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白黒論争(その1)

白黒論争と言っても、別に白ヘルさんと黒ヘルさんの路線闘争のことではない。
道路の舗装を、コンクリートでやるか、アスファルトでやるか?というお話である。毎日jpのちょっと古い記事
セメント業界:道路舗装にコンクリートを 耐久性アピール
 

警察庁が昨年10月、自転車の原則車道通行の徹底を通達して以降、セメント業界が道路舗装にコンクリート活用を呼びかける動きを強めている。路面が傷みやすいアスファルトに比べて耐久性が高く、自転車が安全に走行できる点をアピールし、公共事業削減によるコンクリート需要の減少に歯止めをかける狙いだ。アスファルトの原材料となる原油の高騰や、国土交通省が道路の維持補修費削減のため積極活用する方針を示したことも追い風になっている。
 茨城、栃木両県を結ぶ国道293号では、大型トラックの往来が激しい栃木県佐野市内の2.4キロがコンクリート舗装されている。供用開始から12年が経過したが、路面に目立った傷みはない。一方、隣接するアスファルト舗装の区間は路肩のわだちが深く、交差点の傷みが激しい。関係者は「車道を走る自転車がハンドルを取られ危険」と指摘する。
 国内の道路のうちコンクリート舗装は約5%しかなく、大半はアスファルト。アスファルトは初期の建設コストが安く、工事も短期間で済むため、60年代に急速に普及した。だが、コンクリート舗装が20年から長いもので50~60年持つのに比べ、アスファルト舗装は10年程度で補修が必要となるケースが多い。
 また、06年に1平方メートル当たり7000円台だったアスファルトの舗装単価は、原油高騰で9000円台に上昇。一方、コンクリート舗装はセメントの主原料となる石灰石の国内自給率が高く、単価は9500円程度で安定し、アスファルトとの差が縮まった。国交省道路局も「改修費用を考慮すれば、アスファルトが2~3倍高くなるケースもある」として、12年度予算案にコンクリート舗装の積極活用を盛り込んだ。
 セメント業界が普及に力を入れる背景には、公共事業削減による国内需要の低迷がある。10年度は前年比2.6%減の4161万トンで、ピークだった90年度(8628万トン)から半減した。全国の126万キロの道路の一部がコンクリートになるだけで「莫大(ばくだい)な需要が創出できる」(業界幹部)と期待する。
 だが、コンクリート舗装は工期が長く交通への支障が大きいほか、路面が掘り返しにくいため地中に埋設されている水道管などの工事が難しくなる欠点がある。セメント業界は道路舗装に適したコンクリートの開発を進めているが、アスファルト業界は「コスト差が縮まっても、工事のしやすさを比べれば優位性は変わらない」と自信を見せる。道路舗装をめぐる素材間の競争が激しくなりそうだ。【寺田剛】
毎日新聞 2012年2月6日 19時27分(最終更新 2月6日 19時45分)

警察庁が云々はともかく、日本の道路はほとんどがアスファルト舗装(正確にはアスファルトコンクリート舗装という。「コンクリート」とは、まあ骨材が何かで固められた状態のことを言うので、通常のセメントで固めたものはセメントコンクリートと言い、石油精製の残渣であるアスファルトで固めたものをアスファルトコンクリートと呼ぶ。アスファルトコンクリートは、アスコンとも略される…ま、とりあえずここでは普通にアスファルト舗装と呼ぶ)

そー言えば、一昨年夏の大阪の生コン組合ストでのスローガンの中にも、「セメントコンクリート舗装の普及促進」ってな項目があったなぁ~。

もともとアスファルトと言うのは、原油をガソリンや軽油・重油に精製した残渣であり、昔はほとんど使い道がなかった。屋根とかの防水工に使われていたくらいだ。原油は日本ではほとんど採掘できないが、逆にセメントは日本中にある石灰石と石炭からわりと簡単に作れる・・・ということで、戦後、日本の道路も舗装を進めようとした時は、コンクリート舗装が主体だった。

名古屋は戦後復旧時に広い道路を作り、ことごとくコンクリート舗装をしたようだ。で、今も交差点周辺なんかではコンクリート舗装が残っている。

紹介した記事にもあるように、コンクリート舗装はアスファルト舗装に比べ、耐久性が非常に良い。教科書的には「アスファルト舗装は10年、コンクリート舗装は20年の耐久性がある」と習うが、40~50年、何の補修もせずに(あるいは軽微な補修のみで)持っているコンクリート舗装区間も多い。
その後日本でも石油化学工業が発展し、アスファルトが比較的安価に製造できるようになると、施工性の速さ、補修の容易さから、アスファルト舗装が主流となってくる。コンクリートが固まるには7~28日ぐらいかかるのだが、アスファルトは温度が低下すると固まり、完成した舗装として車を早期に走らせることができる。特に補修工事で通行止めや車線規制を行わなければならない時は、固まる時間が短いほうが良い。

ドンドン道路整備を行わなければならなかった高度経済成長期…当然、石油化学工業も発展しアスファルトも安い値段で手に入った…には、道路の舗装はアスファルトという流れができてしまった。

ところが、「石油製品」は中東情勢や何やらで、価格変動が大きい。また昨今は石油精製技術も発達し、十分な精製をすればアスファルトという残渣もほとんど出さなくてすむらしい。メーカーがアスファルトを作っているのはあくまで「道路舗装で使う」需要があるからなんだそうな。

対してセメントは、石灰岩の採取・調整では石油をつかうだろうが、製造工程で使う熱源は何でも良いわけだ。実際の所、廃タイヤ、廃パチンコ台なんかのゴミを燃やしてセメントは作られている。準国産で製造できる(ちなみにコンクリートにする砕石なんかも、国産で対応できる…もっともこれはアスファルト舗装の場合でもそうだが)スグレもんであるのだ。

ちなみに、私が大学で建築関係の本を読んだとき、「コンクリート造は現代の土蔵である」との言葉があった。まあ、コンクリート打ちっぱなし建築が流行った時の言葉なのだが、土蔵は現地にある土や藁、石灰で、コンクリートも現地(国内)にある石灰岩や石炭(まあこれはほとんど輸入、もしくは石油であったが)、砂利・砕石で作るものだから、本質的には同じものだということなのだと、いやに納得したものだ。(いわゆる緑系の方たちは「コンクリート」を人工的で無機質なものの象徴とみなすので、目をむくであろうが…)

世界の土木史を見てみると、すでに古代ローマ時代からセメントは使われていたし、中国からは5千年もの昔のセメントが発見されたとも聞く。

次回は、コンクリート舗装とアスファルト舗装の違い、長所短所について述べてみよう。


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