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ルポ ニッポン絶望工場

 はじめに、この「ルポ ニッポン絶望工場(出井康弘 講談社+α新書)は最近の「外国人労働者」について書かれたルポではあるが、外国人労働者の権利や人権問題というより、外国人労働者をいかに「良質な人材」として確保するのか?という観点から書かれていることを始めに断っておく…その上で安田浩一氏著ルポ 差別と貧困の外国人労働者(光文社新書 2010年6月) から状況は変わっている…ということを念頭において読んで欲しい。
S_000009 安田氏がスポットを当てた「外国人労働者」は、いわゆる「研修制度」を使って来日した中国人労働者と、日本政府が特別に「移民」として認め導入した日系ブラジル人についてのルポである…ところが時代は進み、「ニッポン絶望工場」では、中国人実習生に変わり、ベトナム人語学留学生が登場する。
 「お友達ブログ」のプレカリアートさん の職場では、ベトナム人労働者が多く働いているそうだ…コメント欄で「その人たちは研修生ですか?」と聞いたら、どうもそうではないらしい…実は彼らは「留学生」として日本に来ている。どうゆうことか?

 これには「留学生30万人計画」というのがからんでくる…いわゆる「グローバル化」に対応して、日本に留学生をドンドン受け入れよう…という政策なのだが、この30万という数字…フランス(非英語文化圏の先進国)で高等教育機関で学ぶ学生の約12%が留学生だ…だから日本において約300万人の高等教育機関で学んでいる人間の10%程度を「留学生」にしよう…という安直な考えで数値目標を決めたようだ。
 この「留学生30万人」というのは、実はけっこうハードルが高い。この計画を政府がつくった2008年当時、留学生数は約12万人…それを倍以上に増やすのだ。また世界各国を見ても、留学生が30万超えるのは、アメリカの約78万人、英国の約42万人…3位のオーストラリアや4位のフランスでも、24、5万人程度である。
 そこで日本は「留学生」…正確に言えば留学・就学ビザの要件を変更する…2010年に大学などで学ぶ留学生は「留学ビザ」、日本語学校で学ぶ外国人は「就学ビザ」としていたものを「留学ビザ」に一本化する。「留学ビザ」で入国した場合、「週28時間以内」まではアルバイトをすることが認められている。
ここで、特にベトナムにおいて「日本語学校」への留学を「あっせん」するブローカー達が現れる…「日本に行けば月20~30万円は稼げる」と宣伝し、あっせん料として前金150~200万円もの「前借り」をして、ベトナム人が「語学留学生」としてやって来るようになったのだ。週28時間労働では、時給1000円のバイトでも月10万円にもならない…ブローカーには150万もの借金(多くは家や農地を担保に借りている)を返さなければならないし、日本語学校の「寮」でもぼったくられる…かくして留学生たちは夜間のバイトを毎日行って、昼間日本語学校で寝ているということになる。日本語学校に留学するためには「N5」(ひらがなが読め、簡単なあいさつ程度が出来る)能力が必要なのだが、ニセの資格はブローカーに金を出せばなんとでもなる仕組みらしい。
 日本語の出来ないベトナム人留学生の出来る仕事は、工場等での単純作業に限られてくる…人とコミュニケーションを取る必要はない。仕事で疲れて勉強も出来ず、寮もベトナム人だけであるから、「日本語が出来て、日本とベトナムを結ぶグローバルな仕事」に就くためのスキルも育たない…「何のための留学」なのか分からなくなっている。(この「留学生問題」が報道されない理由として、かつて日本の苦学生を助けた「新聞奨学制度」も日本人学生の成り手がおらず、ベトナム人等に頼っている販売店が多くなっている…ということもある)

 では中国人実習生や、日系ブラジル人はどこに行ったのか…それらの国はここ数年の「経済成長」で国内に就業場所が増え、わざわざ日本に「出稼ぎ」に来なくても良くなったのだそうな…中国から見た日本は「働く場所」ではなく「買い物に行く場所」となるまで、中国は経済成長している。

 その他本書では、フィリピン・インドネシアからの看護師・介護士受け入れ問題…向うでそれなりのスキルを持った人に対し、わざわざ日本語で試験を受けさせて「追い返してしまう」問題や、かつての日系ブラジル人に対する受け入れ態勢の不備(子どもが学校教育を受けられない)等の問題を指摘し、日本の外国人労働者受け入れ問題は、本音が「人手不足」であることを隠し、「国際貢献」「人材育成」といった建前をふりかざしながら、その実いきあたりばったりであることを問題視している。日本が外国人労働者にとって「ブラック工場」であり続けるなら、今後日本に必要な人材をアジア各国から確保することは出来ませんよ…と説いている。

 日本に必要な人材をアジア各国から確保する…現在でも農家や漁業者では、外国人労働者が無いとやっていけない現状がある。外国人の「出稼ぎ」や、さらには「移民」をどうするか、真剣に考える必要がある…というのが本書の立ち位置である。もちろん日本に一時的であれ、恒久的であれ来て働いてもらうのであれば、日本社会を構成する「市民」として、日本人と同等の権利や労働条件を認めるべきである…というのが、我々左翼の主張である。本書の筆者は左翼ではないが「そこまで(あるいはどこまで)認める覚悟が、日本社会にあるのか?」ということを問うているのだと思う。

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コメント

 この本は当戦線も興味深く読みました。
 この本では人口が中国に次いで多いインド人留学生が1,000人台であることをひいて、ベトナム人「留学生」の数の異様さに触れていた箇所がありました。
 この本を読んだおかげで、次のニュースの後に何がやってくるのかよくわかりました。
http://www.tokyoto23ku.com/archives/1027.html
>安倍総理は今後5年間で10,000人のインド人留学生や短期招聘の実現を目指すことことについて言及しています。

投稿: 焚火派GALゲー戦線 | 2017年1月23日 (月) 20時53分

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