« 15.9㎞/ℓでゲソ | トップページ | ひたちなか海浜鉄道完全乗車闘争 »

TPP反対の大義…モンスーン・アジアとの協同を

001
PART1 TPPと農業・農村・日本社会において、「北東アジアにおける食料・農業共同の芽を摘み取るTPP」(高知大学教授 飯國芳明)の論を最後に紹介する。
まず最初にガット・ウルグアイラウンドに触れ「国際ルールの設計は、そのときどきの加盟国の交渉力に左右される。日本も強いパートナーを探し、交渉力をもつことが望まれるが、先のウルグアイラウンド交渉では日本は孤立した。基礎的食料論を打ち出した日本と立場をともにするパートナーは不在であり、コメを通じて協同できるアジア地域との連携は容易に実現しなかった。当時、アジア諸国のほとんどは途上国であり、日本と連携して交渉に臨むメリットは少なかったのである。p87」と総括している。その後、日本は1998年にEU,スイス、ノルウェー、韓国など、農業の多面的機能を重視し、水田稲作を交渉に位置づけやすい理念を共有し、EUの参加により交渉力も高かったが、結束力は弱く、EUは2003年に離脱してしまう。それ以降の努力も空しく、「真の日本農業のパートナーは実現できていない。p88」と説く。
そして日本が協同すべき経済圏は、アジアないしモンスーン・アジアであると説く主張が多いことを採り上げる。「夏に湿潤なモンスーン・アジアは水稲作に適しており、米の依存度が高い。世界の米の生産量や作付け面積はモンスーン・アジアに集中しており、そのシェアは9割近くに達している。かつての米の単位面積当たりの収穫量は小麦よりはるかに高く、その人口扶養力が現在のモンスーン・アジアの稠密な人口分布を形成してきた。結果として、一戸当たりの耕地面積は小さく、アメリカやオーストラリアなどの新開国や欧州などと比較すると、土地利用型の作物(穀物など)の競争力は著しく低い地域となっている。p89」要するに、アメリカやオーストラリアがいるブロックと米の完全自由化をするならば、たちまちこの地域の農業はぶっ壊れる。モンスーン・アジアにはTPP参加を表明しているベトナムやブルネイなんかがあるが、それらの国々はTPPによって資本投下が自由になされ、解体した農村から人口を吸収する産業が生まれる「メリット」があるが、少子高齢化の進む日本の場合、それらを受け入れる産業はいくら資本を投下しても現れないだろう。
著者は、モンスーン・アジアにおける1人当たりのGDPと農業保護率(名目所成立)を比較し、日本・韓国・台湾が突出していることを示す。それらの国々は戦後の「農地改革」を経て、急速な経済発展をするとともに、農工間の所得格差を一気に顕在化させた。そこで「日台韓は世界で最も高い水準の農業政策を採用せざるを得なかったのである。p90」
にもかかかわらず、日本・台湾・韓国はすでに大量の穀物を海外から輸入する食糧純輸入経済圏であり、協同して農業問題を同じ目線で解決策を模索し合える関係を確立しつつあると説く。それに経済発展著しい中国が協同のパートナーとして期待できる。「もちろん、政治体制や歴史的な経緯からみて中国を含む経済発展に伴って無理なく協同できるとは考えられないp91」と述べているが、「北東アジアで生じつつある協同関係は、今後、他のモンスーン・アジアの経済発展とともに拡大・発展する趨勢にある(中略)したがって、萌芽期にあるモンスーン・アジアの協同は、TPPにより分断され、協同の芽は摘み取られかねない。p91」と説いている。
何やら「東アジア経済圏」の囲い込み、あるいは過去の「アジア主義」のような主張でもあるが、要するに、手を組むべきはアメリカ、オーストラリア等の新開国ではなく、モンスーン・アジアだということであり、これらを真剣に模索する必要があるのだろう。

|

« 15.9㎞/ℓでゲソ | トップページ | ひたちなか海浜鉄道完全乗車闘争 »

かくめいのための理論」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

「年次改革要望書」というものがあります。これが何を意味して、どういう利害関係があるのかよくわかりませんが、アメリカ帝国主義の延命をかけて、没落帝国主義としての日本を、中国スターリン主義の政治的・経済的・軍事的包囲網を構築するために利用する、アメリカの罠というのが私見ですが、この本「TPP反対の大義」を私も読みましたが、反対論者の迫力不足、恐怖心だけが目立って、新自由主義と市場原理主義とアメリカの戦略への批判が鮮明になっていないのが「イマイチ」という感想でした。

投稿: 元々中核派 | 2011年10月20日 (木) 22時55分

元々中核派さん、コメントありがとうございます。あまり紹介できなかった(というか、紹介した論文のチョイスが悪かったのか)確かにご指摘されたような点は見られます。ただ、どうしても「資本主義の殻」をつけて進まざるを得ない次の社会の有り方の様々なヒントが行間に書かれているような気がしたので「革命の書」となるか?と一番最初に書きました。もっとも、3・11が情勢をさらに押し進めた後に読むと、やはり生ぬるいかもしれません。
なお、同種のブックレット様の本「TPPと日本の論点」というのが同じ農文協からでていますね。それも読んでみたいとは思います。

投稿: あるみさん | 2011年10月22日 (土) 22時20分

追い出されたので今更戻ってくる気は無かったけど、余りにも人を馬鹿にしたニュースがやってきたので、ちょっと報告に。

野田政権がTPPだけじゃなく、5兆円をスワップで韓国に貢らしいです。
右側は当然ながら大ブーイングだけど、左側の人々はどう感じるのかなと。

投稿: ROM | 2011年10月22日 (土) 22時25分

関曠野氏が指摘しているピークオイル論(結構多くの人々が唱えている)に基づく文明史観からの批判に注目しましたが、農業とは何か、日本の農業とは何か、という観点からの批判も必要と思っています。これを提示しているのは、京大系の農学者、末原達郎氏や故・飯沼二郎氏です。チマチマと彼らの本を読んでいます。『文明は農業で動く』も興味深く読みました。ビジネスとしての農業や「再生会議」が回答した大規模農業も、早晩失敗すると見ています。

投稿: | 2011年10月23日 (日) 00時46分

ROMさん、これですね。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-23698820111019
>日韓が外貨融通を5倍以上に拡大、リーマンショック時上回る規模

左翼がどう感じるか…韓国経済の危機・矛盾の大きさ、そして結局それが日米帝国主義国家の手を借りないと「解決」できない。⇒と、いうことで、資本主義をぶっ壊そう!という結論になるかと思います。(なぜかこのネタ、論評なしに私も参加している左のMLで流れてきました)

名無しさんへ、有意義な情報ありがとうございます。きちんと気の効いたHNはつけてくださいね。大規模農業が成立といっても、それはいわゆる新開地のアメリカやオーストラリア、あと無理やり「集団化」した旧ソ連のコルホーズ・ソフホーズや中国の「人民公社」ぐらいしかないでしょう。それに先進諸国の大規模農業といっても、各局個人営農が主体のようです。
「企業化した第一次産業」というのも、それなりに地元に雇用を生み、しかも平均的サラリーマンと同じような生活ができる…というのであればある意味携わる人口は増えるでしょう。しかし、「サラリーマン農業」というのは、農業の性質上、成り立たないのですね。

投稿: あるみさん | 2011年10月23日 (日) 21時49分

まぁ韓国潰れたらアメリカのお金持ちが困りますからねー。アメリカ様からの圧力があったのは明白でしょうね。
 福田は身を挺して1兆$(円ではない)を守りました。一方でこのクズ内閣は……

資本主義の終焉がやってきていると言うのは同意しますが、そうなるとやっぱりベーシックインカムの導入ということになるのでしょうか。

投稿: ROM人 | 2011年10月23日 (日) 23時19分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1094529/42594506

この記事へのトラックバック一覧です: TPP反対の大義…モンスーン・アジアとの協同を:

« 15.9㎞/ℓでゲソ | トップページ | ひたちなか海浜鉄道完全乗車闘争 »