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実はかろうじて電力が足りていた

先日、四電前で「電力は足りてるぞぉ~」とアピールしてきたが、では大飯原発再稼動前に喧伝されていた「電力不足キャンペーン」は何だったの・・・という思いもあ20120813001 り(かつ、「反対の立場からどうみえるのか?」という検証も含めブラックアウト大停電を回避せよ 電力マンたちの暑すぎる夏(夏目幸明著 PHP研究所 2012年7月16日初版)を読んで見た。

その前に、ブラックアウト(大停電)がどうゆうふうに起きるのか、本書からひらってみると、我々が描いているイメージとはエライ違うことが良く分る。
「よく”それでも供給力10%は余裕の持ちすぎなのではないか”といわれるのですが、そうもいかないのです。供給予備率が3%を切ったぐらいから、周波数が乱れたり、電圧降下が始まったりします。もし供給予備率が1%を切ってしまったら、”いつ停電してもおかしくない”状態です」(中部電力広報担当者)
では、電力が足りなくなるとどうなるのか、例えば、電灯が徐々に暗くなっていく、テレビの映像が乱れ始める、といった現象が起こるのだろうか?
「いえ、いきなりブラックアウトです。予備供給率が0を切った時点で一気に大停電が起きる可能性があります」(中部電力広報担当者)p34
「だから我々は入社以来、ずっと”絶対、何が起きてもブラックアウトだけはさせてはいけない”と徹底的に教育されるんですよ。私も同じですし、社内の人間も、現場から社長まで全員、その意識が徹底されていると信じて欲しいですね。(以下略)」p38~39

 本書は2009年に運転を停止した、中部電力・武豊火力発電所二号機を「再稼動」させる所から始まる。1972年運転開始、発電効率も低いこの火力発電所はこのままか痛いされる予定だったが、浜岡原発の停止を受けて、急遽、修繕して使うことになったのだ。4年のブランクの間、様々な部品は錆びたり痛んだりしていたものを、なんとか期日までに動くようにしたのだという。

 次章で紹介されるのは、仙台火力発電所(LNG発電で、効率はなんと58%という最新鋭の発電所である)や福島第一原子力発電所から20キロ圏の近くにある、広野火力発電所の復旧物語である。電力関係の工事請負は、工程に遅れが出れば何らかの責任をとってもらうことになっている(もちろん普通の請負も工期をはみ出すのは完全な契約違反であり、ペナルティーがあるものだが)、東北電力はそれを問わない、とにかく問題点を洗い出して、必要なものをそろえようという方針の元、火力発電を復旧させたのだ。特に広野では、原発に近いということもあって、作業員が放射能を恐れてモチベーションが下がるのを防ぐため、5㎜シーベルトを越えたら即刻作業中止という基準を定め、逐一、計測した放射線量を公開したという。

ま、ここらへんは東京電の「規則(国の定めた安全基準)を守っていれば良い」という”几帳面”さと、東北電力や中部電力の”柔軟な対応”との対比としても描かれているが、その他、火力発電所が行わなければならない2年に1回の定期検査を1年延ばしにしたり(だから大飯が動き出したとき、関電が火力発電所を止めたのはあながち間違いではない・・・点検せねばならないのもあったのだろう)、冬季にまさに「ブラックアウト寸前」の火力発電所のトラブルがあったこと、さらに日本のLNG購入費が諸外国と比べ高いのは、他国ではパイプラインによって天然ガスが安価に、かつ様々なところから購入可能なのに対し、日本の場合は産出国にLNG化プラントを建設し、そこと安定供給のための価格交渉をしないといけない(このへんの事情は、韓国や台湾も同じらしい)ことなんだそうな。今現在は産出国に頭を下げて、以前の値段で出荷量も確保してもらっているとのことであり、ほーそうなのか!と感じることも多かった。

本書の構成を見てみると、
第一章 火力発電所の「廃墟」にて
第二章 東北電力の信念
第三章 知られざる大赤字
第四章 自然エネルギーの実力はいかに
第五章 夢の放射能除去
第六章 正しく恐れよ

と、まあ「原発問題については、経済面も考えて、もっと冷静に考えましょう」というスタンスであり、第一章~第四章までは、火力発電、復旧の奮闘等を覗けば、ごくありふれたことを言っている。第四章は発電コストのことが主に書かれているが、コスト云々よりも「代替電力」は今完成している技術で考えないとダメですよ・・・ということにも注意しなければならない。

なぜなら、第五章が、あまりにもノー天気な内容だからである。もちろん「放射能除去装置」の開発はアニメのフィクションなのだが、
さまざまな物質を含む”使用済み核燃料”になる、含まれる物質は、おおまかに以下の四種類に分けられる。
1.ウラン、プルトニウムなど、再び発電に使えるもの(約95%)
2.貴金属
3.熱を出し続ける放射性物質(セシウム、ストロンチウム)
4.半減期が数万年を越える物質を含む、その他の放射性物質(p145~146)
に分けられ、そのうち1~3は利用可能とのたまっているのだ!このへんがPHPクオリティだなぁw
1~3を実際利用する過程で「再処理」が必要となってくる。これが商業的に成り立つ技術として、まだ完成していない。(青森県六ヶ所村で無理やり稼動させようとしているが)。再処理工場では厖大な電力を使用し、かつ大量の放射性物質が原発よりもわずかな期間で発生する。こんな危険なモン、稼動できるか!
さらにプルトニウムを利用する高速増殖炉「もんじゅ」もおしゃかになったまま…第5章には「もんじゅ」の技術を捨てるのはもったいない(そりゃ、開発者いインタビューしたら、そう言うわな)という節まである。

第6章は、「多重防護」で安全性を確保しようとしている今の原発現場を取材している。ただ、「多重防護」はもともと原子力を利用する時から、基本として行われてきたことである。ところがプラントのように1箇所にかたまっているものを「多重防護」でつつみ、「99.9%の安全」を求めれば、ものすごいコスト増になる。
「防災」の世界では頻発する土砂災害や、この度の東日本大震災を受けて、「多重防護」と「ソフトとハードを総動員した、「減災」で対処することに重きをおいている。ある程度の災害は許容するものの、生命だけはなんとか助かるようにしよう・・・ということで、国土のグランドデザインも再考されつつある。ところが原子力施設には「減災」という考え方はなじまない。それこそ「多少の放射線はガマンしてもらう」コンセンサスが得られないからだ。

さて、私も「電力は足りている」キャンペーンは、あまり言わないことにしておこう。また、原発にこだわり続ける関電も、新規に原発4基分の火力発電所を和歌山に造る計画を打ち出した(もっとも、和歌山の自然豊かな海岸に火力発電を「押し付ける」都会や産業構造を変える必要があるのだが…火力発電は、大阪に!)脱原発は、火力発電をベースに、産業構造やライフスタイルを「電力依存」・・・これは現代資本主義社会の有り方を大きく変える必要がある・・・から切り替えるほか無いのだということを、きちんと打ち出そうではなイカsign03

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コメント

う~ん、今すぐの原発全廃は現実的でないと思えますね。
いろいろな技術の進歩で、原発に徐々にとって変わって行くのが妥当な道ではないかと。再稼動しないことでの、経済への悪影響は決して無視できないという気がします。

投稿: BM | 2012年8月14日 (火) 20時32分

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