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ポピュリズムについて考える(前篇)

 アメリカのトランプ大統領、フランス国民戦線マリーヌ・ルペン、東京小池都知事「都民ファースト」そして大阪橋下「維新」など、「既存政治を批判する」右派潮流の躍進が著しい。こういった政治党派や政治家達は「ポピュリズム」「ポピュリスト」としてくくられることが多いが、そもそもポピュリズムとは何だろうか?

 「ポピュリズム」は「大衆迎合主義」と一般的に訳されている。一見すると「大衆」に「迎合」してくれるので、民主主義的で、私たちの利益をかなえてくれそうだ。19紀末から20世紀初頭にかけて、アメリカに「アメリカ人民党」(PeoPle Party)という政党があり、ポピュリスト党(PopulistParty)と呼ばれていた。これが「ポピュリズム」の始まりとされている。
 アメリカ人民党は資本主義社会が発展する南北戦争後のアメリカ社会において、社会的に不満を高める労働者・農民層の支持を取り付けた。累進課税、鉄道や電信電話事業のS_0001_2


公有化、企業による農地所有の制限、労働規制の強化など、当時としては「先進的」な主張を掲げ、連邦議会や州議会で議員を獲得している。
 またラテンアメリカでは1930年代以降、大地主や鉱山主などの寡頭支配に対抗し、中間層や農民など多様な支持層を背景にポピュリズムが台頭、躍進した。アルゼンチンではイタリア・ファシズムに感化されたファン・ペロンという軍人が、賃上げ奨励、労働者保護立法、年金・医療・休暇施設の福祉充実といった労働福祉政策や産業政策を掲げて大統領に当選している。ペロンの政策は「ペロニズム」と呼ばれ、ラテンアメリカのポピュリズムの典型とされている。このようにポピュリズムは「左派的」「分配重視的」なものとして始まっているのである。
 
 ポピュリズムの特徴としては、主張の中心に「人民」を置くこと、「人民の意思」を体現する代表として自らを表す…その手段として「民主主義」における選挙や多数決原理、さらには住民投票などの「直接民主主義」的手法を最大限活用する。また既存政治、政治家や「エリート」批判、タブー破りを行い「敵を設定してそれを叩く」ことも特徴である。これは既存政治・政党の掲げる主張に不満を持ち、ともすれば政治から距離を置く人々の心をとらえ、政治に参加させるという意義も持つ。ただし、ポピュリズム政党が目指す人民の政治参加は、あくまでも「選挙での投票行為」のみを目標としており、具体的に人民・民衆が「統治に参加する」ということは想定していない。徹底的に「代行主義」なのだ。また政策を実現させるに当たり、民衆の「大衆運動」に必ずしも依拠しない…ラテンアメリカのポピュリズムはそれでも、政治家がバルコニーから呼びかけ、それに民衆が喝さいを送るという構図があるが…民衆の不満をすくいとり、メディア(現代ではインターネットも)を駆使して民衆に呼びかける手法は似ていても、「大衆運動」や「集会」(さらには疑似革命としての実力行使)を重視するファシズム運動とは異なる。  
 また「民主主義」社会は、選挙で体現される「人民主権」だけでなく、「法治主義」「立憲主義」という側面も持っている。要するに選挙や多数決原理だけでは、少数派や多様な価値観を尊重することが難しい、「選挙で選ばれた政治家」も、無茶してはいけませんよという歯止めである。しかしポピュリズムは「人民主権」を重視する一方、法治主義や立憲主義はしばしば「既存政治」や「エリートの既得権」として批判の対象とされる。トランプや橋下のようなポピュリスト政治家が行政権力を取ると、しばしば無茶をして暴走するのはこのためである。

参考文献:ポピュリズムとは何か?民主主義の敵か、改革の希望か 水島治郎 中公新書2016年12月

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