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新・日本の階級社会(その5とまとめ)

 いよいよ「新・日本の階級社会」の長いレビューの終章である…

 格差が広がり、階級が固定化することは大きな弊害が伴う。生存権を保障されず、家族を形成する機会すら得ることができない人々が多数存在することは倫理的に看過できることではない。格差が大きい社会ほど、平均寿命が短くなる傾向があり、税を払うことのできない人が増大すると同時に社会保障支出が増大する。また、格差の固定化とは、貧困層の子どもが教育を受ける機会が奪われることであり、社会的損失である。
_0001  筆者は階級を無くすことは不可能かもしれないが、階級間の格差が小さなものになり、自分の所属階級を自由に選ぶ可能性が広がれば「無階級社会」とはいえないが「非階級社会」を作ることが可能だろうと説く。

 格差の縮小のためにはさしあたって
(1)賃金格差の縮小…均等待遇の実現・最低賃金の引上げ・労働時間短縮とワークシェアリング
(2)所得の再分配…累進課税の強化・資産税の導入・生活保護制度の実効性の確保・ベーシックインカムの導入
(3)所得格差を生む原因の解消…相続税率の引き上げ・教育機会の平等の確保 これらの政策が候補として上げられる。このような政策を実行してゆくにはどうすれば良いか?
 格差拡大を認識している人ほど所得再配分を支持する傾向が高く、自己責任論の立場に立つ人ほど所得再配分を支持しない。新中間階級は強固に、資本家階級と正規労働者はやや控えめに、所得再配分に否定的な傾向が強い。一方、パート主婦、専業主婦、旧中間階級、無職の人々、アンダークラスの人々は所得再配分を支持する傾向がある。このように所得再分配に対する合意形成への有効な道筋は、階級・グループによって異なる。 そこですべての人々、とりわけパート主婦や専業主婦たちの間に、格差が拡大し貧困層が増大していることは紛れもない事実であり、これが多くの弊害をもたらしている点についての共通認識を形成すること、また所得再分配に合意しにくい新中間階級と正規労働者に向けて、自己責任論はまやかしであり、間違っていると説得することが必要になってくるのだそうな。
 現在の調査では所得再分配に否定的な新中間階級も、かつては政治意識が高く、格差の現状に批判的で、所得再配分などの格差是正政策を支持する傾向がある程度まで高かった。また平和運動や反公害運動、最近では反原発運動や安保法制反対運動でも中心的な役割を担ってきたのは高学歴な新中間階級であった。だから現在の新中間階級に期待できる部分がないわけではない。格差拡大を認め、自己責任論を否認し、所得再分配を支持する傾向が強い「リベラル派」と分類されるべき人たちが、新中間階級の中で46.8%ぐらいは居る。もし格差社会の克服を一致点とする政党や政治勢力の連合体が形成されるなら、その支持基盤となる階級・グループはどこか?アンダークラス、パート主婦、専業主婦、旧中間階級、そして新中間階級と正規労働者のなかのリベラル派である。一見すると多様で雑多な人々を、格差社会の克服という一点で結集する政治勢力こそが求められるのである…と橋本氏は結論づけている。
 すなわち現代に求められる政治勢力は、資本家階級のイデオロギーや利害に立脚した自民党やその亜流の保守政党ではなく、他の階級の利害に立ち、階級格差を縮小していく(それは軍備重視を止め、多様性も認めるような)政策をとる「新しい政党(政治勢力)」なのである。
 ぶっちゃけた話、「維新」や「国民民主党」のような「保守」を標榜し、自民党との違いが分からないような政党はいらないということだ。また、それに答えられるのは誰か?何処か?ということが問われているのだ。

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