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トランプ政治はボナパルティズム?

 米国で新たに大統領に就任したトランプ氏の政治について、面白い見解が出ていたので紹介する。BLOGOSの記事『月刊日本』編集部…佐藤優 トランプの正体(上) である。なお、「月刊日本」は、保守派の雑誌だが「諸君」「正論」のような歴史修正、大日本帝国万歳雑誌とは少し違うようだ。

記事中から…
佐藤 トランプは経済に関しても表の世界と裏の世界を仕分けると思います。トランプは表向きは「アメリカファースト」として製造業重視の姿勢を見せていますが、実際には新自由主義的な政策を行うはずです。
 現に、トランプは大統領選中にウォールストリートを批判していましたが、その一方で金融規制の緩和を進めると言っています。アメリカはリーマンショック以降、金融資本に対する規制をかなり強化しました。しかし、客観的に見れば、アメリカの富を増進させるには、金融規制を緩和するしかありません。いまアメリカ発の好況が生じているのも、規制緩和への期待感からです。その意味で、トランプは完全に金融資本を味方につけたと言えます。
 しかし、トランプが金融規制を緩和すれば、製造業は弱くなり、格差はさらに拡大します。それはアメリカ国民には受け入れられないことです。その事実をごまかすために、トランプはフォードやトヨタなどに圧力をかけているのです。フォードがアメリカ国内で工場を作っても、それによって確保される雇用はわずか700人ほどです。しかし、その成果を大げさに宣伝することで、あたかも労働者のための政策を行っているかのように見せかけ、国民を欺瞞しているのです。
 これはフォードにとってもトータルとしては不利益になりません。金融規制が緩和されれば、フォードも株式や債券を運用しているため、金融面で儲けることができます。トランプはフォードにメキシコの新工場について譲歩させましたが、裏ではこのような形で見返りを用意しているのです。
 もちろんトヨタも一緒です。もしトヨタがトランプの言うことを聞かなければ、ピンポイントでターゲットにされると思います。しかし、言うことを聞けば、トヨタも株式や債券の運用をやっているわけですから、見返りを得ることができます。
 そういう意味では、トランプの手法は、マルクスが『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』の中で指摘している「ボナパルティズム」です。フランスの第二共和制では、政治的実績のない自称ナポレオンの甥という男が、社会的に弱い立場にいる分割地農民から圧倒的な支持を得て大統領に当選し、ついには皇帝ナポレオン三世を名乗るまでになりました。
 しかし、彼は決して分割地農民たちの利益を代表していたわけではありません。それにもかかわらず多くの支持を得ることができたのは、分割地農民の代表であるかのような表象を作り出すことに成功したからです。これがボナパルティズムの核心です。
 トランプは今後もボナパルティズム的な手法を駆使して国内を統治していくはずです。資本家は権力にアクセスする手段をたくさん持っているため、資本家の利益と完全に反するような政治を行うことはできません。しかし、国民の支持を得るには、部分的に資本家の利益に反することもしなければなりません。
 そのため、今回はこの資本家をいじめる、次回はこの資本家をいじめるといったように、その時々にしかるべき資本家をターゲットにしていくでしょう。これはロシアの政治とよく似ています。

 ロシアの政治に似ているかはともかく、トランプ政治はボナパルティズム的であるということ…もっと言うと、いくら彼が「(アメリカの)国民が第一」と、反グローバリズム、反新自由主義的なことを言ったり、公約したとしても、裏では「金融資本」と結びついているので、その利益に反することは絶対できないということだ。よって彼を「反グローバリズム」「反新自由主義」の旗手として評価することは間違っているのである。

 ここで「ボナパルティズム」について補足しておくと…もともとは「熱烈なナポレオン主義者」を示す言葉なのであるが、佐藤氏も指摘しているよう、マルクス主義の用語(といっても、今この用語を使っているのは、革共同の一部の人に限られる)であり、「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」の時代…1848年2月革命において、階級対立が拮抗し決着がつかない「危機」の時代に、超階級的なもの(フランスの場合、ナポレオン・ボナパルトのカリスマ性)を掲げて、階級の上に君臨することで危機を乗り切ろうとすることを言う。

 「超階級的なもの」とは日本の場合は天皇制になり、トランプ大統領の場合は「アメリカ国家」である。ただ、多くの資本主義国家では「超階級的なもの」やイデオロギーが見いだせないケースも多いので、漠然と「国家」や「民族」を掲げることになる…ボナパルティズムが成立するためには、トランプ氏がやったように、より煽情的に「国家」や「民族」をうち出さないといけない…手法は「ファシズム」に近いやり方で「ボナパルティズム」が成立することになるわけだ。

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