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グローバリズムとナショナリズムは、揺れ動く…

 暇があるので!?少し古い新書などを読んだりもしている…「グローバル恐慌の真相 中野剛志・柴山佳太(2011年12月 集英社新書)」である。
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 ちなみに中野剛志氏は、同じく集英社新書から「TPP亡国論」(2011年3月)を出して話題となった。1971年生まれだから、私より少し年下の学者である…もちろん「資本主義擁護」の「保守派」ではあるが、「資本主義とは何ぞや」ということを別の視点から分かりやすく説明していると思う。

 さて「グローバル恐慌の真相」では、対論という形で話が進められているのだが、「過剰な金融資本」が世界中を荒らしまわっている…というのが「グローバリズム」の本質であり、それが「健全な資本主義」の発展を阻害しているものと説いている。(共産主義者なら、そこで資本主義が行き詰まっているので、「共産主義社会」に転化させるべきと説く)

 ただ、資本主義社会が現代まで続く中、グローバリズム(自由貿易・資本の移動の自由化)とナショナリズム(保護主義・資本の移動の制限)との間で、ゆきつ戻りつ・・・という関係があったという指摘は面白い。

 これはP33にある図ー2 国際金融システムの変遷 というものである。
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第二次大戦前、第一次グローバル化というものがあった…これは「金本位制」のことで、国際的な資本移動は自由、為替の安定化も計れる(「金」の裏付けが各国の通貨にあったから)、ただし各国の金融政策の自立性は担保されない・・・というものだ。

第二次大戦後、「ブレトン・ウッズ体制」が確立し、「金」の裏付けのあるドル基軸化体制が出来上がった…ここでは国際的な資本移動は制限される・・・すなわち「グローバル化」というものがある程度制限された形で、アメリカを基軸としながらも各主要資本主義国が「発展」してゆくという体制になった。

 しかし日独(当時は西独)の戦後発展と相対的な米国の地位低下により、1971年の「ニクソン・ショック」でドルと金の交換が停止される…ここに「ブレトン・ウッズ体制」は終了し、現在まで至る第二のグローバル化時代が始まったと説く。

 この「ポスト・ブレトンウッズ体制」というのは為替の安定はもはや得られないが、各国の金融政策の自立性が確立され、また資本の移動の自由が復活した。資本の移動が自由になった場合(あるいは自由貿易を大いに進めた場合)、為替は大きく変動し、各国はそれを独自の金融政策で「調整」して安定を図るという行為をしなければならない…というわけだ。

 ところが、あまりにも「自由化」が進むと、為替等の変動幅が各国の金融政策で調整できる範囲をこえてしまう…ここで「恐慌」が発生してくるわけである。97年のアジア金融危機が、まさにその始まりだったのだろう。

 また「資本移動の自由化」を推し進めるため、EUのような「市場統合」を行った場合、各国が独自に金融政策を行うことが出来ず、各国の資本流出や過剰資本を域内で調整できなくなる。これが「EUの限界」であり、TPPもまたその轍を踏むだろうと説く。

 EUに関しては、最近イギリスのEU離脱が国民投票で「決定」されたばかりであり、TPPについても、大統領選さなかのアメリカにおいて、その批准を大統領候補が見直そうと公約している有様である。
 つまり、「過度のグローバル化」を推し進めると、一方で経済の「ナショナリズム」が起こってくるというわけだ。中野氏らは、この「経済ナショナリズム」をある程度残さなければ、資本主義社会は「過剰な金融資本」で蝕まれると説くわけである。

 ただ、「資本」というものは「資本」を辞めない限り、自動的に「増殖」…すなわちG-W-G'(G<G')という運動をしてゆくものだから、それに対抗する「経済ナショナリズム」は、よほどの「大きな力」を持たないと対抗できない…そこで「国民国家」「民族」といった、本来の「ナショナリズム」が極端な形で現れるのである。

 自民党改憲案が、「基本的人権」や「社会権」の保障を投げ捨て、グローバル資本がより活動しやすい社会を目指す一方、「国柄」や「天皇の元首化」など「ナショナル(かつ復古的)なものを持ち出さなければならない理由は、ここにあるのである。

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