「ネットと愛国」…「在特会」に対する右翼の評価
「在特会」の代表、桜井誠は、当初掲示板での「反在日、反韓国」活動で注目を浴び、2005年、右派ジャーナリズム「チャンネル桜」に出演することになる。社長の水島総をはじめ、行動する右翼関係との人脈が出来き始める。「主権回復を目指す会」の西村修平と出会うのは2007年夏、西村自信、長くチベット解放、反中国といった保守運動に関わり、その激越なアジテーションと行動力、ネットを使った宣伝は桜井の「在特会」に引きつがれてゆく。
一方、「在特会」やその他の市民団体系の「行動する右翼」に結集した人たちは、既成の右翼運動では、結局何もできなかった・・・普通の「市民」が声を上げることによって、世の中が変わるんだと考えている。その中でも直接「在日外国人」問題を取り上げ、大声を出して堂々と主張しだしたのが、「在特会」なのである。なぜかこのへんは、「党派の左翼運動」が下火になるにつれ、市民運動、なになにネット・・・なる運動が「反戦」「反開発」「エコロジー」をやりだした経緯によく似ていると感じた。
既成の街宣右翼運動、民族派新右翼運動も、この「市民運動スタイル」からの批判にはぐうの音も出なかったようだ。やがて桜井は、西村のスタイルをより過激に引き継いだ運動を展開してゆく。
ところが、「京都朝鮮学校排撃運動」「徳島県教組占拠行動」で逮捕者、起訴者が出たりしたあたりから、「在特会」に入会している会員からも、何かおかしい!?と、運動から離れる者がでてきた。逮捕者・起訴者が出るくらいのことをすれば、理論の見直しを始めとする運動方法の見直し、既成保守・右翼との連携など謙虚に学ぶことをせず、相変わらず街頭で相手を「ヘイトスピーチ」と「暴力」でやっつけるだけでは、誰が見ても「単なる弱いものいじめ」にしかならないだろう。実際、在特会の元会員には、在日韓国人の友人を持ち、その彼に聞かせられないような言葉は言わないようにしていたというのもいる。
さらに3・11後、「反原発・脱原発」が「国民的課題」になり、右翼の中にも統一義勇軍の針谷大輔などは「右から考える脱原発ネットワーク」を組織し、桜井の「育ての親」にあたる西村修平も「(原発事故は)誰もが否定し得ない惨禍。国土を守るためにも脱原発の声をあげなければならない。」(p294)と主張、「脱原発愛国デモ行進」などを実施している。
ところが桜井らは「脱原発運動の中心は左翼活動家だ!」と決め付け、そのカウンターのためにのみ「原発の火を消させない国民会議」なる団体を立ち上げ、「原発を反日左翼から守れ!」と叫びだした。これにはかつての師匠、西村修平も「『愛国』に名を借りたレッテル貼りを止めろ!」(p295)と声明を出し、名指しは避けたものの「在特会」を非難した。
さらに西村修平は「原発の是非を問う、これからのエネルギーを考える」と題する進歩ズムを企画し、主に保守派と目される人物から意見を求めようと、「原発擁護」の「在特会」桜井会長に電話をしたが・・・当の桜井は電話にも出ようとせず、止む無く副会長の八木氏が個人の立場で出席した。西村の曰く
「彼(桜井)はもう、僕と話すのがイヤなんだろう。それはそれで構わないが、運動のリーダーたる者が言論の場から逃走して、いったいどうするのか。原発擁護だ、朝鮮人を殺せだといった威勢の良い彼の発言も、結局のところ身内に守られていないとできないわけだろう。無責任としか思えないんだよな。」(p296~7)
ともあれ、既成右翼、民族派右翼から「行動する右翼」の一部まで敵にまわしてしまった「在特会」への評価は「彼らには思想が無い」ということである。
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コメント
左翼的には認めたくないでしょうが(笑)、在特会がデモの敷居を下げたのは事実だと思います。
投稿: TAMO2 | 2012年8月30日 (木) 17時57分
投手殿、その通り…で、後にもふれますが田茂神一派らの反中国デモや、在特会主催でないフジテレビデモ、花王デモにつながるわけです。
投稿: あるみさん | 2012年8月30日 (木) 21時42分