« 「ネットと愛国」…「在特会」に対する右翼の評価 | トップページ | 「ネットと愛国」…本当は普通の人が怖い »

「ネットと愛国」…「階級闘争」を闘う「在特会」

 「在特会」や「ネット右翼」の主張をちょっと研究しているような方は既に知っているのであるが、彼等は「階級闘争」をしていると主張する時がある。
 すなわち、「在日」や「外国人」、「被差別部落」、それらを支援する「左翼」が奪っているものを、取り戻すのだ!という具合である。(もう少し広げて考えると、既存体制内に「左翼」が巣食っていて、そいつらが奪っているものを取り返すという論理構造も持っているようだ。だから旧来の自民党的なものや、民主党をも「左翼認定」されてしまう。)
 ただ、「何が奪われているのか?」という内容には、非常に乏しい・・・「ネットと愛国」では、最初、「生活保護問題」と言う形でそれを主張する「在特会」の姿が取材されている。曰く、日本では生活保護がもらえないで、3万人もの自殺者がでているのに、「在日特権」で生活保護が受けられるのはおかしい。日本人に優先的に生活保護をまわせ!という具合だ。(いまや日本人も外国人も「平等に」、「水際作戦」で生活保護から外されているのだが・・・)

 「ネットと愛国」から、「我々は一種の階級闘争を闘っているんですよ。我々の主張は特権批判であり、そしてエリート批判なんです。」「だいたい、左翼なんて、みんな社会のエリートじゃないですか。かつての全共闘運動だって、エリートの運動にすぎませんよ。あの時代、大学生だけで特権階級ですよ。差別だの何だの我々に突っかかってくる労働組合なんかも十分エリート。あんなに恵まれている人たちはいない。そして言うまでもなくマスコミもね。そんなエリートたちが在日を庇護してきた。だから彼らは在日特権には目もくれない。」
ここで「階級闘争」なる言葉が飛び出してくるとは予想だにしなかったが、言わんとすることはわかる。つまり彼らは自らが社会のメインストリームにいないことを自覚しているのだ。自分たちを非エリートだと位置づけることで、特権者たる者たちへの復讐を試みているようにも思える。(p56)
 もちろんかつての全共闘運動はともかく、そこから先細りになった「新左翼業界」にいると、収入の多い職業に就かず、黙々と「運動」を担ってきた人が沢山いるし、関西における「在特会」の強敵、「連帯労組」や「釜日労」が「エリートの運動」だなんて、だれも思いやしない。「エリート左翼」として思いつくのは「共産党」やら、「自治労」「日教組」ぐらいか・・・しかしその勢力だって完全に凋落している。ちなみに引用した言葉を放った人物は、東大大学院を卒業し、大手化学メーカーの研究所に勤める「エリート」であるところが、興味深い。 

 とはいえ、「在日会」を構成するメンバーの多くは「普通の人」であり、会社員やOLであったりする。活動に入れあげて会社を辞めるような人も居る様だが、普通に暮らし、「在特活動」も身銭をきり、休日に(あるいは休暇を取って)行っている。古い左翼ブロガーの中には「ネット右翼はフリーターやニートが本来の『敵』とたたかわず鬱憤をはらしているだけ」的な、卑小かつ逆差別的な認識をバラ撒いている(いた)のも多いのだが、ちょっと右系のブログをチェックしても、高い学歴を持ち、安定した職業に就いている者が書いていることが分る。・・・そもそも「ネット右翼」の主要言論(「南京大虐殺否定、従軍慰安婦否定、日本は侵略戦争しなかった等)・・・の元ネタは、80年代頃から右派文化人によって書籍化されていたのだから、それらを読みこなす能力と時間が必要なのだ。

 「奪われた物」とは何か良くわからないが、ほぼ確実に「将来が不安」な日本経済や政治の停滞状況が逆転して「何かを奪われる」「奪われつつある」と感じるようになる。おまけに中国や韓国の「経済力」も増してきた・・・では奪っているのは外国、特に日本に居る「在日」だ!というのは、ある意味すごく分りやすい。

 「何かを奪われる」「奪われつつある」と感じている人たちに、きちんとしたオルターナティブを提示できなかった「左翼」の無力さが、彼らを生み出したとも言えなくない。(このへんは「若者を見殺しにする国」の著者、赤木智弘氏にも共通する)
 一部の新左翼は「日帝打倒!」「〇〇粉砕!」と威勢の良い言葉を並べてはいたが、それに至る道は示されていなかった(せいぜい「労組」や「自分の組織を大きくすること」)それよりも「平和憲法を守れ」「憲法を守れ」「福祉を守れ」と言いながら「守勢」に立ち、負けてばかり・・・それよりも「在日をたたき出せ!」「在日特権を、粉砕せよ!」のほうが、達成が出来そうだ、幸いそのように感じている「日本人」は大勢居る・・・味方は大勢だ!

 最後はこの「大勢居る」日本人について、「ネットと愛国」を語ることでしめよう。

|

« 「ネットと愛国」…「在特会」に対する右翼の評価 | トップページ | 「ネットと愛国」…本当は普通の人が怖い »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

かくめいのための理論」カテゴリの記事

コメント

そうですね。主観的には階級闘争ですね。そして、左翼が彼らを産んだという分析は、大坂仰山党の猫同志が行なっていたことです。

さて。ナチスも階級闘争の一環としてユダヤ人を殺しまくっていましたね、主観的には。そういうことを思い出しました。

投稿: TAMO2 | 2012年9月11日 (火) 00時05分

「エリート」の解釈をはき違えてると思うんですよね
とくになにもすることなく多大な恵みを享受するもの
またはマスメディアや教育界に携わり影響力を持つもの
ネット右翼といいますがどんな人がそれに当てはまると?
あなたは「ネット右翼認定」を「左翼認定」並みに理不尽にしているという可能性もあるのでは
テレビや偏った教育で歪んだ歴史観を持つものがネットでそれとは違う歴史に触れる
歴史とは表裏一体であるとはいえ日本の戦争をただの侵略とするものと外国の植民地囲い込みによる資源の枯渇が原因とするものでは違いすぎる
これでは反動で納得できるほうに偏っても仕方ない
あなた達の考える歴史は薄すぎるんでしょうよ

投稿: か | 2012年9月11日 (火) 05時21分

日本の戦争をただの侵略とするものと外国の植民地囲い込みによる資源の枯渇が原因とするものでは違いすぎる<

違いすぎるね。確かに。それでどうして日本はABCDに包囲されたの?
なぜ、アメリカは石油を輸出しなくなったの?

日本が何もしないのに、経済的な締め付けがなされたのかな?

何か理由があったのだとしたら、それはどんな理由か?

調べ、考えてみるべきだろう。

追い詰められる前に侵略したのであり、それは経済的な理由ではなく
「我々は天皇の赤子であろ。ゆえにアジアの盟主である」
と思いあがったからである。その傲慢なる妄想が日本を、日本人を奈落へと突き落としたのだ。

投稿: かんご | 2012年11月 3日 (土) 22時02分

>追い詰められる前に侵略したのであり、それは経済的な理由ではなく

我々は天皇の赤子であろ。ゆえにアジアの盟主である」
と思いあがったからである。その傲慢なる妄想が日本を、日本人を奈落へと突き落としたのだ。

日中戦争について言えば、開戦直前の世論が8割とか9割戦争したいと言ってるのとは裏腹に、天皇も議員も外務官僚もエリート軍人も大半は開戦に反対だったわけで、リットン調査団がきてる最中にうっかり軍事行動を起こしちゃったから戦争しなきゃならなくなっただけ。当時の日本の指導層のお茶目なドジっ子っぷりはさすが萌え文化を育んだ土地柄と言わざるを得ない(迫真)

投稿: とおりすがるよ | 2013年6月29日 (土) 20時59分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「ネットと愛国」…「階級闘争」を闘う「在特会」:

« 「ネットと愛国」…「在特会」に対する右翼の評価 | トップページ | 「ネットと愛国」…本当は普通の人が怖い »