原発はすでに発展性の無い技術
昨日雨の中、首相官邸前に集まった方々、その他、日々「反原発」の活動をされている方、おつかれさまです。今日は技術史(というほどでもないが)的に見た「反原発論」をちょっと展開してみよう。
ある人と原発について議論になって「コメット連続墜落事故」の原因を究明する過程で新たな知見が生まれ、航空機はより安全になった。(コメット連続墜落事故については、Wikiのこちらを参照)だから徒に「脱原発」を進めるのではなく、事故を教訓に安全な原発を目指すべきではないか」と問われた。それに対する私の答えは、「そうすると、『安全な原発』が完成するためには、チェルノブイリ・フクシマ級の事故があと何回かは起こらないといけないだろう。それに人類は耐えられるのか?」と返した。
まあ、原発の「過酷事故」なぞ、スリーマイル、チェルノブイリ、フクシマの3件ぐらいであるのだが、原子炉・原発の開発・普及段階において、けっこう「小さな事故」は起こっており、その度にすくなくともプラント設計側での改良・改善、および運用のルールが「確率」されている。逆に「安全」になった航空機でも、ときどき墜落したりしている。ただ、航空機が飛んでいる総数より、墜落等の「過酷事故」件数は非常に少ないので、その確率は非常に小さい。要するに航空機の安全技術はすでに確立されたものであるということが言える。
原発のほうは、小さな事故が「過酷事故」にならないような設計・運用はそれなりに確立していて、まあ安全性としては95%くらいはあるのだろう。ところで、何でもそうだが、安全性を80%から95%に上げることよりも、95%から99%に上げることのほうがはるかに難しい。そして「原発」の場合、致命的に99%いもっていくための「経験」をするわけにはいかない・・・すなわちここで技術の発展が止まるのである。ちなみに、ある原発技術者によれば、原発では新しい技術・製品をいきなり導入することは「ご法度」であり、安全性の確立された実績のあるモノしか採用できない…すなわち技術者としてはあまり面白くないところなのだそうな。
で、「原子力の黎明期」(とはいったいいつ頃か知らんが、20世紀前半ごろ)、原子力エネルギーを得たことで、あらゆることが原子力でできるようになる「バラ色の夢」が描かれていたものだ・・・実際、鉄腕アトムもエイトマンもドラえもんも「原子力」で動いていることになっている。
だが、結局原子力でできることは、原爆で大量に人を殺すことと、お湯を沸かしてタービン回して電気を作ることだけだった。電気は別の方法でも作れるので、出力100万kWオーダーの巨大プラントをバカスカ建てることにしか活路を見出せなかったわけだ。
しかもウラン燃料には限りがあるが、燃えカスを再処理してプルトニウムを取り出し、「高速増殖炉」で発電すれば燃料を有効に利用できるという「夢」も、実証炉「もんじゅ」の大失敗(熱をとりだすためのナトリウムが冷えて固まらないよう、発電もなにもしていないくせに毎日大量の電力を消費している…「電力不足」なら「もんじゅ」のナトリウム暖めを止めるべきじゃなイカ)、および六ヶ所村の再処理工場の稼動がうまく行かないことから、完全に頓挫した。
定期検査や事故の時、人間がかなりの被曝労働をしないと成り立たないという点は変わらず、(ロボット等の完成はまだ先、原発内労働ロボットが完成してから、原発をうごかすのがスジだろう)、使用済み核燃料やその他放射性廃棄物も、コンクリートで周りを被って地下に埋めるしかない(それ自体、ほとんど完成した技術である…ただし何万年持つかは不明)ぶっちゃけた話、若い技術者が野心に燃えてチャレンジするには、あまりにも面白くない技術なのである。(軍事利用したければ別だが)
もちろん、何年か先に別分野で技術の「ブレイクスルー」があって、それを使うことで「安全な原発」ができる可能性はある・・・しかし今無い「技術」でもって、現在ある物を「評価」することなぞナンセンスである。
とはいえ、小出裕章氏も言うよう、これから原発を「解体」し、廃棄物を「安全に管理する」技術を向上させるために、技術者が必要である。「世代間対立」はあまり好きではないのだが、そのお仕事は、原発の「恩恵」を受け、かつ危険性を知りながら止めることのできなかった我々以上の世代にあるのだろう。
・・・ソウイウモノニ ワタシハナリタイ・・・
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