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なぜ「安保粉砕」なのか(なぜか戦後史総俯瞰⑤、これで最後)

 2000年台に入ると、反戦運動は「有事法制制定反対」闘争に向かう。いわゆる武力攻撃事態対処法関連3法と、国民保護法である。「自民党をぶっこわす!」「構造改革」と傍流からブチ上げた小泉政権との闘いになったわけだ。 小泉訪朝で金正日が認めた「北朝鮮拉致問題」や「不審船」に対する銃撃戦も利用して「北朝鮮が今にも攻めてくる」ような世論づくりが成され(これに対するカウンター情報源として、反戦運動関係のサイトに神浦元彰氏のサイトリンクが張られるようになる)、小泉は「備えあれば憂いなし」とワンフレーズポリティクスで「有事法制」成立を押し進めてゆく。

 ところが2001年9月11日、いわゆる「同時多発テロ」が発生。アメリカの中心部が堂々と敵に攻撃されるということが起こる。ここに米大統領ブッシュは「テロとの闘い」を宣言・・・「同時多発テロ」の首謀者とされるアルカイダのトップ、オサマ・ビンラディンを、アフガニスタンのタリバン政権が匿っていることを理由に、アフガニスタン攻撃を開始した。この時までは一応国連での決議や手続き、根回し等を行いながら国際紛争に介入してきたわけだが、今回はなりふり構わず「アメリカの国益」のためのみに軍事行動を起こしている。(これを「ユニラテラリズム」という)ちなみにこの時、沖縄の米軍基地もアルカイダの攻撃対象になるとされ、沖縄の自衛隊が米軍基地を守るという「変なこと」も行われた。また、沖縄への修学旅行の取り止め等が相次ぎ、沖縄経済に少なからず打撃を与えた。

 皆様ご存知のとおり、サウジアラビアの富豪の息子であるビン・ラディンは、ソ連のアフガニスタン侵攻に対する「ジハード(聖戦)」を行うために、ムジャヒディン(アフガンの対ソ連ゲリラ)としてソ連と闘い、自らの資金の他、アメリカの援助も受けて組織を作ってきた人物である。いわば「飼い犬に手をかまれた」わけである。また、タリバン政権とは、ソ連撤退後のアフガンでムジャヒディンが民族・部族ごとに分裂・抗争を続けていたのをなげいたオマルが、パキスタンで始めた「イスラム原理主義運動」・・・「タリバン運動」に対し、これもまたアメリカから援助を受け、アフガンを統一しようとしたものである。その政策は西欧の基準からみれば、女性蔑視、人権軽視といわれても仕方のないものであったが(ペシャワール会の中村哲氏によれば、タリバンは「田舎者政権」であり、アフガンの田舎で続いている風習をカブールなどの都市部に押し付けただけのものであると述べている。)「共産党」政権時代の官僚を上手に使い、それなりにまとまっていたところである。(なお、タリバン政権はアフガン全土を掌握していたわけではない)とはいえ、打ち続く内戦と旱魃などで疲弊し、「最貧国」となっていた。そんな国をアメリカは爆撃し、反政府勢力と協力してタリバン政権を倒したものの、今度はタリバンが反政府勢力化して内戦が続いている。

 さてこの戦争では、海上自衛隊がインド洋で多国籍軍に「給油活動」を行なうということをやっている。日米同盟による自衛隊の海外派兵である。

 この「対テロ戦争」の延長に、もう一度イラク・フセイン政権への戦争準備が始まる。曰く「イラクは大量破壊兵器を持っている」「アルカイダと関係がある」などとデッチ上げ、イラクへの攻撃を行おうとした。世界中でこの「大義なき戦争」への反戦運動が取り組まれるとともに、日本の反戦運動も「有事法制反対」から「イラク戦争反対!」に舵を切る。これまでデモに参加したことのない人がデモに参加し、党派系、市民運動系を問わず新しい活動家がこの時代に生まれている。
 しかし2003年3月にイラク攻撃は始まった・・・ブッシュはサダム・フセインに対し、「48時間(だったかな)以内に降伏するか、亡命するか!」と迫り、期限が過ぎると攻撃開始・・・イラク軍も「健闘」するかと予想されたが、「湾岸戦争」後の経済封鎖もあり、イラクそのものが疲弊していたことと、アメリカ軍の「事前準備」が万端であったため、本格的な戦闘は1ヶ月程で終了。実際に「戦争が起こる」という物理的事実の力は大きく、イラク反戦運動は下火になるとともに、「有事関連3法」も6月に成立する。(国民保護法は1年遅れる)

 その後イラクに自衛隊を派兵せよとのアメリカの要求・・・「Show the Flag!」から「On the Boots」・・・である。小泉は「自衛隊の居る所が非戦闘地帯」とわけの分らない答弁でゴマカし、(それを支えた防衛大臣が、この前自民党総裁に立候補した石破である)、自衛隊派兵を強行。活動そのものは「学校を再建する」など、現地の人には歓迎されたようだが、民間のNGOでも出来ることを、なぜ自衛隊がやるのか?という批判も出た。一方で反政府勢力からロケット弾で狙われるなど、明らかに「内戦」の終わっていない国の「一方の側」に公然と軍隊を派兵したのである。 

 小泉改革の「成功」を受け、「安倍」「福田」「麻生」と自民党内閣が続くが、「日米同盟」はそのまま強化されることで「確認」されてきた。一方、③~⑤で述べたように、日帝はあるときは日米同盟を理由に、ある時は国連PKOを理由に自衛隊を恒常的に海外に派兵している。海賊対策を口実にインド洋に海上自衛隊を派兵し、アフリカの角の根元、ジプチに恒久的な基地を建設している。

 「安保」が「日米同盟」となって、自衛隊が米軍にくっついて、あるいは独自の判断で地球の裏側まで戦争に行く時代である。日本本土はオスプレイの低空飛行等、アメリカ軍の訓練地として自由に使うと共に、沖縄に基地を押しつけ「世界最強」の軍隊を維持してる。
 「安保粉砕!」とは「日米軍事同盟粉砕!」であり、「日本の軍隊がホイホイ戦争に参加すること」に反対ということなのだ。

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コメント

分かりやすい戦後史の俯瞰ありがとうございます。
いま現在でなぜ「安保粉砕」かというのは、最後の数行に要約されているわけですね。
ただ、10年前のイラク戦争やアフガン戦争の頃とはだいぶ状況が変わってきているとは思います。
まず中国の急速な台頭があり、それに対して米国の国力低下があります。米国は相変わらず「世界最強」の軍事力を保持していますが、もはや本格的な対外戦争をする経済的な余力はありません。
米国のアジア重視への転換は、中国にオーバーランさせないという多分に防衛的な受身なものと思われるのですが。中国の冒険を抑制するという点では、米国と日本(ばかりではなくて他の東南アジア諸国も)は利害を共にすると思いますけどね。
したがって、今後日本がイラク戦争のような米国の「帝国主義的」な戦争に参加させられる可能性は低い。むしろ共同で(東南アジア諸国とも協力して)中国を牽制すべきだと思います。

領土紛争に米国が直接介入することはないでしょうけど、無形の支援や調停は期待できるわけです。
日露戦争も米英の無形の支援や調停がなければ、「勝利」は100%無かったように。

投稿: BM | 2012年11月 4日 (日) 11時17分

BMさん、普通の人にはつまらないと思われる話、長々とお付き合い下さり、ありがとうございます。
「ブルジョワ政治」的なパワーポリティクス論で言いますと、BMさんのおっしゃることも理解はできます。なんでもインドシナ半島では、ミャンマー、タイ、ラオス、カンボジアが中国からの「経済的」影響を受け、ベトナムが「孤立」しているようです。南シナ海における中国の「膨張」も、べトナムは封鎖されるという危機感を持っているそうです。
 で、ベトナム(中国の後追いをする「社会主義国」ですが)やフィリピン、マレーシア、オーストラリアと「連携」した「軍事・経済同盟」的なものを日米とも求めてくるでしょうね。最近言及していませんが、TPPもその延長上にあるかと思います。
 あと書き忘れたのですが「新左翼」の多くは「日米同盟」をぶっ壊すことで「日本帝国主義」に「革命」という化学変化を起こす、資本主義経済は繫がっているので、「日本革命」は直ぐに「アジア革命」に直結し、中国や韓国、北朝鮮なんかでも「革命」が起こって、軍事情勢も変わる(外征どころではなくなり、「革命政権」毎の新しい「国家」間関係を築くという、壮大な構想をもって今までやってきております。

投稿: あるみさん | 2012年11月 4日 (日) 20時51分

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