自民党「憲法改正草案」を読んでみる(その1)
さて、来年の参議院選挙で自民・公明+「おおさか維新」が勝ったら、安倍政権はいよいよ「改憲」に踏み出してくるであろう…ということで自由民主党の「憲法改正草案」pdf を読んでおくのも、必要な理論武装である。
とはいえ、ありきたりの「立憲主義」に基づいていないだとか、9条が「安全保障」になって「戦争のできる国」になるとかといった「ありきたり」の批判だけではオモシロクない…幸いなことに草案は現日本国憲法と対になって、比較できるように書かれているから、「どこがどう変わるのか?」ということは非常に分かりやすい・・・だから「細かな所」への突っ込み・・・もしておこう。
その前に少しだけ「誉めておく」と…確かに現日本国憲法よりは、分かりやすい文体、用語で書かれている・・・「改憲論者」の言う、「訳語調で分かりにくい」のが、現行憲法の「欠陥」であり、そのことが民衆が「憲法を活かす」ことから遠ざけていたのでは…という「反省」も成り立つであろう。例えばこんな感じだ。
あと、「障がい者」を念頭においた文章になっていること…例えば第十九条 現行「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」改正「思想及び良心の自由は、保障する。」改正案のほうが簡潔である。また「権利章典」にあたる部分、例えば第十四条、改正案では「全て国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」とある。この辺は素直に「評価」しよう…
では、まず前文からいってみよう…改正案ではいきなり「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。」とある・・・すなわち、統治形態の「固定化」であり、かつ「天皇を国民統合の象徴」と規定している・・・すなわち、「天皇を中心とした国体」というイデオロギーが真っ先に規定されているのだ。
現憲法の前文を読んでみれば「ここに主権が国民に存することを宣言し(すなわち「国民主権」下で、統治形態が変わることを認めている)、この憲法を確定する」とあるのとは、エライ違いだ。
また現行憲法前文では「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し」「日本国民は、恒久の平和を念願し」と。「平和主義」の要となる文章をあちこちちりばめているが、改正案前文では「今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する」と書かれているのみである。「平和主義」はただの1回しか出て来ず、「重要な地位を占め」と、大国主義をふりかざしている…こんな国の目指す「世界の平和と繁栄」がどんなものだったか…アメリカがやってきたこと、やっていることを見れば明らかであろう。
あとはもう「うんざり」の連続…「日本国民は、国と郷土に誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」…だって。「和をもって貴しと成す」なんて、聖徳太子の十七条憲法(単に役人の心構えを示したもの)かよで、「相互扶助国家」を目指すらしい…そして「日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するために、ここにこの憲法を制定する。」で終わる・・・オイオイ、「伝統」なんて憲法があろうがなかろうが、良い物は残り、悪いものやつまらないものは廃れていくものだし、何をもって「良い伝統」とするかは人それぞれである…一方的に、「自民党コアメンバー」の考える「伝統」を押し付けられ、かつその「国家」(社会では無い)を子孫に継承するための「憲法」は、この段階で社会の変化を拒む、ガチガチ頭の憲法であることが分かる。
しかし自民党さんよ・・・「伝統」と「国家」を子孫に残したいのだったら、まずは日本にある原発の再稼働を止め、直ちに廃炉にすべきだろう・・・いや、福島ではもうすでにそれが壊されている・・・そこを元に戻せよ・・・と「敵」の論理で敵をやっつけることも出来るのだ
次は天皇条項と、9条に行ってみるでゲソ。
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