遡及して「埋め立て承認」を撤回できるかどうか?
いささか旧聞だが、17日の琉球新報で、県知事選 喜納昌吉氏が出馬に意欲 民主県連擁立決定 という記事が出た。なんでも
民主党県連は知事選への出馬を既に表明した翁長雄志那覇市長の推薦も視野に検討していた。だが上里直司幹事長によると、県連との調整で翁長氏側が「辺野古沖の埋め立て承認の撤回」を明言しなかったため、支持できないと判断し、喜納氏擁立を決めた。
とある。
それでは、「埋め立て承認の撤回」は出来るものなのか?公有水面埋立法 の第4条には
都道府県知事ハ埋立ノ免許ノ出願左ノ各号ニ適合スト認ムル場合ヲ除クノ外埋立ノ免許ヲ為スコトヲ得ズ
一
国土利用上適正且合理的ナルコト
二
其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト
三
埋立地ノ用途ガ土地利用又ハ環境保全ニ関スル国又ハ地方公共団体(港務局ヲ含ム)ノ法律ニ基ク計画ニ違背セザルコト
四
埋立地ノ用途ニ照シ公共施設ノ配置及規模ガ適正ナルコト
五
第二条第三項第四号ノ埋立ニ在リテハ出願人ガ公共団体其ノ他政令ヲ以テ定ムル者ナルコト並埋立地ノ処分方法及予定対価ノ額ガ適正ナルコト
六 出願人ガ其ノ埋立ヲ遂行スルニ足ル資力及信用ヲ有スルコト
の6項目について、埋め立て申請の免許を与えることができるとしている。そして、それに基づいて、仲井真知事は(いくらインチキな環境影評価響報告書を下地としていても)これら6項目の条件を満たしていると判断し、「辺野古埋め立て」を認めたわけである。
一方、法32条には、一旦認めた埋立制限を取り消したり制限したりすることのできる要件について書かれている。
一 埋立ニ関スル法令ノ規定又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキ
二 埋立ニ関スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ処分ノ条件ニ違反シタルトキ
三 詐欺ノ手段ヲ以テ埋立ニ関スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ処分ヲ受ケタルトキ
四 埋立ニ関スル工事施行ノ方法公害ヲ生スルノ虞アルトキ
五 公有水面ノ状況ノ変更ニ因リ必要ヲ生シタルトキ
六 公害ヲ除却シ又ハ軽減スル為必要ナルトキ
七 前号ノ場合ヲ除クノ外法令ニ依リ土地ヲ収用又ハ使用スルコトヲ得ル事業ノ為必要ナルトキ
例えば埋立申請者が「環境保全」に十分配慮した計画書を作って免許を得た後、工事を始めると公害が発生した時、32条の四項を適用して、知事は埋立申請を取り下げることができる。
では、知事選挙で「辺野古基地建設反対派」が知事になった「だけ」では、現在行われている工事が32条に「違反している」ということにはならない…日本では「行政は間違わない」というタテマエが依然として強いから、仲井真知事が法4条で認めた「条件」と大きく変わったことを防衛局側がやらない限り、新知事が「埋め立て承認」を取り消す法的根拠は無いといえる。
一般に「公共事業」は長い期間かかるので、一旦認められた手続きを遡及して取り消すことはほとんど行われない・・・というか、多分そんなことが出来る規定がそもそも無い(これが「一度動き出した公共事業を止める難しさ」の原因となっている)のだろう。
こうゆうことは、行政の長をやっていた翁長氏には良く分かっていて、(いや、例えば「革新」側から伊波洋一元宜野湾市長が出たとしても、良く分かっているハズだ)「埋め立て承認撤回」については明言できないのだ。
ただこちらのサイト では「埋め立て承認」の取り消しは可能だとしている。ただし根拠法分は見当たらず、4条事項まで遡及して知事権限で取り消すことができるというものらしい。(動画が長いので中身はあまり検討していない)実際、遡及することについては何も書かれていないわけだから、法的に「遡及して取り消してはいけない」とも言えない。
喜納昌吉の出馬宣言以降、翁長氏も「埋め立て承認」取り消しについて言及しだした。もし翁長氏が知事になったら、法的整合性はともかくとして「辺野古埋め立て承認取り消し」を高らかに宣言して欲しいものだ。
ただ、相手は沖縄の民意をあくまでも無視して基地建設を進める、国家権力である…法的祖語をよいこと(あるいは県を裁判に訴え「係争中」を理由に)調査や工事はドンドン進める…海保や機動隊、民間警備会社と米軍基地に守られながら・・・ことは十分予測できる。
20日、辺野古の浜では5500人もの人が集まって、基地建設反対の大集会を開いた…基地建設反対、普天間撤去は最終的に沖縄・本土民衆の実力闘争によって勝ち取られるしかないというのが、私の見立てである。「埋め立て承認」取り消しは、その実力闘争に「お墨付き」を与えるくらいのものと割り切って利用すべきものと考えたほうが良い。
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