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開発と収奪の植民地朝鮮(その10)

そろそろ終わりに近づいてきた・・・植民地朝鮮における賃金差別の話・・・筆者が朝鮮総督府ひ就職している高級技術者のみ対象にした賃金関数分析によれば、第1に賃金に最大の影響を与えるものは、民族であった。他のすべての条件が等しいと仮定する場合にも、朝鮮人というただ一つの理由によって朝鮮人高級技術者は、日本人高級技術者の55.5%に当たる賃金しか受け取ることができなかったのである(p268)と結論づけている。
 つぎに同じく朝鮮総督府職員の昇進分析を試みている。まず、当時の朝鮮は(今の韓国や日本と同様に)学歴主体の社会であったとしている。その上で日帝時代のこの学歴による差別の本質は、学歴主義を偽装した民族差別であったという点を強調しなくてはならない(p272)と述べている。この理由は、朝鮮内では初代総督以来、朝鮮人に高等教育を受けさせないという方針が貫徹されることで、高等教育機関の拡充が遅々として進まなかっただけでなく、朝鮮人と日本人が共学する学校の場合は、民族別クウォーター制を導入して、朝鮮人の入学機会を根本的に制限した(p272)からであり、その反対に日本人の場合には、朝鮮内の高等教育機関で優待を受けて数的により多く輩出されただけでなく、当然、日本在住の日本人は日本国内の高等教育機関により手軽に入学することができた。(中略)民族により進学の異なる状況下での学歴による差別は、最近韓国や日本で起きている自国民の間の競争によるものとその性格を異にし、日本人を頂点にする植民地の人的支配を制度的に裏付けるものであったと言える。その結果、日本人がより高い号俸から出発し、朝鮮人がより低い号俸から出発するようになり、昇進速度にも著しい差が出て、朝鮮人と日本人の間の賃金格差を拡大させる要因として作用するようになった。(p272)と結論づけている。また、等しい学歴であっても、民族によって違う賃金基準が適用されたとのことである。
 ページは戻るが、ここでの分析は朝鮮総督府に就職している高級技術者のみを対象にしており、就業段階の民族差別として、1つは朝鮮人高級技術者は、日本人高級技術者たちと比較して、希望する職場に就職するのがはるかに難しかったという点である。もう一つは、朝鮮人高級技術者は、民間企業体に就職する場合は相対的に規模が小さな企業体により多く就職するしかなかったし、そうゆう企業体は一般に給与条件がより悪かった。これら2点を考慮に入れれば、ここでの分析で与えられる差別の程度は、過小評価されたものと解釈してもよいだろう(p269)と述べられていることに注意せよ。

長々と引用を続けてきた本シリーズ・・・ざっくりと次回は「まとめ」に入るよ(^^)

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コメント

>朝鮮人に高等教育を受けさせないという方針
それなら最初から学校とか帝大とか作るわけないだろ。

賃金問題に関してだが、根本的に教育格差が存在している以上、優秀な日本人を雇うのは自然な流れかと。まぁそれ以外にも民間における朝鮮差別があったのは確かだろう。
だがそれは国の責任じゃないな。

投稿: ROM人 | 2013年7月18日 (木) 21時41分

当時の賃金格差について単純に日本人朝鮮人の間に差があったとだけで労働需給関係や地位によって負わされる責任などが解りません。

それはそれとして日本の労働組合が生き残っているのは労働能力出来高を無視した賃金闘争でしかありません。
今でも労働組合は業務の難易度や出来高に関係なく年齢による賃金体系ベースで組織が存続しているだけです。
能力労働価値を重視するなら定年延長65歳をさらに伸ばすとかバカバカしい考えはありえません。

正規従業員と派遣労働者の格差といったものも労働価値をベースに給与設定すればありえません。

小企業零細企業ではもともと定年も正規派遣といった発想はありません、出来高基準で会社自体が潰れたらオレ様は正規社員だと威張ることがナンセンスです。

労働者差別と公務員を見習った生産性低下容認の民間大企業労働組合では後世に批判されます。

植民地朝鮮での賃金差別(事実関現係と程度はあいまいなままでも)を追求するよりも現在の労働組合そのものが身分固定と格差維持で存続していることが問題です。

投稿: tatu99 | 2013年7月19日 (金) 08時27分

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