1%が総団結しているわけではない!
我々…というか、多くの左翼的人士は現在「1%の富裕層と、99%の対決」というキーワードを発する。格差が広がった現在の新自由主義社会・グローバリゼーションを批判し、対抗するためにこの言葉を使っているわけだが、その「1%の富裕層」は必ずしも団結して一つであるというわけではない。
「資本主義の終わり論2」において、この考察も含め述べられているものを紹介しよう。「10年たって」その3
(前略)「グローバリゼーション」という言葉がはやっていますが 資本主義で資本が1つになることは絶対ありえません(『資本論』Ⅰ巻23章の結語の論理や『帝国主議論』の不均等発展論)。超過利潤、生産性つまり搾取率の向上をめぐる資本間の競争がなくなれば 資本が運動する内的・自発的必然性がなくなってしまうからです。独占と言っても 自由競争を排除するのではなく、自由競争の上に立つ独占です。グローバリゼーションとは それぞれの巨大資本や多国籍企業が投資先を求めて世界的に展開しているということであって 巨大資本・多国籍企業が独占=分割戦をしていないということではないのです。グローバリゼーションを帝国主義の次の段階と見なし、総金融資本が共同で労働者・民衆を搾取・収奪していると考えることは かつてレーニンが批判した「超帝国主議論」そのものです。グローバリゼーションと唱えている人の多くは「革命」という言葉を一切使っていません。資本主義の発展の先に革命抜きに未来社会があると考えているようで まさしく資本主義への屈服とその美化にほかなりません。ソ連の崩壊・中国の変質とマルクスの理論の基本での理解の誤りゆえに 共産主義社会実現への確信を失われたようです。(中略)
レーニンは『帝国主義論』で 帝国主義のメルクマールとして5点をあげています。「(1)経済生活の中で決定的役割を演じている独占を創りだしたほどに高度の発展段階に達した、生産と資本の集積 (2)銀行資本と産業資本との融合と、この『金融資本』を土台とする金融寡頭制の成立 (3)商品輸出と区別される資本輸出がとくに重要な意義を獲得すること (4)国際的な資本家の独占団体が形成されて世界を分割していること (5)最大の資本主義的諸強国による地球の領土的分割が完了していること」です。そして続けて「資本主義のこの発展段階が資本主義一般にたいしてもつ歴史的地位や、あるいは労働運動における2つの基本的傾向と帝国主義との関係をも念頭におくならば、帝国主義はこれとは別様に定義することができるし、また定義しなければならない」と述べ (6)資本主義の寄生性と腐朽化 (7)労働貴族の発生 を指摘しています。
「超帝国主議論」的に帝国主義は新たな段階に入ったと主張している人たちは レーニンの規定の(4)と(5)が変わったと述べていますが (4)は先に見たように より独占と寡頭制が強まったのだから 独占資本が世界を分割していることには変わりありません。だから問題は(5)の検討となります。なお (6)と(7)の傾向も変わりません。貸付貨幣資本が基軸になったということは 貸付貨幣資本は新たな価値を創らないので 寄生性の深化・増大にあたります。(中略)
グローバル化で資本が国家を超越したとは言えません。TPPを見れば判るように この巨大資本が儲けるための投資協定は 国家によって批准・承認しなければ 成立しません。依然として「国家主権」を前提としているのです。資本は これまでタックスヘイブンなどを使って税金逃れをして利益をあげてきましたが(国家からの超越・逃亡) 世界的な危機に突入し、自らの破滅が目前に迫っているが故に 再び国家依存・自国第一主義への回帰が始まっています。
米大統領選挙でトランプが勝利しました。彼は TPPやNAFTAに反対し、アメリカ第一主義を掲げ、差別と排外主義を煽っています。当選が決まった日から 差別と排外主義のヘイトスピーチやヘイトクライムが横行し、危機感をもったヒスパニックや黒人の抗議行動が起こっています。いまこの自国第一主義は アメリカだけではなく英・仏など先進国のほとんどで叫ばれています。維新や小池都知事らも同じだと思います。彼らは 貸付貨幣資本(金融資本)やそのイデオロギー・政策である新自由主義に反対しているのではなく 自国資本の世界的展開で空洞化する自国の産業・経済を取り戻したいだけなのです。トランプの最初の政策は法人税の大幅引き下げです。その下げた分は 民衆の税負担増大に帰着します。資本の発展が行き詰まり危機に陥り、自国第一主義的に利益を追求しようとしたら 国家間の対立へと向かうことは火を見るよりも明らかです。(後略)
ながながと引用したが、要するに…
①1%の支配とは、金融資本が基軸になった現代資本主義社会において「利子生み資本」を有する少数の人々だけ(ほんとうは、人々がいるのかどうかすら怪しいのであるが)がボロ儲けできるシステムになったというだけで②その1%が「超帝国主義」的に「1つの資本」になったわけではない…資本間の「競争・つぶし合い」は残っている③その「競争・つぶし合い」を行うにあたり、「国家」がバックについてこそ行われる…TPPやFTAは「国家意思」の反映として表れている③よって「帝国主義間争闘戦」が無くなるわけではない・・・資本の発展が行き詰まり危機に陥り、自国第一主義的に利益を追求しようとしたら、国家間の対立へと向かう・・・のである。
確かに「反グローバリズム」を掲げた主張をしていると、この「帝国主義間争闘戦」に対する指摘、視座がおろそかになる…ということは否めないところがある。
しかし、国力の差から「絶対に勝ち目がない」ハズの対米戦争に、日本帝国主義は75年前の今日、踏み切ったという歴史がある。
このことを忘却してはならないと思う。
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コメント
「帝国主義国間掃討戦」ではなく、「帝国主義国間争闘戦」ではないですか?「掃討戦」→「争闘戦」。
投稿: 元解放研 | 2016年12月 8日 (木) 13時42分
元解放研さん、ご指摘ありがとうございます。訂正いたしました。
投稿: あるみさん | 2016年12月 8日 (木) 20時26分
おせっかいは、私の悪いクセですが、③よって「帝国主義間掃討戦」の部分が未訂正ですヨ。「資本主義の終わり論」学習してみます。
投稿: 元解放研 | 2016年12月 8日 (木) 21時33分
国家間の利益調整が外交交渉ですよね
国家間の対立は体制に関わらず無くならない事だよね
国家間の対立が全て戦争になるという結論は無いよね
主義者間の「お約束」を書いているという理解でよいのか
1%も99%もバラバラなのだから論旨が不明だ
投稿: まとめちゃん | 2016年12月10日 (土) 08時33分