インド農民を殺す「Bt綿」
「㈱貧困大国アメリカ」に記述されていたお話・・・
遺伝子組み換え(GM)作物で有名なモンサント社は、1995年から2000年までの間に世界各地で約50の種子会社を買収した。1999年、綿花生産世界第三位のインドの大手種子会社マヒコ社を買収、2001年にインドでBt綿の販売許可を取得した。Bt綿とは遺伝子操作により細菌由来の殺虫性毒素を導入した、蛾の幼虫を寄せ付けないGM作物である。2002年より、在来種より高価なBt綿を、殺虫剤の使用量を減らし生産量を倍増させるというキャンペーンを張って、インド中に売りまくった。大半が読み書きすらできないインドの農民に対し、インドの映画スター達を起用して華やかな宣伝を行うことで、インドの農民を「洗脳」したのだ。
インド政府の指揮により、在来種の4倍の値段のBt綿種子しか市場に出回らなくなり、かくしてインドの綿農家は、借金(貸し金業もモンサントの系列になっていた)して高価なBt綿の種子を購入するしかなかった。生産高が上がれば元がとれるだろうと・・・
2002年に4万ヘクタールだったBt綿の作付け面積は、2004年には55万ヘクタールまで拡大する。だが、綿花の収量は増えなかった・・・農薬使用量も、農薬に対し耐性強化した害虫によって倍増していた。そもそもアメリカの機構にあわせて開発されたBt綿が、降水量の多いインドで同じように収穫量を上げることは難しい。さらに世界市場で綿花価格が急落した。政府の巨額な補助金で保護されたアメリカ産綿花の過剰供給がその原因だった。
農民達の借金は膨れ上がり、次々に自殺へと追い込まれていった・・・2000年の半ばから農民の自殺率は急増し、2011年までに自殺者数は27万人に達した。
2005年7月18日、当時のアメリカ、ブッシュ大統領とインドのシン首相は「米印農業知識イニシアティブ・・・AKIに調印した。「インド農業の人材育成・研究制度の基盤作りへのアメリカの大学による積極的な参画」「新たなパートナーシップの形成」を売り物にした、インド農業市場へのアメリカの大参入である。もちろん、これに「期待」していたのはモンサント社、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド社といった米トップバイオ企業やスーパー最大手のウォルマート社だけではない。シンジェンタやテスコ、カルフールといった欧州企業のみならず、インドの大手老舗企業タタもそうであった。「世界の1%」が、インドの「99%(実際のところ、インドでの格差はそれ以上に酷い・・・わずか100人の超富裕層が、GDPの1/4をインドでは所有しているからだ)」を搾り取る、それがAKIだったのだ。
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コメント
問題はこれに対して「アメリカが悪い!」で済ませるのではなく、どうやって「アメリカに対処するか」でしょう。
抗議する、反抗する、と言ったところで相手がしたがってくれるはずもありませんからね。
そう考えると…… インドは難しいでしょうねぇ。日本の工業製品みたいに品質とサービスで勝負する、神戸牛みたいに希少価値で勝負する、というのが綿花だと難しい。
ならばいっそのこと、綿花を潰して大規模IT産業の確立を目指しても良いと思いますがね。優秀な教育システムのおかげで最近はインドのIT関係が伸びてきていますし。
IT業界ではその性質上、一番のインド発展のネックであるカースト制度も幅を利かせられない。中国ほどではないが人件費も安く、誘致や成長がしやすい。
こういう方向性も考えられますね。
投稿: ROM人 | 2013年9月 5日 (木) 19時32分
インドでは既に数学で優秀な人材が沢山いますから「ITでの国起こし」はやっています。問題はそこから外れた農民やそれ以外の人が、「多国籍企業」の収奪からどうやって身を守るか?です。基本的には「資本主義(帝国主義)の打倒」⇒革命しかないわけですが、それをどうやって起こすか、それが起きるまでどうしのぐか?ということです。
投稿: あるみさん | 2013年9月 6日 (金) 21時37分
革命が起きるにしても、そのプロセスも示さず「革命!革命!」と言われても…… 種まいて植えれば目が育つというわけでもないでしょうに。
てか、革命よりもナチスを造ればいい。合法的に国民から支持を得て、議会を乗っ取ったのなんてアレぐらいだ。
というか、ナチスの経済政策は色々すごい。というか、今必要。
天下り禁止。大衆車の開発、海外旅行の推奨、労働環境の改善、大規模工業事業(中抜き禁止)、専業主婦の推奨etc
投稿: ROM人 | 2013年9月 6日 (金) 22時49分
とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
投稿: ダウンロードの書き方 | 2013年12月11日 (水) 10時57分