イスラムについて知ろう(その2)
イスラムの法規範は、変わらない
内藤氏の著書より「ムスリムが守っている規範は、私たちの法観念とは違います。欧米の一般的な法律は人が作ったものですから、年月を経れば善悪の基準さえ変わります。しかし、ムスリムにとっての道徳や法は、今から1400年前、預言者ムハンマドに神(アッラー)の言葉(啓示)が下ったときに人間に与えられたもの。つまり神が作ったものですから、変わらなくて当然という考えなのです。
これを「遅れている、古くさい」と非難するのは、人間の行動規範や社会のあり方は時代の変化と共に変わるものだとする西洋の考え方です。しかし、イスラムでは規範は動きません。特に「グルアーン(コーラン)」や預言者ムハンマドの言行録(「ハディース」)に典拠がある場合には、時代に合わないからといって、なかったことにしたり、解釈を勝手に変えたりするけともできません。
もちろん、世の中の変化によって、たとえば新しい食べ物などが登場すると、これはイスラム的なに正しい(ハラール)のか、それとも禁じられている(ハラーム)のかを決めなければなりません。場合によると、イスラム法学者(ウラマー)たちが、延々と議論することになりますが、たいていは典拠となるクルアーン等を参照することで解決していきます。はっきりしているのは、典拠に基づかないで、もうそんなことを言っている時代じゃないのだから「いいだろう」とはならないということです。」(p47~48)
う~ん、なかなか難しい!しかしイスラム社会も、なんとか変わりながら現代まで続いているわけで、そんなにガチガチと言うわけでもないだろう。ただし、基本はこうですよ!ということだ。また、イスラム社会において「イスラム法学者(ウラマー)」が、いかに重要かということも理解できるだろう。
イスラムは「女性差別」宗教ではない。
クルアーンとかには、女性に教育は必要ないとか、男性の前で
肌を見せてはならない…などとは書いていない。「性的な部分は隠せ」ぐらいのことが書いてあるにすぎない。前にも書いたように、中世アラビア社会の規範がそのまま入りこんでいるわけだから、女性が強烈な紫外線から身をまもるためには、全身をすっぽり覆う服装のほうがいいわけだ。また、女性の教育にしても、トルコやフセイン時代の女子の高等教育を受ける割合は、非常に高いことで知られている。
では、パキスタン女性でノーベル賞を受けたマララさんのような存在をどう説明するのか?実はマララさんのような境遇の女性は、「貧しい」から女子教育の必要性よりも、女子に働いてもらわないと生活ができないという「現実」がある。地域の保守層も、そういった因習にとらわれている。こうした中で地域のウラマーたちもまた、「女子には教育はいらない」ということを「ハラール」としてしまうケースが多くなるのだ。女子教育の問題は、宗教的なものではなく、経済的なものなのである。(もっといえば、搾取…帝国主義の問題にぶちあたる)
さらに「一夫多妻」(4人まで妻帯出来る)というのもクルアーンに条件がついてあって、「重婚は、「孤児に対して公正にできないことを恐れるなら」という条件が前にあるため、野放図な性欲のために複数の妻を持ってよいと言っているのではないことが分かります。戦災などで父を失なった孤児を持つ母親が路頭に迷うことのないように重婚を承認しているのです。」(p143)
これは当時の、社会政策としてとられたものである。また、ムハンマド以前は、重婚人数の制限がなく、それを4人まで制限したともとれる。 実際、複数の妻を持つ男性は、それぞれの妻に「平等」に接しないといけない。また、経済的にも複数の妻とその子どもたちを養っていける男性は、そういないだろう。
ムハンマド以前は、男性優位の社会であり、生まれてきた子どもが女ならば殺してしまうということも普通に行われていたようだ。ムハンマドはそのような風習があることを、とても悲しんでいたそうだ。ムハンマドはじつは「フェミニスト」であったのである。
おまけ…ブタ肉と酒が「ハラーム」なわけ
アラブあたりのブタ肉には、無鉤条虫というサナダ虫が寄生しており、これに寄生かれると皮膚がボコボコになる、恐ろしい症状が出てくる。だからあのへんでは元々ブタ肉を食べなかったのだろう。酒は酔うと水が余計に欲しくなる…砂漠の国で酔っ払いに飲ませる水がおしかったのだろう。
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