金持ちだけが街を独立させちゃったお話
オリンピックのネタで、まっぺんさんが「オリンピックは都市が主催するもの」とコメントしてくださったが、その都市から「富裕層」が独立して新しい街をつくっちゃった話が、「㈱貧困大国アメリカ」で紹介されている。
2005年8月、ハリケーンカトリーナで大きな水害に見舞われたアトランタ・・・水没した地域に住む人のほとんどが、アフリカ系の貧困層だった・・・その近郊に住む富裕層はこう考えた。「なぜ自分たちの税金が、貧しい人たちの公共サービスに吸い取られなければいけないのか?」
住民投票まで行った結果、彼らにとってベストな解決策はこれだった「郡を離れ、自分たちだけの自治体を好きなように作って独立すればいいのだ。」と・・・
住民は皆、平均年収17万ドル以上の富裕層と、税金対策で本社を置く大企業だ。お金ならいくらでもある。大手建設会社CH2Mヒル社が、2700万ドルで市の運営を請け負うオファーを持ちかけ、両者の間に契約が成立した。正規職員を極力おさえ、契約社員を多く雇って人件費をできるだけ抑えた運営を行う。もちろん従業員に労働組合などは存在しない。数ヶ月で速やかに進められたこの計画は、2005年12月、人口10万人の「完全民間経営自治体サンディ・スプリングス」が誕生する。周辺地区ではサンディ・スプリングスに憧れる富裕層が同じような住民投票を実施し、次々と自治体運営を企業に委託、新しく5市が独立特区を形成した。
警察と消防以外のサービスは全て民間に委託し、払った費用に見合ったサービスが受けられる。24時間対応可能なホットラインが整備され、警備も万全、貧困と警察官の不足から毎日のように犯罪が起こる近隣地域とも無縁だ。かくして噂は世界中に広まり、中国やサウジアラビア、インド、ウクライナなどからも視察団が訪れる。
しかし富裕層に勝手に「独立」されて困るのは、周辺の自治体である。「富裕層」からの税収なしに、一体どうやって残された低所得者層のための学校、病院、公共交通、福祉サービスを提供すれば良いのか?「富の再分配」や「公共」「ノーマライゼーション」といった概念を全く失った、完全な株式至上主義の行き着いた先が、サンディ・スプリングスである。
こんなものは、もう「都市」ですらない。
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コメント
悪夢のような話ですね。
いずれ彼らは財力にモノ言わせて私兵を雇い、その軍事力は国軍を凌ぐでしょう。
これで「国民の国家」の時代は終わりかな?
投稿: BM | 2013年9月10日 (火) 22時21分
ある意味、ナチスはただしかったのかもしれんなぁ。
あの時枢軸が勝っていれば、ソ連もないし、中東問題もなし。アメリカの発言権も弱まって、今よりかはマシな世界だったと思う。
投稿: ROM人 | 2013年9月12日 (木) 00時54分
まさに自分の事さえよければ他人はどうなってもいいという人間の悪い部分が現実化したような話ですね。堤未果さん、私もとても尊敬するジャーナリストで、いつも彼女の本で勉強させてもらってます。彼女の文章はとても上手で、知識のないママにもわかりやすいんです。今岩波が中高生向けに出している「社会の真実のみつけ方」という本や、「政府は必ず嘘をつく」もすごーくお勧めですよ!前者は子供たちの学校現場がマネーゲームの対象になっていく様子を、後者は日本の原発後のからくりがわかりやすく書いてあります。私も息子の為に少しでも勉強しようと毎日奮闘しています。このブログも読ませて勉強させてもらっています。
投稿: Yurimama | 2013年10月22日 (火) 10時52分