自然エネルギー普及の愚…ドイツの事例
「脱原発系」の人々の多くが「原発止めて自然エネルギーに」という意見を持っていて、集会や電力会社前でやる「金曜行動(「反原連」が首相官邸前で毎週金曜日に原発再稼働反対を訴えているのが全国に広まったもの…高松でも四電本社前でやってるよ!)」なんかでもそれを訴えている。私は以前から、「自然エネルギーは役に立たないクズ電力」で、「かえって資源を浪費する…そんなモン使うんだったら、その資源(化石燃料)でそのまま発電したほうがマシ」という真理をこのサイト から得ているので、心の中では冷笑しつつ、「脱原発」は共通できるのでケンカせずに一緒にやっている。
で、今回は「2020年までの脱原発」を政策に掲げ、「自然エネルギー大国」となっている(だから「脱原発系」の人から賞賛される)ドイツの電気エネルギー事情について「ドイツリスク 夢見る政治が引き起こす混乱 三好範英 光文社新書」からピックアップしてみようと思う。
ドイツでの自然エネルギーの普及は、今日本でも行われている「固定価格買取り制度」のおかげである。この制度はドイツでは2000年に始まり、その後自然エネルギーの割合は急速に伸びる…特に2011年以降の伸びが顕著で、2010年に1億480万メガワット時(総発電量の16.6%)から、2014年には1億6060万メガワット時(同26.2%)に増加している。
ドイツの自然エネルギーは風力発電が多く、次いでバイオマス、太陽光発電となっている。風力発電は陸上では立地の限界にきており、建設の比重は海上風力発電に移っている。北海やバルト海は遠浅で、陸地から40㎞離れたところでも、海底固定式の風力発電所が設置可能という事情もある。だが、陸上に同規模の発電所を設置する場合と比べコストが高く、建設費で4倍以上、維持費も2~3倍かかるそうだ。
そんな「高い」コストの自然エネルギーが増えれば、固定買取り総額が増えて来る…2005年に45億ユーロだった買取り総額は、14年には200億ユーロになっている。それは電力料金に上乗せされ、消費者が負担することになる。2014年の電気料金は、年間3500キロワット時を消費する3人家族の標準世帯で、1019.88ユーロ(約14万円)となった…これは2000年における487.9ユーロの2倍強である。この間、発電、送電、販売のコスト増は約60%の上昇だが、買取り制度による賦課金や環境税など付随する料金が190%の上昇となっている。ただし、輸出競争力を確保するため、アルミ産業、鉄道などは賦課金を軽減されるなどの優遇を受けている。
問題はここからだ…ドイツは日本と比べてまんべんなく人口や産業が立地しているイメージを私は持っていたが、実は北部は人口が少なく、南部に人口や産業が密集し、原発も南部に偏っている…逆に人口の多い南部では風力や太陽光発電の立地場所の余裕がないため、それらの発電所は北部に集中する…よってドイツでは現在、南北を結ぶ送電線の建設に余念がない…ドイツには大手送電会社が4社あるが、その4社がエネルギー転換決定を受けて2012年5月に新たな「送電線開発計画」を発表した。転換のためには既存の送電線4400㎞の改修、高圧送電線などを3800㎞新設する必要があるという…しかし高圧送電線建設計画は中部チューリンゲンの森を通す計画など全国の少なくとも4か所で、大規模な反対運動に遭遇して立往生している。
自然エネルギーの発電量は天候によって左右される、中小規模の水力、火力発電所の発電量で調整したり、場合によっては風力発電所の稼働を止めるよう要請する。自然エネルギーが増えることにより、年々その調整が難しくなっているという。それだけでなく、過剰な電力供給により、電力取引市場におけるマイナスの電気料金、つまり、電気を料金を払って引き取ってもらうという珍現象まで起きる始末である。(これをネガティブ・プライスと呼ぶ)
先ほども書いたように、調整のためにはバックアップ発電所…すなわち既存の水力・火力発電所が必要になる。ドイツ環境省によれば、自然エネルギーの普及に伴い、2020年までにおよそ原発8基分の1万メガワットの化石燃料発電所が必要だそうな。
しかし「固定買取」によって自然エネルギーが優先的に買い取られる結果、売電できずに収入が減った既存発電所の事業者が次々と撤退しようとしている。かろうじて採算が成り立つのはドイツで自給可能な「褐炭発電所」のみである。2014年の発電量の首位を占めるのは褐炭発電で、総発電力の25.4%、ドイツの総発電量の43.2%が石炭発電である。「温室効果ガス(注…これもこのサイト で温暖化は産業活動によって発生した二酸化炭素が原因ではないことを私は知っているが)の観点から望ましいガス発電は、コスト面で折り合わず減少している(…なぜ効率の良い「ガスコンパウンド発電」が普及しないのだろうか?新規に投資する人間が「何らかの理由」でいないのであろう…)
かくして、自然エネルギーの普及にもかかわらず、温室効果ガス(二酸化炭素)の排出量は2012年、むしろ増加している。
お分かりだろうか・・・これが「環境先進国」と言われるドイツの実態である。自然エネルギーを推進すればするほど、電気料金は高くなるばかりでなく、よけいな送電線を建設し、火力発電も建設しなければならない。
日本は既存のシステムの改良で、なんとか「原発の無い」2年半を乗り切っている…脱原発は、別に自然エネルギーを普及させなくても先進工業国で「今、出来る」ことが証明されたわけだ…変に自然エネルギーを普及させることは、愚の骨頂であると断言しよう。
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コメント
●拙ホームページをご紹介いただき、ありがとうございます。
●西欧先進国や日本において、巨額の国費を投じて再生可能エネルギー発電が導入されていますが、肝心の二酸化炭素排出量は一向に減りません。
●再生可能エネルギー発電のために余計な国費を投入することが必要だということは、再生可能エネルギー発電事業という市場が新たに増加したことを意味します。つまり、それ以前に比べて工業生産規模が肥大化して、産業を支えるためのエネルギー資源と鉱物資源の消費が増加したことを意味します。
●結局、肥大化した工業生産を維持するために増加するエネルギー消費が、発電分野で削減される化石燃料消費を食いつぶしているということです。差し引きすれば、結局、再生可能エネルギー発電の導入で鉱物資源の浪費が発生している=環境問題が悪化していることを意味します。これが資源物理学的な本質です。
●おそらくこんなことは当事者である政府関係者や企業は先刻承知していると思います。つまり、政府は財政出動して国費を関連産業に投入するための口実として温暖化対策を利用し、同時に国民から高いエネルギー料金を搾り取るための大義名分として温暖化対策を利用しているということです。これが経済的なカラクリです。
●要するに、再生可能エネルギー発電の導入という政策は、重電・重工メーカーをはじめとする大企業に国費を投入し、国民から必要以上のエネルギー費用を搾取するための仕組みだということです。
投稿: 近藤邦明 | 2016年4月15日 (金) 08時58分
拡散『温故知新311 』
大地震や原発事故で近接被災した主権者日本国民住民は、あるだけのタンス預金現金、キャッシュカード、通帳、家の権利書、保険証、携帯、のーとPC 、毛布数枚、タオル数枚、戸締まりとガス電気元栓切って、車(海辺は軽がよい)に家族で乗って、
川内原発なら高速道路幹線道路がすぐに警察によって封鎖されるので、住居地に閉じこめられての放射能被曝を避けるため、警察の緊急道路封鎖前に迅速に宮崎県へ幹線道路を避けて山道伝いに脱出。
山道途中の崖崩れも最近のエンジンが強い軽自動車なら通過しやすいが無理せず廻る。急がば回れ。
川内原発放射能漏れ事故ならば鹿児島県内は直ちに電話、外出してのATM,、ガソリン補給、外食などすべて不可になる。
宮崎県ならすべてOK。
よって親戚知人への連絡も宮崎から行う。車用充電器があればなお良い。
当座のガソリンと食費を持ち出したタンス預金現金20万ほど(それ以下でも良い)で賄う。
原発事故なら鹿児島県、地震なら震源地の県外へ脱出したら、すみやかに上記の補給や連絡が可能になる。
熊本地震川内原発事故なら、脱出した宮崎からフェリーで四国へ渡って、四国中国に頼るべき親戚知人のない人は、ガソリンと食糧補給しながら、規制されていない道路や高速を使って、落ちついた安全運転で、とりあえず山口県岩国市へゆけばよい。
岩国には日本全国の主権者日本国民が納めた税金から思いやり予算ですべての生活費を面倒見ている、広大な極東一の敷地面積を誇る米軍岩国基地があり、311の時のオバマ政権国務長官ヒラリーが言った『できることは何でもして日本人をお助けする』の言葉通り、日本在住期間が長い米軍基地司令官は日本人のように「義を見てせざるは勇無きなり」を知る青い目のサムライになっているから、地震や原発難民となったサムライの国の日本人が大勢で避難してくれば、必ず基地施設を開放して粉骨砕身救助支援活動に、敏速に取りかかってくれるに違いない。
米合衆国憲法では、米国外にある米軍はすべて現地司令官の軍法指揮下にあり、現地司令官は合衆国憲法や議会や大統領の意向に何ら拘泥することなく、所轄下の米軍全軍をその独断裁量で作戦行動せしめ得ることになっているのだから。
米軍基地司令官の日本の武士(サムライ)のように恥を知る廉潔な人格は、広く世界中が知るところである。
日本のどこで何時大地震や原発事故が起こっても、日本全国の米軍基地から直ちに在日米軍全軍を上げて国際救助隊サンダーバードの如く、救助隊が駆けつけて不惜身命救助活動を粉骨砕身行ってくれることは、万国の万人が全く疑う余地の無いところである。
和を以て貴しとなす日本国憲法第9条精神を、ひとりひとりが身体中に漲らせて、「心の色、赤十字・・・・・・」と歌いながら。
投稿: 通りがけ | 2016年4月16日 (土) 11時59分
今回のような震災や水害でソーラー発電の配線が壊れても太陽が当たってる限りはつでんを続けており感電や火災の恐れがあります、家庭用の場合どこにあるかはっきりわからず救助活動の妨げになるかもしれません。原発でさえ災害時には一応、発電の非常停止装置があるのに。
さて四月一日から電力の小売り自由化が始まりました、ほとんどの人が(賃貸も)旧電力か新電力かを選ぶことができます。気分的には原発再稼働を強行する旧電力の契約を止めたいと思うのですが、電力自由化政策の意図がよくわかりません。いろいろしらべてもどこがポイントがつくとか、安いとか(なぜか電力をたくさん使うほど割引率が高い)はででいても本質的問題はわかりません。
反原発にかかわっている人たちでは、不買運動の武器を手に入れたとか、新電力を積極的に勧め旧電力を追い詰めることによって脱原発を実現することが出来ると主張する人もいます。
しかし今回の電力自由化は政府経産省の主導で行われたのではないでしょうか?
自民党政府の自由化=規制緩和は多くの場合、大企業の利益のために労働者、市民に犠牲を強いるものでした、今回に限って脱原発に力を貸す正義の味方?
反原発の立場に立って電力自由化政策の意図を分析する必要があるのではないでしょうか。
仮に新電力のシェアが増えも旧電力に比べて発電量が圧倒的に少ないため旧電力から卸してもらうことになるのではないでしょうか、そして旧電力はコストを下げるため既存の設備をフルに動かそうとするでしょう。新電力を選ぶことが反原発の意思表示を明らかにすることになっても、それだけでは勝てるとはいえないと思います。
投稿: 木々の落葉 | 2016年4月18日 (月) 01時06分
忙しくてなかなかコメントが…
あるみさん体調はいかがですか?
自然エネルギーの話、面白いですね。
あるみさんらしい記事だなぁ(笑)と…
投稿: 平行四辺形 | 2016年4月19日 (火) 09時33分
読んでみたが、洞察が浅くて時間の無駄だった。
投稿: | 2016年12月14日 (水) 03時29分