土砂崩れで高速道路の橋がふっ飛んだ話
この度西日本を襲った豪雨災害…雨は止んだとはいえ、あちこちで甚大な被害が出ており、道路が通行止めで孤立している、水道等が復旧しておらず、避難を続けている人がまだたくさん居られます。犠牲者も沢山出ました…被害にあわれた皆様には心よりお見舞い申し上げます。
この災害に置いて、安部が災害対策本部も立ち上げず、飲み会を開いていた とか、オスプレイを17機買う金で、レッドサラマンダーを各県に何台も配備出来るとか、いろいろあるんだけれど…そうゆうのは他のブログさんに任せよう。
私が気になったのは、次のニュースと写真…毎日新聞の8日夜の配信記事
高速、47カ所でのり面や橋の崩落など被害を確認
西日本を中心とした豪雨で、西日本高速道路の管内では8日午後5時現在で近畿、中四国、九州の47カ所でのり面や橋の崩落などの被害が確認された。うち7カ所は復旧までに相当な時間がかかるという。JR西日本と四国の管内では、橋脚の流出などで不通区間が発生している。(中略)
高知自動車道大豊インターチェンジ(IC)-新宮IC間の上り線にある立川トンネル南側付近(高知県大豊町)では道路脇の斜面が崩れ、路面が長さ約63.5メートル(約1200トン)にわたって崩落した。高知県によると、下を走る県道と林道が封鎖されたため4集落の49世帯72人の孤立状態が続いているという。高速道と県道は6日夜から通行止めで、けが人はいなかった。(以下略)
リンク先に写真が載っているが、土砂崩れによってトンネル手前の橋梁が完全に吹っ飛んでいますうわぁ~怖ぇ~
なぜこの記事が「気になった」かというと、道路の防災上、「土砂崩れ」対策として橋梁を選択するケースがあるというのが、教科書的なお話だからである。以下、説明しよう。
なお、ここから一般的に「土砂崩れ」という言葉は、土木や他の学術的な用語である「土石流」と呼ぶことにする。
上図のように、斜面の裾野に道路を通す計画があるとする。青の点線は渓流である。この渓流に沿って、大雨が降った場合、土石流が発生する可能性がある。
道路を盛土構造で作った場合、渓流の水はカルバートボックス(函渠)を作って下流に流すことになる。しかしカルバートボックスでは発生した土石流が流れ切らず、道路に乗り上げて来る恐れがある。
こうなっちゃうわけですね。土石流が道路の上に乗りあげると、その土砂を除けない限り、通行止めを解除できないリスクが存在するわけ。
そこで、土工の代わりに橋梁構造にすると…
下のクリアランスが大きいので、土砂が下を流れることになる。道路上には溢れて来ないので、通行止めのリスクが小さくなるわけ。
これが土石流(土砂崩れ)対策で道路構造を橋梁にする話の基本である。
もっとも今回の高知自動車道のケースは、急斜面の途中にトンネルをぶち抜いた形になっているから、土石流があろうがなかろうが橋梁形式になっていた箇所である。トンネルの坑口上部からの土石流は、巨大な防護壁をつくらない限り、防ぎようがない。今回は斜め横から土石流が橋を直撃し、そのまま橋が持って行かれた…多分、こうゆうことは想定していないだろう…ひとたまりもなくやられている。
急斜面の横に道路や鉄道を通す場合、土工では土の切り盛りが膨大になるので、建設費がかかってもトンネルや橋梁にするケースも多い。トンネルはともかく、橋梁設計で横から土石流が襲ってくることはほとんど想定しないから(河川中の橋梁の場合、洪水時に例えば木が流れてきて引っかかる荷重を想定するケースはある)、今後の道路・橋梁設計や道路防災における見直し事項になるであろう。
ではでは
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