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資本主義と一党独裁は矛盾しない

 先日、ある場所にて「中国共産党の”一党独裁”が崩れないなぁ~…下部構造は完全”資本主義”なのに…」なんてことを言う人がいた。そこで、こう答えておいた。
 「資本主義であっても、”一党独裁”とは矛盾しない。むしろ”一党独裁”で労働者民衆をおさえつけるから、資本主義は発展するし、”資本家”もそれを望むことになる」と…

 下部構造がある経済体制、たとえば「資本主義社会」になったら、上部構造がそれと一対で、たとえば「議会制民主主義」になるわけではない。

 資本主義が発展しつつあった18~19世紀において、力をつけてきたブルジョワジーが、当時の支配体制であった絶対王政、封建諸侯や宗教勢力と対抗するために創り出した制度が、「ブルジョワ民主主義」「議会制民主主義」である。それらを獲得するため、ブルジョワジーは「革命的」に闘ったし、一般民衆(農民や職人、萌芽的なプロレタリアート)を巻き込み、動員もした。
 だが資本主義社会が進むにつれ、ブルジョワジーが完全に権力を取らなくても、封建的な社会関係を解体させることが出来るようになった。典型的な事例が、日本の「明治維新」である。日本の場合、内在的に資本主義社会に移行するポテンシャルは持っていた(それゆえ明治維新後、急速に資本主義化が進む)ものの、ブルジョワになるべき”豪農””豪商”たちが積極的に自らが「民衆を支配しよう」とする思想を(たとえ欧米からの借り物であったとしても)持つことが出来なかった。それゆえ封建支配を担っていた武士集団が起こした「明治維新政権」にヘゲモニーを任さざるを得なくなる。「明治維新政権」がその後、「天皇制絶対主義」となって、ブルジョワジーを上から育成し、資本主義が発展することになる。
 ここで明治維新後の政権を「天皇制絶対主義」と規定した…封建的な諸制約を撤廃して、西欧の法律や諸制度を導入し、上からの「資本主義」を推し進めるにあたって、中央集権で天皇が強い権限を持つ体制は「効率」が良かったであろう。ただし、西欧の諸世界に見られた「絶対王政」(中世の封建的支配関係が行き詰まる中、一定の「王権」に権力が集中したもの)とは、成立条件も中身も違うのである。
 西欧の法律や諸制度を導入し…と書いたが、議会制民主主義や人民の「権利章典」を完全に導入したわけではない。だが民衆を押さえつけ、権利意識を眠り込ませることで、資本がより効率的に搾取することが可能となる。被差別部落などの封建的桎梏が残存しても(「解放令」は被差別部落からも平等に税金を取るためのものであった)、かえってそこに下層労働者をプールすることが出来る。別に「完全な民主主義」が無くても、一定の範囲で統一的な法の下で、市場が成立し、対外的にも開かれていれば、資本主義は発展するのである。
 戦前にあった「日本資本主義論争」は、明治維新を絶対主義とみるか、ブルジョワ革命とみるかの論争で、さらに「ブルジョワ革命」を経ずして日本は資本主義社会たり得るのか?という「ドグマ」にとらわれたものであった。日本の場合、明治維新後、「絶対主義」として始まった天皇制国家が上からブルジョワ化を推し進め、資本主義社会を成立・発展させることができたのだ。だから「ブルジョワ革命」抜きに、資本主義社会が成立している。
 中国の場合はどうか?1950年の中国革命により、半植民地で封建的支配が思いきり残っていた中国は、ソ連式の「共産党の指導」に基づく計画経済社会体制をつくる。中国の民俗ブルジョワジーは、海外に逃げ出すか、国内で細々と生き残るしか道はなかった。だが、計画経済社会体制はゆきづまり、「改革・解放」路線に進む。外国から資本を導入し、上からの「資本主義化」を推し進めるが、「共産党の指導=一党独裁」をそのままであっても、民衆を押さえつけ、権利意識を眠り込ませて、資本がより効率よく…西欧の資本主義国家よりも…搾取することが可能になる。共産党が気を付けるのは、資本の自由を邪魔することだけでよいのだ。

 日本や中国の「ブルジョワジー」は、(現代の世界ではどこでもそうなのだが)「革命的」ではもはやないし、完全な民主主義や権利章典を獲得しようなんぞ、絶対に考えない。日本や中国(そして世界全体でも)で、完全な民主主義を導入するための革命の主体は、次の階級・プロレタリアートであり、ブルジョワジーではない自営の農民、民衆なのである。

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