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学校では教えてくれない舗装の現場

 この夏は、なぜか舗装工事の現場に行くことが多い…もちろんアスファルト舗装である。くそ暑い中、プラントに行くと、ドシャーっと150~170℃に熱せられた「アスファルト合材」が落ちてくる。アスファルト量を、5.0%、5.3%、5.6%と変えて、どれが性情がよいか確認する・・・って、わかるかよ、そんなモン どれも一緒に見えるぞ…

 実は、皆さんの家の前の道路はアスファルト合材で舗装されている…くらいに身近なものなのであるが、「舗装工学」を専門に学べる学校は、ほとんど無い。いわゆる「土木工学専門課程」で、「アスファルト舗装」なんぞを専門に取り扱っているところなど、多分無い。多くの学生は、「材料学」とかで「アスファルト舗装」の概要をちょっと学ぶくらいである。

 だから世の中には、舗装の専門業者がゴロゴロある…大手ゼネコンは「舗装部門」だけ独立させている・・・たとえば鹿島建設は鹿島道路、大林建設は大林道路、前田建設は前田道路…という具合、熊谷組は「ガイアートクマガイ」なんて呼んでいる。その他、日本道路、NIPPOといった舗装専門の大手もいれば、下請けが主な業者さんもある。大手と下請けで実力をつけた中堅がJVを組んで工事を行うこともある。

 そうゆう会社や、そんな会社が資本を出して経営するアスファルト合材プラントに入社しないと、舗装の設計や配合、施工なんかは、まったく分からないのだ。

 なるほど、はたから見れば、黒い合材を敷きならして、ローラで押さえつければ出来上がり・・・のように見えるかもしれない。だが、それは設計、配合、試験練り等を終えた最終段階である。

 まず、設計…例えば道路の高さは道路設計で決まっており、舗装を行う1mぐらいを残して仕上がっている。ここを全部アスファルトを大量に含んだ合材で埋めてしまうのは不経済であるから、何層かに分けて下のほうから安い材料…粒度調整砕石や、それらをアスファルトやセメントで少し固めたもの(安定処理といいます)、砕石の類は、粒径が小さく、そろってくるほどお値段は高くなるので、なるべく粒度形の大きなものから使う…舗装のすぐ下を路床というのだが、そのCBR試験値を使って、等値換算係数(TA)を求め・・・云々かぬん、詳しくはアスファルト舗装要綱 (ほんとはもっと厚い本なのであるが)を見てくれ。これはアメリカから伝わった舗装設計の方法である。

 でもって、路盤・基層・表層の厚さが、経済性も含めて決められる。今度はそれぞれの層ごとに、砕石や砂、石粉やダストをどのくらい入れ、アスファルトを何%にするかを決める。
各プラントの試験室で、配合した供試体を作り、「マーシャル安定度試験」なるものを行う…これは円柱形の供試体を横にして荷重をかけ、ひずみとつぶれ具合を調べるものだ。他、密度や空隙率も大切な要素である。密度は実際に供試体を作った時に測るが、その体積に使っている材料が100%ぎっちりつまっていると仮定した時の密度を「理論密度」と呼び、それの例えば96%以上でないといけない・・・とか決められている。残りは空隙である。アスファルトは夏膨張し、冬は収縮する(なんでもそうだが)…夏の膨張時にある程度の空隙がないと、舗装体からアスファルトがにじみ出てしまう。

 そのほか、耐流動性の目安となる「ホイールトラッキング試験」や、骨材とアスファルトが十分くっついているかどうか調べる「カンタブロ試験」なんてのもある。

 こうゆう試験を延々と何回もトライアル&エラー(とはいえ、プラントでは大体実績で配合設計のノウハウは持っているが)を繰り返して、やっと配合が決まる…だがアスファルト合材を作るのは簡単ではない。コンクリートの場合、各材料はミキサーに投入前に計量ビンで計量されるだけだが、アスファルト合材では、冷えた骨材を「コールドビン」から計量し、一旦ごちゃまぜにしてから加熱…加熱した骨材をミキサーの上に上げてふるい分けを行い、「ホットビン」に入れる。ホットビンの計量は荷重を測るのだが、コールドビンにおける軽量は、ベルトコンベヤーにホッパからどのような速度で落とすかによって決める。どれだけの量が落ちてくるかは、あらかじめキャリブレーションをしておく…といった具合に、ややこしいのだ。もちろん「常温骨材ふるい分け」試験と「加熱骨材ふるい分け」試験というのがあり、両者はほとんど同じ粒度を保たねばならない。

 そんなことを何回も繰り返して、やっと使用する合材の「配合」が決まる…あとは本施工に移るだけだが、単純に敷均してローラをかけているわけではない。アスファルト舗装の施工は、「温度低下」との争いである・・・温度が下がったところをいくらローラで踏んでも、密度は出ない。だいたいローラにも2種類あって、最初の転圧は鉄輪(マカダムローラ)を、仕上げの転圧はタイヤローラを使う。この最初の転圧に入るときと、2回目の転圧にはいるときの温度管理が重要で、専任の温度管理者を決めておき、合材の温度を測りながらローラのオペレーターに指示を出しているのだ。

 で、夏の暑い時は、なかなか2回目の転圧に入る温度まで下がらないし、冬は冬で薄く敷きならされた合材はすぐに冷えてしまう。また、舗装なんぞやる現場には日蔭なんぞない…夏場な熱中症対策が肝心だみんなガブガブ水分、塩分を補給する。

 ま、なぜか今年は盆開けたら、急に涼しくなってきたけどね…まだあるんだよなぁ~舗装の現場…

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