矢部宏冶の「修正9条」も難しいのに…
先日のエントリーで、矢部宏冶氏の「日本はなぜ『戦争ができる国』になったのか」のレビュー
先人の残した「歴史」を尊重し、大幅な改変を伴わない「アメリカ型」の「修正条項追加」方式 というのを紹介した。矢部氏の具体的な提案を紹介すると、次のようになる。当該図書のp305
日本国憲法 第9条
(1項)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に布告し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
(2項)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
(修正1条)国際連合による日本およびその周辺の平和と安全のための措置が効力を生じるまで、敵の侵略を自国の施政下の領域内において撃退するための最小限の軍事力と交戦権は保持する。
(修正2条)2025年以降、自国の領域内における外国軍基地、軍隊および施設は許可しない。この改正された憲法の規定に反する他国との取り決めはすべて破棄する。そのための憲法判断は最高裁判所がおこなう。
(修正3条)核兵器の製造、保有、自国の領域内の通過と、原発の稼働は許可しない。
矢部氏の意見では、9条の非武装は戦後発足した国連による「国連軍構想」が担保するものであるから、修正1条はその国連軍がきちんと働くようになるまで、個別的自衛権とそれを担保する軍隊は認められるというもの。修正2条は日米安保の破棄もしくは駐留なき安保とするもの、修正3条は、原発問題もからめた核と安全保障の関係を規定するものである。
修正1条を実行するにおいても、現行の「集団的自衛権」の一部を認めた現政権を否定しなけれなばらない。また国連PKOのように、自衛隊が国外で活動することは想定していないので、それを20年以上続けてきたことを総括し、否定する必要がある。
修正2条実現のためには、日米安保体制の見直しが求められる…修正3条は脱原発宣言である…いずれにしても、矢部「修正9条」を実現するためには、かなり「革命的」な政策、政権でないとこれが出来ないのである。
そのような政権を打ち立てる力関係も持ちえないまま、安倍の提案する「修正9条」に乗っかってはイケナイことは、言うまでもない話であろう。
安倍修案だったら、修正条項に「最低限の軍事力と自衛権保持」と書き加える…加えてしまえばあとは野となれ山となれ…「最低限」の歯止めはナシ、「自衛権」は集団的自衛権も含むから、対米関係も今のまま、果てはもっと「米艦防護」や「米軍支援」「共同作戦」もドンドンやれる…とゆうふうになる。修正条項の「書き方」については「議論してけっこう」…ただし力関係において、安倍「修正案」が通るのである。
くれぐれも警告しておこう、安倍「修正条項」発言を受けて、「修正9条」や「新9条」の議論を持ち込んではイケナイ…憲法の「条文」変更は、革命的な政治変革(安倍はそれをクーデター的に行おうとしている)が起こらないと、その政治変革にみあった形での「条文」なんて出来ないのである。
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