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2015年安保闘争の中間総括(その2)…SEALDsについて

 さて、この度の「安保闘争」で注目を浴び、かつ運動をけん引していった集団として、学生団体「SEALDs」の存在を抜きにして語ることはできない。マスコミにも取り上げられ、「代表」の奥田愛基氏は、参議院で堂々と自分の意見を述べることまでできたのだ。今まで「政治には無関心」と言われてきた大学生ぐらいの若者層を、国会前デモその他に引っ張ってきた実力は、称賛すべきものである。
 SEALDsの人たちに直接会って話をしたことはないので、具体的な「運動・組織の作り方」については分からないが、この人たちが「場の運動」を作ったのだと思う。すなわち「憲法違反の戦争法案反対!」というシングルイシューに賛同できる若者が、自由に参加できる「場」を用意し、一定の規則のもと、自由にデモ、集会に参加できるようにした…これが彼らの「成功」の要因である。仮に中心の奥田氏が途中でポシャっても、おそらく他のメンバーが引き継いで運動を続けていたと思うし、また今後の「廃案」運動にも力を発揮するであろう。これは60年安保での「一治ブンド」のような「党的運動」との大きな違いである。

 しかしながら「SIEALs」に何の落ち度、否定的な面がないは言えない。一つは「韓国人研究者の鄭玹汀」さんや、ブログ「長春だより」で中国・長春に住む太田氏がなされたSEALs自由と民主主義のための学生緊急行動)についての雑感 で指摘された、彼らの「戦後日本民主主義社会」への認識があまりにも能天気であり、かつ過去の戦争責任等に対する認識も不十分なまま、「現在」の「日本民主主義」をほぼ無条件に絶賛する立ち位置にあることである。
 もっとも、彼らは2000年以降に不十分な近現代史・公民教育(これは2000年以前にもあったことだが)を受けてきた世代なので、ある程度やむを得ないことかもしれない。ただ、どうもSEALDsを立ち上げるのに一役買った、いわゆる「首都圏反原発連合」に関係する、周辺の「大人たち」が、かなりSEALDsに悪い影響を与えているようだ。これは太田氏の「長春だより」の中に詳細に書き記されている。韓国人研究者・鄭玹汀さんに対する人権侵害問題――バッシングに加担する社会運動家・研究者・ジャーナリストたち  に詳しい。
 長春に住む大田氏のところにも、批判に対する真摯な回答ではなく、罵詈雑言がきたらしいが、韓国人研究者、鄭玹汀さんのFBには、もう無茶苦茶な罵詈雑言や誹謗中傷・人格否定のコメントが来たそうだ。しかもその中には、反原連や「レイシストしばき隊」を組織した(そして私も彼の著書「「在日特権」の虚構」を評価した)、野間易通氏が、鄭玹汀さんへの「誹謗中傷」も含めたまとめサイトを作り、今だに削除していないことが記されている。

 鄭玹汀さんは「運動の現場」に出ておらず、あくまでも「SRALDs」のHPnある「綱領的文書」を批判しただけなのであるが、それがもし「筋違い」ならば{SEALDs」本体、あるいは廻りで支える「大人達」が真摯に答えるべきである・・・それが「民主主義」ってものだろう。

 もちろん、「SEALDs」の若者たちは「綱領」そのものの賛同よりも「自分たちへ向けられた危機(徴兵等など)」に対して、どうしても立ち上がらないといけないと思った人達の集団である。一つ一つの発言を聞いてみると、必ずしも鄭玹汀さんや太田氏の心配しているような発言ばかりしているわけではない。とはいえ、完全に戦後の左翼学生運動から切り離されている運動なので、その辺の知識が欠如していることは否めない。(もっともこれは「左翼」がちゃんと歴史を伝えることができていないという反省点として挙げられる)

 「SEALDs」の立ち位置のもう一つの問題点…それは「左翼・新左翼排除」を意図的に行っている…ということである。これは反現連の野間氏らの態度と一致する。
 ま、これも分からなくもない…左翼・新左翼は今までの「戦争法案」を止めることができなかった…とりあえず「憲法の枠内」で止めようとする「SEALDs」にとって、左翼・新左翼の主張…資本主義社会の打倒は、当面考えられていないからだ(山本太郎議員は、ぼんやりとはいえ考えてはいるが)。また、政治的に「励起」した人たちを「新左翼」の訳の分からん組織への「一本釣り」を防ぐ…それで組織の安泰を図るという意図もあっただろう。

 しかし、「民主主義って何だ?」とコールする以上、民主主義社会で認められている「新左翼」をあらかじめ排除するという態度は、いかがなものであろうか?
 お友達ブログ「不条理日記」には、遅くなったけど、8月30日の国会前にて で、「この日もシールズなど反原連界隈の連中は懲りずに闘う学生を暴力的に排除しようと企んでいたようだが、そういう空気じゃなかったらしい。ざまーみろw」と報告している。
法大文連のツイッターの写しに 「SEALDs」支持者らしき人が、こんなことを書いている…「それにしてもはやく治安維持法を復活して国体変革を企てる禁止してほしいです」と書いているオイオイ、「治安維持法」復活が、君たちのいう「民主主義」なのかこれは冗談では済まされない、歴史や民主主義についての「無知」である。

 もちろん、彼らをはじめ「総がかり行動」も「非暴力で抵抗(ただし非暴力=合法ではない)」を掲げている。「総がかり行動」はこれまで反戦運動とかに取り組んできた運動体の集合なので、「万が一の不当逮捕」に対応できるようにしてあったと思うが(それでも万単位で集まった人をフォローする体制は、当然無理だろう)、「SEALDs」にはそんな体制はもともと無い…「民主警察(と彼らが考える)」の規制にはみ出ないよう、抗議行動を「制動」しようとする…16日深夜、国会前で逮捕者が13名出たが(その内訳、党派関係はいまだ報道されていない)、「SEALDs」代表奥田氏は「中核・革マルまじでやめてほしい。何なんだよあれ」 と、あくまでも中核派や革マル派が「運動つぶし」をやっているようなつぶやきをしている。そればかりではない、「中核派全学連」がマイク情宣をしている処に「SEALDs」がやってきて、「安倍辞めろ」情宣を開始した…こうゆう「他団体の情宣の邪魔」は互いにしないというのが、ここ10年くらいの運動圏では当たり前になっているにもかかわらず…だ。もちろん、もっと昔の「中核派全学連」も同様のことをしてきたし、それ以上に学園内で「他党派・ノンセクトを「暴力」によってつぶしてきた「負の歴史」がある…だが「SEALDs」がそれの「劣化コピー」をやって、「民主主義って何だ!」と叫ぶのは無理がある。(「SEALDs」に協力して「新左翼」を暴力的に…時には権力に売り渡すような形で…排除しているのは「あざらし隊」というらしい…全共闘時代の日共・民青の武装部隊「あかつき部隊」を思わせる)

 とはいえ、「SEALs」の運動は、当面来年夏の参議院選挙まで「総がかり行動」何らかの形で続くであろう…彼らは「党」ではなく、あくまでも「場」で運動しているわけだから、個人個人によって考え方は当然違う…「運動総体」はその「個人個人」…に対応して是々非々で対応していかなければならないと思う。

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コメント

排除はいけないというけれど、あまりにイメージ悪すぎるのですよ。
中にしろ革にせよ。
残念ながら負の遺産があることを自覚して裏方に徹して見た方が良いのでは。
旗を出して登場しようとすれば、拡大のために「その場」を利用しようとしていると見られてしまうのではないかと思います。

シールズ批判より先にやるべきことがあるのではないですか?

投稿: BM | 2015年9月20日 (日) 19時32分

追記

>シールズ批判より先にやるべきことがあるのではないですか?

これはもちろん、あるみさん個人に向けてのものではありません。
大変失礼しました。

投稿: BM | 2015年9月20日 (日) 19時53分

BMさん、もちろんその通りです。中核派だけとってみても、80~90年代の「学生運動の中で、自分達の「運動方針」に賛同できない団体・集団に対しては「暴力」を使って排除してきた…そしてそのことが、学生層の「左的政治参加」を妨げてきたという事実があります。これは「自己批判」して清算しないといけないシロモノです。
 ただ、SEALDs「支持者」側に「治安維持法」肯定意見が出ているのいうのは、やはり「民主主義」を語るにおいて、非常に浅い考えしか持っていないということを示します。「治安維持法」が「共産党」ばかりでなく、他のリベラル、戦争反対の意見をも委縮させ、かつての日本を「戦争への道」に引きずりこんだ「悪法」だということに無自覚では困るということです。

投稿: あるみさん | 2015年9月21日 (月) 21時35分

シールズ(なぜ横文字ばかりつかいたがるのかな?)が運動をけん引したのでしょうか?たしかにマスコミは大きくとりあげましたが、写真などよく見ると後ろに写っている人たちは、学生以外の人たちがたくさんいます。何より機動隊と対峙し鉄柵を排除し車道を解放したのは、むしろ年配の人が中心になってるように見えます。結局シールズは話題つくりにはなっても、実際に運動の核となったのは、今まで活動してきた市民団体や一部の労働組合じゃないでしょうか。シールズが運動をけん引するのなら、国会前とともに、それぞれの大学でビラを撒いたり集会を開いたりして、クラス決議やサークル決議をバンバン出したのでしょうか?今、ビラまきや集会が制限されてる大学が多いと聞きますが大学教授などに応援されてるシールズなら可能ですよね。

投稿: 木々の落葉 | 2015年9月21日 (月) 22時32分

木々の落ち葉さん、確かに数の上ではSEALDsだけ見ると「少数」でしょう…しかし60年安保の「一時ブンド」全学連にしても、ブンドそのものは少数のグループで、それが「全員参加」学生自治会のヘゲモニーを握っていたということです。やはり数よりも世間に与えた影響力…我が高松でも、若くもないのに「SEALs」コールでデモしたぐらいですから…から見ると、「牽引した」と言ってもよいのでは?と思います…ですからこそ、その「負の部分」をきちんと見ておかなければならないのです。

投稿: あるみさん | 2015年9月22日 (火) 20時57分

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