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オキナワ島嶼戦争(前篇)

オキナワ島嶼戦争―自衛隊の海峡封鎖作戦(小西誠 社会批評社 2016年12月10日)を読んだ。小西誠氏は、「反戦自衛官」であり、中核派の運動と袂を分けてから、社会批評社で自衛隊について多くの評論・書物を出している。
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 また自衛隊の「南西重視」戦略に基づき、先島諸島への自衛隊配備が進められており、与那国島にはすでに160名の部隊が配備され、石垣島や宮古島にも配備を進める動きと、それに反対する住民運動のせめぎ合いがある…小西氏はその運動にもコミットしているようだ…宮古島市の市長選挙と市議補欠選挙が、自衛隊配備問題を争点にこの1月行われる。また石垣市では、住民への説明が中途半端なまま、市長が自衛隊受け入れを決め、問題になっている。

プロローグでは、小西氏がその自衛隊が配備された与那国島などを訪問するところから始まる。与那国に配備された部隊は「沿岸監視隊」ということなのだが、弾薬庫(貯蔵庫と称しているそうな)がやたらデカい。小西氏も佐渡なんかのレーダーサイトで勤務していたのだが、弾薬庫は10坪ほどだったそうな…すなわち、大きな弾薬庫は、将来の増備あるいは戦時に備えた物資の事前集積のためであると断言する。

 さて、本書では自衛隊の南西諸島方面への配備計画と、その背景にあるものの考察、および「島嶼防衛戦」構想の批判…これは現地で自衛隊配備に反対している人の論理にもつながる…の書である。
 南西諸島への配備計画そのものは、防衛相の中期防衛計画(pdf) の25ページ目ぐらいを見ていただくとして、その構想がいつ、どのように出てきたのか?ということを書いていこう。

 冷戦終了後、97年に日米安保のガイドラインが改定される…我々はこれを「朝鮮侵略戦争準備」ととらえ、ガイドライン改定反対―周辺事態法成立阻止を闘ったわけだが、実はそれだけでなかった。この「安保再定義」で範囲が「極東」から「東アジア」に拡大されたことは、「台湾海峡有事」を見据えた「中国脅威論」がそこに織り込まれていたのである。もっとも冷戦期に「中国脅威論」がなかったわけではないが、中国の軍事力が陸軍中心であり、また冷戦後半は中国も「対ソ包囲網」に組み込まれていたから、それは自然に消滅したのである。
 2000年1月に自衛隊の「野外令」が改定される…「野外令」とは旧軍の「作戦要務令」にあたるものだそうだが、この「改定」でこれまで隊内の売店で一般人も購入できた「野外令」が機密扱いになったとともに、内容も充実するとともに、ここで初めて冷戦後の新任務「離島に対する単独侵攻の脅威に対応するため、方面隊が主作戦として対処する要領を、新規に記述した」とのこと。ここに離島防衛作戦に「事前配置による要領」と「奪回による要領」の2つを日米制服組による冷戦後の新たな日米の戦略として打ち出した。
 2004年に防衛計画の大綱がまとめられ、公式に「島嶼部に対する防衛」が上げられるとともに、2005年の日米合意文書「日米同盟未来のための変革と再編」(沖縄基地に関する再編実施のための日米ロードマップ)において、初めて「中国の脅威」が取り上げられた。

 一方、米国のほうは、4年ごとの防衛計画見直し(QDR)を行う中、2010年に「エアシーバトル構想」を打ち出す…米国の「中国脅威論」は、2006年QDRの時にも見られたが、その時は「対テロ戦争」のイラク・アフガニスタンで手が一杯だった…撤退がみえてきた2010年ごろに、「中国脅威論」が出てきたわけである。「エアシーバトル構想」は中国の対艦・対空ミサイルを「無効化」するわけであるが、これは中国の内陸、司令部機能まで攻撃をするというものであり、必然的に核戦争につながる恐れもある…ということで、「オフショア・コントロール」という、米軍と同盟国の軍事力で中国を「経済封鎖」するとともに、軍艦・商船を沖合で破壊するというものに「修正」される…この「戦略」でも、「核戦争」に発展しない保証はない…

 この米軍の戦略に基づいた「島嶼防衛戦争」は、必然的に、いわゆる「第一列島線」(琉球弧のライン)から中国軍を出さないことにつながり、与那国島や宮古島、石垣島島の「海峡」を自衛隊の力で封鎖することになる…これを小西氏は、冷戦時代の「シーレーン防衛」で出てきた「(宗谷・津軽・対馬)3海峡封鎖」の焼き直しと捉える(続く)

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