ソウルから学ぶ非正規職の撤廃
未来第228号 に「ソウルから学ぶ大阪の未来 ”都構想つぶせ”市民が学習会」という記事がある。7月13日に開かれた「韓国ソウル市から学ぼう!大阪のあり方を問う学習集会」の報告だ。その中に在日韓国研究所代表 金光男(キムクァンナム)さんの講演、「朴元淳ソウル市長が進める地方自治」の要旨が掲載されている。なお、金光男さんはこの集会で自らも報告する傍ら、メインゲストの安珍傑(アンジンゴル)さんの通訳も務められている。
この講演要旨のうち、ソウル市が実施した、非正規労働者の正規化にまつわる部分を抜粋して紹介しておこう。
非正規職の撤廃
ソウル市は「労働尊重都市」を宣言し、非正規職の正規職転換に取り組んだ。これによって、いまでは職員の5%だけが非正規職というところまできた。この政策は、3段階にわたって実施された。
第1段階では、12年3月22日に「公共部門非正規職の正規職転換計画」(第1次)が発表され、期間制の直接雇用非正規職のうち2年以上常時勤務し、持続的業務に就いている者が正規職に転換された。また、転換対象から外された者の待遇改善がおこなわれた。
第2段階としては、12年12月5日に「第2次非正規職雇用改善対策」が発表され、清掃・施設管理・警備など、人材派遣会社から派遣されている間接雇用労働者(5953人)の直接雇用・正規職転換をおこなった。正規職転換がおこなわれれば、人件費がアップして財政を圧迫するというのが「通説」だが、ソウル市では、7千人以上を正規職に転換したにもかかわらず、人件費は圧縮された。確かに人件費は16%増えたが、それまで派遣会社に支払っていた経費より31%減少させることができた。64億ウォンの予算節減効果が発生した。
朴市長は、人間らしい生活が基本であり、人間らしい労働の常識を取り戻すのがソウル市の労働哲学だと明らかにした。
3段階目の正規職転換。16年5月28日、ソウル地下鉄の駅ホームで安全ドアの作業中だった派遣会社職員が、列車とホームドアに挟まって死亡するという衝撃的な事件が起こった。この事故を調べると、ソウル地下鉄公社が子会社を作って、故障発生時に業務を派遣会社に依頼していた。子会社は、地下鉄公社幹部の天下り先。市長は謝罪するとともに子会社の解散と安全業務に携わる職員を全て正規職に転換するように命じた。
ソウル市は、16年8月11日に「ソウル特別市労働革新総合計画」を発表した。①非正規職比率(現在は5・4%)を18年までに3% 以下に削減する、 ②常時持続業務や生命・安全と直結するすべての業務を正規職化する、③「非正規職採用三大原則(2年以下の短期+例外的+最小化)」を徹底的に適用する、④民間委託の正規職化拡大である。すでに、水道の検針員を直接雇用に転換した。
このように、ソウル市では多くの非正規公務員労働者を「正規化」させると同時に、市の経費も削減している。97年アジア通貨危機の直撃をうけた韓国は、IMFの管理下におかれ、構造改革路線を強いられた。これが非正規職の増大を起こす。若者にまともな職が無く、「ヘル朝鮮」あるいは「3放(恋愛・結婚・出産をあきらめる)」「5放(さらに就職・マイホームもあきらめる)」ような状況に陥っていた。これを改め、非正規職を正規職に転換しているのである。
ソウル市長、朴元淳(パクウォンスン)氏は韓国の市民運動団体「参与連帯」の創設メンバーでもある。そして、民衆革命から生まれた文在寅(ムンジェイン)大統領は、非正規職の正規化を掲げ、それを実行しようとしている。
韓国のたたかいに学び、日本においても大規模な非正規職の正規化を勝ち取ろう
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