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美味しんぼ「福島の真実」

 先日、「侵略!イカ娘」を買ったついでに、「美味しんぼ」110巻、111巻がボンと置いてあったので、購入した。いわゆる「鼻血問題」で様々に議論された(というか当時は「鼻血」だけでヒートアップしていた状況だったが)作品である。
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 はっきり言いましょう…「内容を読まずして、一部を取り出して批評することなかれ」である。
 「美味しんぼ」自体、食や食文化…それを支える人たちのドラマを描いてきた作品である。あの原発事故の後、そういった観点から「福島がどうなっているのか?」ということが書かれたのが、「福島の真実」編である。
 もちろん、食品を含めた「放射能汚染(正確には「放射性物質による汚染」なのだが、作品中に使用されている言葉であること、簡便性より、この言葉を使う)」の問題が、メインとなってくる。

 取材期間は2011年秋~12年にかけてであり、2015年現在の状況とは違うのであろうが、あれから4年…原発事故の収束状況も含め、「状況が大幅に改善した」というニュースは無いから、ほぼ「福島の真実」は今も変わっていないのであろう。

 作者が取材したことを、漫画に出てくる「東西新聞」と「帝都新聞」との共同取材企画を進める・・・という形で、ストーリーが展開されている。(ネタバレになるが、これは主人公の山岡士郎と、父、海原雄山の「真の和解」という伏線が盛り込まれている)
 様々な「福島の人」が登場する…放射線量が低いのに、「風評被害」で米が売れない会津の人、捕った魚の放射線量が基準値をオーバーするため、漁に出かけられない漁師さん達、農産物が放射能を吸収しないよう、様々な努力を続ける農業者達(ちなみに、放射性セシウムは土に吸着したり、また畑にカリウムを撒くことで、畑の農作物はほとんど放射性セシウムを吸収しない・・・水田は別で、水からの吸収があるため、なかなか難しいようだ)、前の年に取っておいた川魚や山菜料理…もうこれらは放射能に汚染されて、食べられない…を出してもてなしてくれる人。
 もちろん、食に携わる人々だけではない。地道に汚染量を測定しS20150307_5
マップを作る人(ちなみに、チェルノブイリ事故の時、当時のソ連政府は公式の細かな「汚染量マップ」を作ったが、福島にはそういったモノが無い…これが無いと、「将来の見通し」が立たないのであるが、国や県、そして東電などはそういったものを作ることをサボタージュしている…「補償の根拠」にされては困るからだ。)新たな「放射能安全教育」としか言えない副読本…放射能の影響や、避難のやり方にはほとんど触れず、「放射線は医学等で人類の役に立っている」ということばかり書いてある…に代わり、「放射線に対する正しい認識をもってもらおう」と自分たちで新たな副読本を作ろうとする教師達・・・
 だが、何よりも「帰還出来ない」とされた区域は、全く「復興」が出来ず、あの日のまま朽ち果てていく様が描かれていること、「帰還」出来ない人は狭くて不便な仮設住宅に押し込められ、「希望」が持てないという「現実」である・・・これは現在もまだ進行中である。
 また、福島市を始め、線量の高い「ホットスポット」のような所が、沢山ある。「除染」をしても、また高い放射線レベルに戻ってしまう現実。作者の立場は「放射線管理区域(実効線量3か月あたり1.3ミリシーベルト、時間当たりだと0.46μシーベルト/h・・・実質0.5μと覚えておこう)を超える場所に、一般の人は住むべきではない」というもので(これがこの「作品」に対しての議論の一つでもあるのだが)、「福島(とまたくくってしまう「表現」も議論の一つなのだが)には人は住めない」と言っている。作品中には、福島市を「放棄」して、線量の低い場所に「新福島市」を作ろうという構想を持つ人も出てくる。

 肝心の「鼻血」のシーンは、作品の最後の方、福島第一原発を東電の案内で取材した後に出てくる…元双葉町町長、井戸川氏も鼻血が出ると言う…鼻血だけでなく、「山岡」や「海原雄山」も福島連続取材の後、疲労感を訴える…こういった「低線量下」による体調不良が、本当に「放射能」の影響かどうかは分からないが、いくつかの仮説はあるようだ・・・だが、それはこの作品の中の、「エピソード」にしか過ぎないような扱いである。

 この作品で作者が言いたかったこと…それは「原発事故」によって、広範囲な地域に人が住めなくなり、また「放射能汚染」によって多くの人が、肉体的にも、精神的にも苦しめられている。それは地域、コミュニティー、それが培ってきた食文化も含めた文化を破壊したことに対する「怒り」である。
 原発事故のリスクを、自動車や飛行機の事故リスクと比較して語る人が居る…しかし自動車事故や飛行機の事故で、「地域」や「文化」が破壊されることは無い。また、個人の「がん罹患」リスクを語る人も居る・・・そうではない、地域根こそぎ、文化根こそぎ、無くなるのだこんなものを54基も作ってきた、「自民党政権」…きちんと批判できなかった野党、そして目先の「利益」のために、現在全て止まっている原発を再稼働させようとする電力会社と安倍政権…こんな奴らは「国土破壊者」であり「文化破壊者」である。「美しい日本」だの「地域創生」だの言う資格など、無い…完全に打倒しよう

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