自衛隊は災害救援に本当に役立っているのか?
東日本大震災を見るまでもなく、日本では度々あちこちで自然災害が起こり、大きな被害が出た所には迷彩服を着た自衛官が「捜索」「救援」活動を行っている姿が、TVで報道されたりする。
で、「災害時には自衛隊を活用すべき」という自治体も当然のごとく現れ、自衛隊が自治体の防災訓練に参加するということも、当たり前のように行われている。
ここで少し古いが「未来148号」 の2面に寄稿された、小多基実夫さんの論文「『戒厳令』準備が目的 自衛隊の防災訓練への参加の意味」から、少し引用してみたい。
「自衛隊にできること、また実際におこなってきたことは、災害後の遺体の捜索、がれきの処理等『専門的技術を要する』というよりも『人海戦術で大量の人数を要する』作業である。
自衛隊ならではという分野の活躍は『自力で危機を脱し、避難した人を自衛隊のヘリで別の場所に移送したぐらいである。」
「装備面から見ても、例えば工事現場でよく見かけるヘルメット装着型のライト。夜間でも両手を使った作業が可能で、被災地での活動には必需品であった(簡単なものは100円均一店でも扱っている)。しかし、自衛隊にはこれがほとんど装備されておらず、被災地に出動した隊員には随分不便であったという。装備しない理由は、隊員がこのような装備の使用に慣れてしまうと、夜間狙撃の標的になってしまう危険があるという軍事的理由からだという。」
「『ヘリの活躍』については、自衛隊以外にはこれほど多くのヘリを備えていないからというだけのことである。自衛隊の軍用ヘリと費用面で比較すると、防災ヘリならばドクターヘリ、消防ヘリ等平時から実用的に機能する形で何倍もの機数を活用することができる。」
おお、これなら少なくとも陸上自衛隊は、鉄砲や戦車なんか持つのやめて「災害救助隊」として再編成したほうが、「平和国家日本」のためにもいいんじゃなイカ
「自衛隊の『任務』には自衛隊法第3条で防衛出動と治安出動が定められており、災害派遣任務は含まれていない。部隊の編制も配置も装備も訓練も全てがこの2大任務のために組み立てられているのである。災害派遣(同83条)は戦争や治安出動に支障がない範囲での『行動』にすぎないのである。」
「先に見た東京都(防災)参与の志方俊之は7、自衛隊に読者の多い某月刊誌で『オリンピックの治安体制として、自衛隊を全面に出した警備』を訴えている。彼の念頭にある『防災』とは何よりも治安なのである。」
ひゃー、実施の賛否はともかく「平和の祭典」であるオリンピックに「自衛隊」という軍事組織を、「治安の全面」に出すんだと・・・
「東京で毎年実施される幹線道路である環状7号線外への車両・被災者の排除(短時間とはいえ救急車の例外も認めない一方通行の実施)、福島第1原発を取り囲む立ち入り禁止も実施等々は、戒厳令下での民衆の排除であり、イラクのファルージャを包囲した米軍を連想させる作戦でもある。」
「防衛・侵略を問わず戦争こそが軍隊たる自衛隊の基本任務であり、この本務と重なる時、自衛隊の災害出動はありえない。このような自衛隊の出動を当てにする防災計画や防災訓練は、市民・自治体にとって役に立たないばかりか有害である。」と批判している。
そーだよなぁ~
ちなみに小多さん、「自衛隊活用論」についても一言、こう述べている。
「そこには兵士を『人間としてではなく、人的資源=兵力」と考える高級将校や政府の兵士観(人間観)と共通のものを感じる。人間を『護るべきもの』と『犠牲にしていいもの』に二分して、『犠牲にする命』として自衛官を措定する思想である。」
・・・そう、沖縄や福島であれだけ批判されてきた「犠牲の構造」が、ここにも臆面なく表れているのである。未来社会は、ここを「止揚」しなければならない
「災害派遣、PKOはおろか安倍政権のもとで『集団的自衛権』『憲法改悪』の危機が迫る中、命の危機を強制される最前線に立たされている兵士や家族の恐怖に想いを寄せた運動が必要である。これは誇張ではない。」
「安易な『活用論』や『ありがとう運動』は、政府が目指す『軍隊としての自衛隊』の社会的存立基盤の強化にはなるが、それに反比例して自衛官の命と人権は一層軽視されることになるのである。」
まさにその通りである。社会変革=革命(権力の奪取段階)の中で、「自衛官」「自衛隊」がどう動くか?ということはリアリズムである。このような論文が寄稿されたことに感謝するものである。
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