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基礎研究を疎かにし、ポスドクを使い捨てにする日本の科学界に明日は無い

 既報のとおり、2016年のノーベル生理学・医学賞を東京工業大学の大隅良典栄誉教授(しかしスゴイ肩書だなぁ~)が受賞することにあいなった。細胞の「オートファージー」(自食作用…細胞内の壊れた部分を細胞内器官が「自食」して有用なアミノ酸に分解し、リサイクルするしくみ)を、酵母を研究することによって、それに関連する遺伝子を18個も突き止めたことが評価されたとのことである。
 「ノーベル賞」の是非そのものは横においといて(「特に「平和賞」なんかはかなり政治性を帯びている)、こういった基礎研究が世界的に評価されることは、良いことだろう。だが、日本は今、こういった「基礎研究」をじっくりやる環境にない…というのが現実だ。

 まず国立大学は「独立行政法人」化され、研究内容や成果の査定をうける…「成果」の出ない研究には金がつかない…というのが現実である。ところが「基礎研究」なんてものは、いつ、どんな成果が表れるか分からないし、それが直接「何の役に立つのか?」「何に応用できるのか?」なんてことも分からない。ありていに言えば大隅教授も、自分のやりたいこと、知りたいことを純粋に研究していただけである。それがたまたま他の研究者が目をつけなかった分野であったため、「基礎研究」として誰もが発見することが出来なかった「成果」をあげることが出来たのである。
 目の前の、短期の「成果」だけ求める現在のシステムでは「基礎研究」はないがしろにされ、新たな科学上の知見は生まれない…と断言できる。

 もう一つは、研究者の待遇の問題だ…私は大学であまり勉強しなかったので大学院に進級することができず、「学士」のままである…だが大学院で「博士課程」を修了したとしても、大学に残って安定した研究が出来ない…いわゆる「ポスドク」の問題がある。
 これについては大隅栄誉教授も「若手研究者をサポートするシステムを作りたい」 と述べられている。このリンクは大隅栄誉教授の発言よりも、若手研究者がおかれている現状についての憂いが座談会方式で述べられている後半部分に注目だ…一部引用しよう。

 実際には、研究費が足らない、研究支援部門の職員が少ないため研究をなかなか進められない状況です。その中で5年に1回、研究機関全体の中期計画が作られ、独立行政法人はリセットを繰り返してきました。安定的な研究資金は実際には運営費交付金しかないのですが、この10年間で十数パーセントも減らされている中で、現場の人員が足りないだけでなくコンプライアンス強化など事務的な作業も増えて、研究現場は苦しくなる一方です。

 情報通信研究機構は、産総研と比べてパーマネント職員(正規職員)が少ないことがいちばんの問題です。もともとパーマネント職員は少なかったのですが、先行して事務も含む研究支援部門の職員を大幅に減らしました。その弊害は、たとえば財務契約担当者が減らされてしまったため、研究者が契約手続きをしなければならなくなって、研究すべき時間を割いて各種手続きを研究者本人がやらなければならないという状況になりました。また、研究予算の中で派遣職員を雇い、その仕事はそちらでやってもらうというアウトソーシングに近い、お金で解決せざるを得ない事態が起きています。独法化の初期の頃に3年任期付き研究員を多く採用し、3年後のパーマネント採用が半数以下という事態に陥り、その制度での採用を5年間でやめたという経緯もあります。

 とりわけ理系の研究者の置かれる状況がまさにそうで、私の周りの大学などでも依然として若手研究者の不安定雇用が続いています。ポスドクの人たちが医学部の中にもいて、任期付き助教になるのですが、やはり不安定雇用で将来不安に脅かされています。採用された時に任期のことは言われていなかったのに、いきなり「1回きりで更新なし」と言われたなどという問題が起きています。

 大学でも、研究機関でも、同じような状況が続いている。その上、労働契約法の「改正」などもあり、雇い止めが多発している。研究者は無期転換申込権発生までの期間が特例で5年から10年になりましたが、結局は10年から先はないわけで安定した雇用ではありません。10年後に仕事がなくなる研究者というのは本当に深刻で、なんとか改善する道筋を早く見つけないと、これが30年続いたら一世代に及びますから、研究者は滅んでしまいます。研究者だけでなく、技術者なども、結局技術も継承できなくて滅んでしまう。昔のことを知っている人がいなくなったら、一体どうなってしまうのだろうと心配です。早く解決策を見つけたいですね。


 なんかこう…マルクスじゃないけど「万国の研究者よ、団結せよsign03」そして安定した研究環境を勝ち取れsign01と叫びたくなるような現状である。

 読み進んでゆくと、ポスドクには「職業として崩壊しつつある研究職」が残されている…結婚して家庭を持つことなど考えられない…加えて女性研究者には、産休も育休も無い。そして最終的には、こうなっている。

 実際に学術論文や研究論文として見える成果も減りつつあります。業務量が増えたり、予算が減ったり、実際に研究の質が落ちたりと複合的な理由はあると思いますが、どの現場でも、評価の高いレベルで注目される論文数が、どんどん減っているのが現状ですね。
 
 諸外国ではどうなっているのか定かではないが、日本においてこの状況が続けば、やがて「ノーベル賞」モノの研究成果など、でて来なくなるだろう…それは日本においてのみならず、世界においても不幸なことである。

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