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新・日本の階級社会(その2)

 それでは各階級にどのくらい人がいるのか?経営者・役員と自営業主・家族従業者は従業員数5人以上を資本家階級、以下は旧中間階級と分類し、管理職・専門職は新中間階級、事務職は男性の正規従業員のみを新中間階級とし、女性および非正規は労働者階級とした。リタイヤした無職の人々を除外して「平成24年就業構造基本調査」からはじき出した日本の階級構成は、資本家階級 4.1% 新中間階級 20.6% 労働者階級 62.5%(正規労働者35.1% パート主婦12.6% その他非正規14.9%…非正規労働者が労働者階級の4割以上)旧中間階級12.9%となる。橋本氏は非正規労働者のうち、パート主婦(配偶者の階級によって帰属階級意識等が変化する)を除いた人たち(男性と非配偶女性)を「アンダークラス」と位置付けてる。これを示したのが図表2-4だ。
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 「国勢調査」の結果から、各階級(ただしアンダークラスは分からない)がおよそどのような割合で推移していったかが分かる。1950年代の日本では、旧中間層が6割近く、巨大な農業国であった。60年代初めに旧中間階級と労働者階級の数が逆転し、資本家階級は95年まで急速に増加した。95年以降、増加を続けていた資本家階級と新中間階級が減少に転じているが、これは零細企業の廃業、正規雇用の縮小、管理職の減少と非正規への置き換えが進んだためである。2010年は福祉・医療分野の下級専門職の増加で新中間階級が回復傾向にあった。ここで新中間階級に「下級専門職」が含まれていることは注視しておこう。
 本書で紹介される各階級のプロフィールは次のとおりである。
(1) 資本家階級…254万人
 個人平均年収604万円(従業員30人以上では861万円)、世帯平均収入は1060万円(同1244万円)、家計資産の平均額は4863万円と収入・資産とも多く、経済的に恵まれ、満ち足りた生活を送りっている。自民党支持率が47.4%と高く、政治的には保守的。
(2) 新中間層階級…1285万人
 個人平均年収499万円、世帯平均年収は798万円、家計資産の平均額が2353万円である。高等教育を受けた人の割合が61.4%と教育水準が高く、情報機器を使いこなし、収入もかなり多く、豊かな生活をする人々。自民党支持率は27.5%で、必ずしも政治的に保守的というわけではない。
(3) 正規労働者…2192万人
 個人平均年収370万円、世帯平均年収は630万円、家計資産の平均額が1428万円である。それなりの所得水準と生活水準を確保して、おおむね生活に満足している階級。自民党支持率は24.1%。
(4) アンダークラス…929万人
 個人平均年収186万円、世帯平均年収は343万円、家計資産の平均額が1119万円である。所得水準、生活水準が極端に低く、一般的な意味での家族を形成・維持することからも排除され、多くの不満をもつ、現代社会の最下層階級 男性は有配偶者が少なく女性は離死別者が多い 自民党支持率は15.3%と各階級で最低である。
(5) 旧中間層階級…806万人
 個人平均年収303万円、世帯平均年収は587万円、家計資産の平均額が2917万円である。自民党支持率は35.5%と高く、政治的には保守的だが、民主党(当時)支持率が6.8%、共産党支持率が3.3%と最高になってもいる。規模の上で縮小傾向を続けるなかで衰退に向かい、その政治的性格を変えつつある。

 父親が資本家階級である人が、資本家階級では28.5%存在する。人々が父親と同じ階級に所属しやすいという事自体は、他の階級も変わらず、階級間には世襲的な傾向が存在する。
_0001  育った家庭の環境の調査で、家に本が少なかった(25冊以下)は、新中間階級31.1%、正規労働者48.4%、アンダークラスでは53.7%ある。本に親しむような文化があったかどうかが、所属階級の違いを生んでいるようだ。またアンダークラスでは、最終学歴を中退した人が多い。学校中退が、安定した職の確保に大きくマイナスに働いていると考えられる。
 卒業後すぐに就職した人は、新中間階級87.2%、正規労働者88.0%、アンダークラス66.7%となっている。新規学卒一括採用の慣行が強い日本において、学卒後すぐに就職しない(できない)ことが、後々まで影響を及ぼしている。
 またアンダークラスえは、学校でいじめを受けた経験をもつ人の比率が高い(資本家階級で8.3%、その他の階級で十数%、アンダークラスでは31.9%)いじめや不登校の経験は、アンダークラスへの所属と結びついているようだ。
 健康状態の調査によって、高収入の資本家階級は高脂血症・高コレステロール血症の診断や治療をうけたことのある人が多いのに対し、アンダークラスでは少なくなっている。一方、アンダークラスは「抑うつ傾向」が突出している。

 「資本家階級」対、「他の3つの階級」という対立構造があると言えるが、「他の3つの階級」間の差は大きいことが分かる…労働者階級の内部に大きな格差が生まれ、正規労働者とアンダークラスの異質性…安定した生活を送り、さほどの強い不満もなく、満足や幸せを感じながら生きることのできる人々と、これができない人々との違いである。
「だとすると、いまや資本家階級から正規労働者までが、お互いの対立と格差は保ちながらも、一体となってアンダークラスの上に立ち、アンダークラスを支配・抑圧しているといえないだろうか。これは、いわば四対一の階級構造である。」
 「アンダークラスは社会の底辺で、低賃金の単純労働に従事し、他の多くの人々の生活を支えている。長時間営業の外食産業やコンビニエンスストア、安価で良質の日用品が手に入るディスカウントショップ、いつでも欲しいものが自宅まで届けられる流通機構、いつも美しく快適なオフィスビルやショッピングモールなど、現代社会の利便性、快適さの多くが、アンダークラスの低賃金労働によって可能になっている。しかし彼ら・彼女らは健康状態に不安があり、とくに精神的な問題を抱えやすく、将来の見通しもない。しかもソーシャルキャピタルの蓄積が乏しく、無防備な状況に置かれている。他の四階級との間の決定的な格差の下で、苦しみ続けているのがアンダークラスなのである。この事実は、重く受け止める必要がある。」(p113~114)と筆者はまとめている。

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