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自民党「憲法改正草案」を読んでみる(その2)

さて、改正憲法草案では「天皇」はどうなっているか?…第一条「天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」・・・と、現行憲法に「元首」規定を加えたものだけになっている。ま、今の天皇が「皇室外交」したりしてるのは、半ば「元首」みたいなことをやっているわけだから、この辺はよほどの「反天皇制勢力」ではない限り、あまり文句は出ないだろう…とはいえ「象徴」に加えて「元首」の役割を果たすわけだから、当然天皇の地位はより重く「重要」になるわけだ。「元首」機能を強化させることで、再び「天皇制〇〇主義」的な「何か」が、やって来るかもしれない。
 むしろ問題は、天皇条項に加えられた「国旗および国歌」規定と、「元号」規定である…第三条には「国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする」「日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」と書き加えられている。現在、東京や大阪で少数の良心的な教師が「日の丸、君が代」に反対して闘っているものを、根こそぎにしてしまうものだ。第四条には「元号は、法律の定めるところにより、皇位の継承があったときに制定する」と、「一世一元」までも規定化している。これに対抗する「良心」や「信仰」の自由は、基本的に無くなっているとみて良い。
 アメリカのような「多文化」からの移民で成り立っている国では、「国旗・国歌」による国民統合は支配者の側から積極的に推し進められる…しかしそのアメリカでさえ「国歌を歌わない自由」は存在するのだ…そこに「他文化・他価値」に不寛容(ただしそれらは「無知」から来ることが多い)な日本では、必ず「国旗・国歌・元号」は、「天皇」と結びついて「強要」されるわけだ。
 あと、天皇条項で大きな変更があるのは、現行憲法第三条、天皇の国事行為には「内閣の助言と承認を必要とし」が、草案第六条4項の「内閣の進言」に変わっている…そして六条5項に「天皇は、国又は地方自治体その他の公共団体が主催する式典への出席その他の公的な行為を行う」と付け加えられている…これも現在の日本では「あたりまえ」のように行われていることであるが、それを憲法に規定して、「元首」らしく天皇を様々な行事、」イベント等にかつぎ出して、「天皇制」が「国体」であることを民衆にインプットしていこうとするものであろう。

 天皇条項は、「国旗・国歌・元号」も含めて増えているが、いずれも天皇の行為を「今以上」に束縛するものではなく、むしろその「権威」を存分に権力の側が利用できるようになっている。しかし増えた役割は「項目」で調整して、いよいよ「本丸」の九条になりようにしている。
 9条は現行憲法では「第二章 戦争の放棄」となり、九条1項で「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」となっている。改正草案では第二章 安全保障」と名を変え、九条1項では「永久に」という言葉が無くなり、「国際紛争を解決する手段としては用いない」と、さらっと書かれている。そして2項に「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」と付け加えられている…もちろん「自衛権」だけだから、「集団的自衛権」もOKだ!
 だが、「戦争」は「自衛権」を口実に行われるのがほとんどだ…日本の中国侵略戦争・アジア太平洋戦争も「自衛権(という、国家権益の保護)」のために行われたものであり、眞メリカはアフガンやイラクでの戦争を「集団的自衛権」の名で、同盟国を巻き込みながらおっぱじめたものである。こんなものを許してはならない。
 そして現行憲法では、九条1項を「担保」するための「戦力不保持」と「交戦権を認めない」ことが書かれているのだが、草案では(国防軍)として第九条の二に細かく規定している。ここには
「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」2「国防軍が、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する」3「国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命もしくは自由を守るための活動を行うことができる」とある…
 この3項は、これまでアメリカやフランス帝国主義者どもがやってきたような戦争を、自ら行うことの宣言である…ぶっちゃけた話、現在憲法違反とされている「安保関連法」が「合憲」になるのみならず、国連PKOや多国籍軍への参加が「法律」さえ定めればドンドン出来るようになるのだ。

 安全保障関連では、九条の三が加えられたことも見逃せない…「国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。」とある。「領土、領海及び領空」と制限がついているので、「個別的自衛権」の範疇に入るからいいや…と思ってはならない。「領土紛争」という国際的に微妙なものに「国民」を動員して「戦争的手段」も含めたかっこうで、これを守るという「宣言」である。「資源」までついているのが、さらにいやらしい…EEZにおける「資源」の確保を意味しているのだろうが、これがいつ「シーレーン防衛」に解釈変更されるか…今の安倍政治を見ていれば分かるだろう。

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