者への権限移行を認めず、

「只、苦笑するのみ」であった(p78)
という。
要するにアメリカは朝鮮人の統治能力を全く買っておらず(ルーズベルトでさえ、朝鮮半島の独立には20~40年はかかると考えていた、朝鮮は1300年もの統一国家をもってきた歴史があることを、全く認識できていなかったのだ)…と言うより、対日戦において朝鮮半島は重要視されていなかったため、全く何も考えていなかったというものだ。ソ連軍が朝鮮半島で戦闘を続け、軍隊を進めている間、アメリカ軍は全く朝鮮半島に足がかりをもっていなかった。日本が降伏した場合、連合軍が武装解除することになるわけだが、各国が武装解除を行う地域・範囲を決めなければならない。そこで2人の大佐が壁に掛った朝鮮半島の地図を見て、京城(現在のソウル)が米軍担当地に含まれ、かつほぼ朝鮮半島を2等分できる38度線分割案を30分で決めたという。
ソ連としても、あくまでも朝鮮半島での戦闘は関東軍の退路を遮断すること、中国の遼東半島を手中にすることが目的だったため、この提案がなされた時も国境に近い部分ぐらいしか占領しておらず、38度線まで軍を進めるつもりはなかった。要するにソ連もまた朝鮮を重要視していなかったわけだ。
南側に進駐した米軍は日本軍の武装解除を進めるとともに、軍政を敷き、上海にあった「大韓民国臨時政府」の一員であった李承晩をその協力者として多くの民族団体、独立団体を弾圧した。おなじ臨時政府出身で「臨時政府中心」の統一朝鮮をめざした金九は、李承晩によって暗殺された。

一方、ソ連に占領された北側はどうか…ソ連は素早く日本の統治期間を接収、解体する一方で、例えば8月26日には平安南道人民政治委員会に統治権が委ねられた。朝鮮人の人民委員会を認め、間接統治することにしたのだ。人民委員会は「共産系」と「建準」を民族系が均衡するように構成されていたが、やがて「共産系」がヘゲモニーを握りはじめると、ソ連は9月19日、抗日パルチザンを指導していた金日成を帰国させた。ソ連の言うことをよく聞く、優秀な「スターリニスト」であった金日成を北朝鮮で祭り上げようとするものであった。また、朝鮮半島で一つであった、朴憲永率いる朝鮮共産党から独立する意向をみせ、

10月23日には「朝鮮共産党北部朝鮮分局」の設置が京城の朝鮮共産党中央委員会によって承認され、これがやがて朝鮮労働党として発展していく。p91
朝鮮半島の統一国家樹立を目指さず、あくまでもソ連スターリニストの言うことを聞くしかなかった「共産党」であった。朴憲永は南朝鮮での米軍の弾圧が酷くなり、北に逃げて南の反米闘争を指導、北朝鮮の南進による朝鮮統一に積極的であったが、朝鮮戦争後に米国のスパイとして除名、逮捕され、55年2月に処刑された。

朝鮮半島の分断については、この新書の1章だけでは説明できない重い歴史があり、その中には当時の朝鮮や日本の「共産主義者」の責任もある。また、ソ連を含む連合国が朝鮮の即時独立を認めず「信託統治」としたことは、

第二次世界大戦で連合国は自由と民主主義を標榜していたが、民族自決と植民地解放を掲げていたわけではなかった。そもそも連合国の主敵であったドイツは「第三帝国」と称しながらも、植民地を持たない名ばかりの「帝国」であった。対独戦で民族自決や植民地解放は大義名分にはならなかったのである。p83

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コメント

まぁ朝鮮人に統治能力が無いのは、日本統治前の惨状を見ていれば、そりゃぁ苦笑するだけでしょうw

投稿: ROM人 | 2011年8月18日 (木) 00時46分

そりゃ、外国勢力がバンバン介入し、李朝が衰えてしまったら民衆も疲弊します。しかしそれと統治能力の有無は別問題です。
日本も「明治維新」に失敗していたら、そのような惨状になっていた可能性はあります。

問題は、日本からも含め、近代国家の何たるかを学んだ朝鮮人民が多くいるにもかかわらず、「連合国」が「統治能力ナシ」と勝手に判断したところです。右の人には、この欧米・白人の散漫さを、もっと批判して欲しいですね。

投稿: あるみさん | 2011年8月18日 (木) 08時08分

植民地支配と言ったって、実際に行政や警察の多くを担っていたのは朝鮮の人たちではないですかねえ。
だから南に帰国した独立運動家に実務能力が欠けていたとしても実際の実務は植民地時代の役人でこなせたとは思いますけどね。

北の方でも、軍事パルチザンやってた金日成らに行政の実務能力がある筈もない。
しかしソ連型共産主義の統治方法を習得した帰国共産主義者がそれを補ったらしいですね。
発展途上の初期段階では、そういった中央集権制も有効なのかなと言う気もします。

もっとも、そういったソ連派も金日成が権力を確立する過程で邪魔となって粛正か追放の憂き目に会うわけですが。

以上は、昔図書館で借りて読んだ『北朝鮮王朝成立秘史』(自由社)によるものですけどね。

投稿: BM | 2011年8月19日 (金) 22時40分

>日本も「明治維新」に失敗していたら、そのような惨状になっていた可能性はあります。

当然でしょう。
理想はどうであれ、結局のところ世界は「正義は勝つ。何故なら勝った者が正義だから」というルールで動いているわけですし。
どれだけ言葉を並べようとも、力無き者の言葉は妄言でしかありませんからね。


>日本からも含め、近代国家の何たるかを学んだ朝鮮人民が多くいるにもかかわらず

上記の理由で、実際に知性を持っている人間がいるのと、その人物が力を持っているのとは別問題ですしね。
白人の傲慢さなんて今に始まったことじゃないでしょうにw
そもそも太平洋戦争だって言いがかりのようなもんですし。

投稿: ROM人 | 2011年8月19日 (金) 22時49分

BMさん、フォローありがとうございます。

>「正義は勝つ。何故なら勝った者が正義だから」というルールで動いているわけですし。
というルールを改めるためにも「歴史」をきちんと学ぶことが必要なんですね。

昔はこうだったから仕方が無い…ぐらいで止まっているならまだしも、同じようなことが形を変えて繰り返されているのだから…

あっ、このシリーズ、中国・「満州」・台湾・その他編と続ける予定ですが、今疲れてるので、パス…

投稿: あるみさん | 2011年8月21日 (日) 22時35分

>ルールを改めるためにも「歴史」をきちんと学ぶことが必要なんですね。

無理ですね。
ルールを改めるためには、結局の所力が必要なのは当然です。


力とは、別に暴力だけではありません。
財力、権力、そして数。
結局の所民主主義という、表面こそは平等に見えるシステムも、結局は数の暴力でしかないですし。
左翼の大好きなデモや闘争など、数の暴力によって意見を通そうとする行為の典型じゃないですか。

投稿: ROM人 | 2011年8月22日 (月) 00時22分

>あるみさん

帝国主義者たちは朝鮮ばかりではなくて、インドネシアやインドシナの人たちも統治能力がないと舐めていて支配を続けようとしていた。
しかし、その傲慢さによる判断の誤りを彼らは思い知ることになりました。


人種論的な欧米と白人が傲慢ということではなくて、「帝国主義」的な考え方とか目線が傲慢なのではないでしょうか。

だから欧米や白人でなくとも「帝国主義」的な目線には傲慢さがあります。
そしてそのような傲慢な目線は判断を狂わせる有害なものだと思います。

そういった傲慢な目線は『戦争論』という漫画にもみてとれましたね。

投稿: BM | 2011年8月23日 (火) 08時32分

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