資本主義は必ず終わる…資本主義の終焉と歴史の危機(その3)
さて筆者は「長い21世紀」の間に、資本主義に代わる新しい「脱成長」「定常状態」へとパラダイムチェンジをする必要を説く。「「定常状態」とはゼロ成長社会と同義です。そしてゼロ成長社会というのは、人類の歴史のうえでは、珍しい状態ではありません。図15のように、一人あたりのGDPがゼロ成長を脱したのは16世紀以降のことです。この後の人類史でゼロ成長が永続化する可能性は否定できません。
経済的にもう少し詳しくみていくと、ゼロ成長というのは、純投資がない、ということになります。(中略)減価償却の範囲内だけの投資しか起きません。家計でいうならば、自動車1台の状態から増やさずに、乗りつぶした時点で買い替えるということです。」p188
筆者は「定常状態」の維持を実現できるアドバンテージを持っているのが、世界でもっとも早くゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレに到達した日本であると説く。その前に日本は、国が巨額な債務を抱えていては、ゼロ成長下では税負担が高まるだけであるから、まず基礎的財政収支(プライマリーバランス)を均衡させておく必要があると説く。そのため、国債は債権ではなく、「日本株式会社」の会員権への出資だと考え「その国債がゼロ金利であるということは、配当がないということです。配当はないけれども、日本の中で豊かなサービスを享受できる。その出資金が1000兆円なんだと発想を転換したほうがいい」p193ゼロ金利だから、当然外国人投資家はそんなものは買わない…財政均衡を実現する上で、増税はやむを得ない。消費税は最終的には20%になるだろう。「しかし、問題は法人税や金融資産税を増税して、持てる者により負担してもらうべきなのに、逆進性の強い消費税の増税ばかり議論されているところです。」p193
エネルギー問題も解決されなければならない…安価なエネルギーをどうやって調達するか、難しい問題である(原子力はダメだとはっきり分かった…太陽光発電や風力発電のような再生可能エネルギーも、結局は石油を迂回的に使って発電しているだけでしかない…地下にボーリングを掘って地熱を使うか、食糧生産に影響しない範囲でバイオマスを使うかぐらいしか道は無いと思う…ただそうすると、「豊かな生活レベル」は下げなければならないと私は思うが、何、1980年代のエネルギー消費量でも、誰も生活に困ってはいなかったではないかと考えれば何とかなるだろう…定常に行く前に、生産・生活レベルの「好ましい低下」方法を考えなければならないかも知れない)
だが、現在の日本の政治は、「定常状態への大きなアドバンテージがあるにもかかわらず、成長主義にとらわれた政策を続けてしまっ」p197っている。ぶっちゃけた話、「存在は意識を規定する」よう、資本主義の「成長路線」(日本は成長しなかったが)の中にどっぷり浸かっていると、このようなソフト・ランディング定常路線への移行も難しいかも知れない。
マルクスやレーニンがかつて説き、実践したように、民衆の闘争で資本主義を終わらせ、「労働者生産組合」による生産と「労働証書制」という分配、コミューンという究極の直接民主主義社会を実現させることが、筆者の言う「定常状態」への道なかろうか?
この「資本主義の終焉と歴史の危機」の中身を大分はしょって紹介し、自分なりに意見を述べたが、本自体は非常に読みやすく、資本主義の歴史的な部分もすぅ~と読める(ただし世界史、西欧史に詳しい人からの突っ込みはあるかも知れない。)また、「長い16世紀」に起こった、「出版資本」…ラテン語から各国語への出版資本の進出から、プロテスタンティズム⇒資本主義の精神への発展は、「知識」や「情報」が誰にでもオープンにされていることが近代の基礎にあるということを示している。しかし、「スノーデン事件」によって、情報をまた「資本」が独占しようとしていることも、「資本主義の危機」を示すものとして取り上げられていることは興味深いものがある。
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コメント
マルクスって学生時代、「経哲草稿」ってのを仲間と読んだだけって、なーんちゃってサヨクのわたしなんですが、この本、読んでも理解できますかね? やっぱ基礎知識がないとちんぷんかんぷんかしら。
投稿: kuroneko | 2014年10月25日 (土) 11時16分
kuronekoさん、「経哲草稿」私も買っただけで読んでいません。やはり「賃労働と資本」から初めて、「資本論」へ行き、第三巻21章ぐらいまでゆくと「資本主義の終わり」が見えてきます(^^)
投稿: あるみさん | 2014年10月25日 (土) 21時31分
昨日、BSフジの「プライムニュース」で、水野和夫氏と萱野稔人氏が出演して、資本主義の未来とかアベノミクスの評価とかについて語っていました。
(水野氏は、アベノミクスなんて第一の矢も失敗している、という意見でした)
投稿: kuroneko | 2014年10月30日 (木) 10時08分