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発想の転換から出来た新しいコンクリート(その1)

資格取得のため色々お勉強しているついでに、いろんなネタも拾ってきてしまう、技術屋さんのひとりごと…

 コンクリートに塩分は禁物である。なぜなら中にある鉄筋が錆びてしまうからだ。山陽新幹線の高架橋のように、高度成長期時代に建設されたコンクリートには良く洗浄されていない海砂が使われたため、中の鉄筋が錆びている。鉄筋が錆びると体積が膨張するので、コンクリートにひび割れが入ったり、外側が剥がれ落ちたりする。日本海側の海沿いや沖縄なんかでは、海からやってくる塩分が多くいため、セメント量を多くした緻密なコンクリートが使われる。また冬に散布する凍結防止剤も、主に塩だから橋梁コンクリートを痛めている現状がある。

 海砂については、塩分量規制がおおむね守られており、またコンクリート自体も1m3当たり300g以下という「総量規制」がかけられるようになった。また、土木学会コンクリート標準示方書(施行編)にも、「練り混ぜ水に海水を使ってはならない」と記述されている。海水は塩分だけでなく、硫化物も含まれているため、「エトリンガイト」という膨張性のある水和物が大量に発生し、コンクリートがぶっ壊れるからである。

 ところが、東北の被災地復旧工事等で、骨材が足りないため、海砂や海水で練った「海水・海砂練りコンクリート」というのが使われている。塩分とセメントの反応等により、より緻密で、強度の高いコンクリートができるんだそうな。

 鉄筋の腐食についても、エポキシ樹脂で被覆した鉄筋(近年建設される海岸近くの重要構造物には、スタンダード的に使用されている)や、ステンレス鉄筋(最近、JIS化された)、炭素繊維補強材(鉄筋の代替品として使われる)を使えば、問題はないとのこと。

 もともとこのコンクリート、アメリカで低レベル放射性廃棄物を拡散性の低い天然の岩塩層に建設されたことから、海水を使って岩塩層相当の拡散性の低いコンクリートが出来ないかと㈱大林組で開発が始まったもの…試験で強度の増進や岩塩層並の透水係数が得られたことが確認されている。岩塩並みの緻密さは、先ほどの「エトリンガイト」の針状結晶がコンクリート水和反応物の隙間をうまく埋めている構造になっていることも電子顕微鏡で確認さえている。

 

 コンクリート業界では、鉄筋が錆び出すのは1m3当たり1.22.5kgとされているが、「海水・海砂練りコンクリート」ではコンクリート1m3当たり3kg程度含まれている。普通に海砂や海水をそのまんま使ってコンクリートを練ると、このぐらいの量になるのだろう。もっとも、第二次世界大戦中に日本で船舶不足を解消するために建造された武智丸…というのが、広島の安浦漁港に防波堤代わりに置かれている。このコンクリート船は塩田を改造した造船所で作られたため、海砂が使われているようで、調査するとコンクリート中の塩分量は9㎏/m3もあったのだが、中の鉄筋はほとんど健全だったそうな。もっともこの時代、機械力が乏しい日本がコンクリート船を大量に作ることはできず、少しずつ丁寧に施工されたのも良かったのであろう。

 被災地で問題となってくる、除染後の土砂や低レベル放射性物質扱いしなければならない汚染ガレキ、さらにはこれまでに出てきた、あるいは原発の解体に伴って大量発生するであろう低レベル放射性汚染物は、このような緻密なコンクリートの中に閉じ込め、厳重にモニタリングをしながら管理していかなければならないだろう。

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