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「ヘリマネ」でハイパーインフレは起きないが…

 日銀が「マイナス金利」政策を取り、日本国債の金利もマイナスとなった今、国債をジャンジャン発行して、市中に金をばら蒔く「ヘリマネ(ヘリコプター・マネー)」が話題になっている。
 「ヘリマネ」の定義は、増税などにより政府に回収されることのないお金を人々に配る政策の総称と考えられている…具体的には「地域振興券」だとか、麻生政権の時にやった「定額給付金」(私はこれで「すのこタン。A4」 フルカラーをゲットした)なんかを、大々的にやろうというものだ…その他、国債が「マイナス金利」である今こそ、国債発行で新たなインフラ整備を行い、景気を刺激しようという意見も出てきている。
 たしかに、現在のデフレ状況を脱出するためには、冷え切った内需を拡大するため、民衆に金をまわすことは大切である。最低時給1000円、いや1500円は目指さないといけない。そのためには、例えば「公的な業務」で民間に委託されているもの、あるいは民営化されたものを「公営化」し、身分と賃金を公務員並みに安定化させることも必要だろう。そのために必要な経費を「赤字国債」で賄うという考えも当然出て来る。(本来は大企業や富裕層への増税で行うべきなのだが・・・)
 ま、こういった行為も「ヘリマネ」の一種として考えるとしよう…当然、赤字国債の発行高は増える。「財政規律」が保てなくなり、ズルズルと赤字国債が増え、やがては日本国債への信頼が低下し・・・ハイパーインフレに・・・
 は、ならないのである。というか、実は「ハイパーインフレ」には、国際会計基準で定める3年間で累積100%(年率約26%)の物価上昇、フィリップ・ケーガンによれば月率50%(年率13000%)がそれであるという「定義」がある。要するに、「いくらなんでもそこまではいかんだろう」・・・すなわち単なる「高インフレ」になる・・・というお話である。
 カーメン・M・ラインハート、ケネス・S・ロゴフ「国家は破滅する」によれば、1917年~94年の間でハイパーインフレになった事例が3例あげられており、一つはアルゼンチン1989年のインフレ率3079.5%、ブラジル1990年2947.7%、ドイツ1923年22,220,194,522.37%である。敗戦時1945年の日本は561.8%であったから、ケーガンによれば高インフレではあるが「ハイパーインフレ」ではない…ということになる。
 ただ、年率50%のインフレでも、庶民にとっては厳しい…だいたい物価のほうが給与所得よりも早く上がるし、年金などで生活する高齢者にとって、インフレは大敵だ
 だから「ヘリマネ」をやっても「高インフレ」になる前に止めるべきなのである。カネが天から降って来ても、供給力以上に降らせてはいけない(逆に現在は供給力が「過剰」だから、そこまで需要を喚起するところで止めておくのである)
 ところがそれがなかなか難しい…過去に高橋是清が積極財政をやった。1932年11月25日から、日銀による国債引き受けを始めたが、それに味をしめた軍部が軍拡・戦争に走りだす…当然「日銀の国債引き受け」も止められない止まらない状況になったのである。
 また、高橋積極財政は名目金利の上昇は見られなかった。なぜなら1932年に資本逃避防止法等が施行され、その規則によって内外金利裁定が機能しなくなったからである。
 ただし、国際金融市場では、日本国債はちゃんと金利が上昇していた。ロンドン市場において、四分利付英貨公債の金利は、1937年日中戦争勃発時に10%を突破、欧州大戦勃発時の39年9月には20%を越え、日独伊三国同盟が結成された40年9月には21%…日本国債はジャンク・ボンドに堕ちていたのである。

 日本国債の保有者の大半が日本国籍者(現状9割)だから大丈夫と言えるか?この4年間で年平均30兆円近く国債残高が増えている。この傾向が続くとして2020年にどうなるか簡単に計算してみると…
A:国債の残高1074兆円+増加額4×30兆円=1194兆円
B:日銀の保有残高317兆円+増加額4×80兆円=637兆円
B÷A≒55.3% となる。「東京オリンピック」の年には、国債残高の半分近くを中央銀行は保有していることになる・・・こんなことをして大丈夫と言えるのか

 国債の残高は将来の高インフレや償還が危ぶまれてくるならば、国内債券の売り、国外資産の購入という形で債権価格の下落(金利の上昇)が起こり、新規の国債発行が難しくなる。現段階でとりあえず資金を移動しても安心という国はないので、このまま黒田日銀総裁と安部晋三に任していたらどうなるか分からない…日銀引き受けによる「悪性インフレーション」が起こるのである。ハイパーインフレではないが、これは恐ろしい

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