土木業界の「女性活用」について…
安倍政権は「一億総活躍」…を言う前から「女性の活用」とかいうことをしきりに述べている…では、我が土木建設業界での「女性の活用」・・・というか、土木・建設業界で「技術屋」として働く女性の実態について、私の知る限りで述べてみよう。
ぶっちゃけた話、土木建設業界で「技術屋」として働く女性の数自体、少ない・・・なにぶん、80年代、私の大学時代は大学の「工学部 土木工学科」に女子学生なぞ、全くといっていいほどいなかった…「男女雇用機会均等法」ができても、そもそも土木工学を学んでいる女性がいないから、当然女性技術者なんぞ雇いたくても雇えない。
いや、その頃はバブルの時代で、土木業界自体が「3K職場」として敬遠され、土木工学を学んだヤツが銀行に就職するような時代でもあった。土木学会誌では、「土木のイメージアップ」を測るための特集を組み、「土木」そのものの名称を変えようなんて議論も起こったぐらいである。女性の獲得以前に、人材の獲得のほうが問題だったのだ。(話は変わるが、会社の経営陣・幹部に女性を…といわれても、均等法から30年、最初にいわゆる「総合職」で入った女性は多くの壁に阻まれて次々と脱落していったのだから、まだ女性が会社の経営に責任を負えるようなところまで「出世」する経験と年齢に達していない…だからこの件で「数値目標」を掲げても、どだい無理である)
私が社会に出てからバブルがはじけ、民需は減ったものの公共投資はそれを補うべく続いたから、業界は忙しかった…そうした中、「女性技術者」もちらほら入って来るようになる。また、「技術者」ではないが、ダンプやアジテータ車(いわゆる「コンクリートミキサー」のこと、正式にはあれでミキシング(練り混ぜ)をしているわけでは無いので、アジテータ車が正しい)の運転手、交通整理を行うガードマンに女性が進出してきたのが、この頃である。
女性技術者の行く手を阻んだものに、「トンネル工事」がある…もともと山の神様は女性だから、女性をトンネルに入れると事故が起きる…ということで、実際にトンエルを掘る抗夫から女性がトンネルに入ることを拒むことがあった。また「労働安全基準法」により、女性の坑内作業は禁止されていた。ただ80~90年代になると、トンネル工事も随分「安全」なものとなり、粉塵などの作業環境も改善されていった。女性の坑内作業禁止条項も法改正により無くなった…これで女性技術者がトンネルに入ることが出来るようになった。
まぁ土木建設業界でも、みんながみんな「現場」に出るわけではない…設計やコンサルティング部門では「内業」がほとんどだから、そういった部門で活躍する女性技術者は増えているのだろう。
ところが、やはり「現場の第一線」ではまだまだ少ないのが実情である…で、会社に二十数年いて、様々な女性技術者を見てきたが、やっぱり数が少ない。
いわゆる「結婚」して「子育て」となると、もうどうなっているのか私では分からない…結婚して「寿退社」した女性技術者もいれば、多忙その他ゆえ結婚していない女性技術者も多い一方、若くして職場内その他で結婚し、そのまま会社で仕事を続けるという女性技術者もようやく出てきた・・・というような感じである。
土木学会誌でも、女性土木技術者の特集を組んで、何が問題なのかとか座談会なんかやっているが、まだまだ…というのが現状である。学会誌では「土木女子…ドボ女」という言葉を随分前から使ってはいるが、まだまだ一般社会には認知されていない。
前のエントリー で上げた、業界の慢性的な忙しさを改善しない限り、女性はおろか、男性もウチの業界には来ないだろう…残念ながらそれが現実なのである。
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コメント
私のいる業界でも生コンを使うことがあるのですが、あれを正式にはアジテータ車と呼ぶことは初めて知りました。
建設現場で女性の姿はチラホラ見かけますね。
ダンプは比較的多いし溶接工も見たことあります。
1985年頃に『振られ気分でロックンロール』歌ってたトムキャットのボーカルの人も現在鉄工所で溶接しているとか。
しかし、やっぱり数はそんなに増えないし工事現場で職長やってる人も見たことないですしねえ。
体力的にもキツイかなという気がします。
技術者ということになると、また別なんでしょうけど敷居は高そうですね。
投稿: BM | 2016年2月 1日 (月) 22時26分