日本はなぜ「基地」と「原発」を止められないのか(その4)
それでは憲法よりも「日米安保体制」あるいは「原子力村」の体制が、いつの間にか上位に来ても、だれも「おかしい」とは思わないもう一つの根本原因がある・・・それは「日本国憲法」は日本人が頭をふりしぼって書いたものではなく、GHQが書いたものだ!という事実である。
こんなことは右翼の世界では当たり前だと言われるかもしれないが、まあ書いておくと・・・ハーグ陸戦条約には、「占領地の法律の尊重」を定めた第43条で「占領者は、絶対的な支障がない限り、占領地の現行法律を尊重する。」となっている・・・よって憲法という国家の根幹体制を「GHQ」という占領者が変えてしまうということは、根本的におかしかったのだ。
しかしGHQは、日本(およびドイツ)が、再び世界戦争などを起こさないようにするため、憲法の改正を求めた…通説では、毎日新聞が日本の「改正憲法」の内容をスクープし、それがあまりにも「大日本国憲法」と変わりがなかったため、GHQがより「民主的」な憲法をつくったとされているが、スケジュール的にはGHQはその以前から、現行憲法の草案を作成していたということである。
ところが、その内容が「非常によかった」・・・「帝国議会」で若干の修正を経た後、公布され、日本人に受け入れられ、ともかく今に至っている・・・しかし「日本人」が書いたものではなく、右翼のいうような「押し付け憲法」だったのである。
憲法学者内で実は「日本国憲法が民定憲法か欽定憲法か?」という論争があった・・・民定憲法であれば「日本国民が作った」ものとされる・・・しかし事実はGHQが作ったものなのだから、「欽定憲法」に近いもので、そこに国民の意思は全く反映されていない。「民定憲法論」が出てきたのは、憲法前文に「日本国民は…ここに主権が国民にあることを宣言し、この憲法を確定する。」と書いてあるからだ。そんな「学説論争」を「憲法はGHQが作った」ということが検閲で公言できない間に行われ、「学説」を作ったことに、憲法に対する認識や研究が曖昧模糊なものになってしまったのである。(ちなみに我々「革命的左翼」は「憲法は戦後革命の『敗北』の上に、その階級間の力関係で出来た…支配者に押し付けた・・・ものとしているが、誰が書いたのか?ということはほとんど問題にしていない。もちろん9条のような不戦条項は、アメリカ帝国主義が日本帝国主義を抑え込むために押し付けたものでもある(日本人の「反戦気分」を反映させたものだとしても)という認識である。)
で、まあ日本の「保守勢力」は「自主憲法制定」をかかげた「自由民主党」をつくったわけだけれども、そいつらの作った「憲法草案。ってのが、「憲法は国が政府を規制する」ものではなく、「憲法は政府が国民を規制する」という、「近代立憲主義」を超逸脱したトンデモなものでしかなかった・・・マッカーサーが「日本人12歳説」というのを出して話題になったが、筆者は憲法に関しては「日本人は3際のまま・・・」という感じ方をしているようだ…よっぽど日本の「保守勢力」ってのは、勉強が足りないと見える。
とはいえ「革新勢力」のほうも、「自分たちで書い」ていない憲法を墨守しようというだけでは、占領軍が押し付けた「警察予備隊」→「保安隊」→「自衛隊」とういう流れに抗しきれない・・・自分たちで決定したものではないのだから…
ある意味、「平和」や「貧困」の問題を含め、「革新勢力」が「憲法を活かしましょう!」と言っても、笛吹けど踊らずの状態になるのは当然だろう。
この問題を筆者は「つまり日本国憲法の真実」を極端に簡略化すると①占領軍が密室で書いて、受け入れを強要した。②その内容の多く(とくに人権条項)は、日本人にはとてもかけないものだった。」(p185)というものだったのだ。そして戦後日本には①憲法を「悪く改正する勢力」と、②憲法を墨守する勢力・・・しかいなくて、③憲法を「より良く」改正する勢力はいなかった(実はこれは「新左翼」の立場でならないといけない)ことが、「安保村」が憲法の上になっても何も感じない「日本の現体制」を造り上げたものだと説く。
なるほど、すごく説得力がある…もう一度書くが、リベラルや社民党なんかが「憲法を活かした政治を(平和から福祉も含め)」といくら叫んでも、自分たちで書いた憲法ではないのだから、全て「他人ごと」になってしまうわけだ。
ちなみに、同じ敗戦国西ドイツではどうしたか…フランクフルトに首都を置き、そこに今の東京と同じように「米軍が自由に使える空域」を作ろうとした占領軍に反抗し、首都はボン、米軍なNATOの規定にのっとった行動しかとれなくなっている。「憲法」に関しては「占領軍が出ていくまで」は「ドイツ基本法」として、占領軍が出ていったら、新しい憲法を作ることにしていた…もっとも東西ドイツの統一後も、「基本法」はそのままで、「新憲法」を作ろうとする動きはない、よって「基本法」がドイツ憲法の役割を今も果たしている。
また、第二次世界大戦後の世界では、各国の憲法が一番強いということになっている…沖縄よりも大規模な米軍基地を「負担」させられていたフィリピンは、憲法に「外国の軍隊を駐留させない」と改正したことにより、アメリカ軍基地を撤去させている。
「押し付け軍隊」がそのまま大きくなった「暴力装置」として「自衛隊」は世界第5位ぐらいの「軍事力」をもっている・・・これは「憲法制定時」から「冷戦時」に移行したことで押し付けられたものだが、9条1項の「不戦宣言」を活かすためには、9条2項の「軍備保持能力の破棄」という「幻想」を捨てて(これまでの「解釈改憲」でも「自衛力」「個別的自衛権」は認められる」としていたわけだから、筆者はそれを憲法に書くと…「自衛のための軍事力は持つが、集団的自衛権は行使しない」とか…ともに、「外国軍の駐留は、認めない」とかを憲法に書く必要があると説いている。
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