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MMTよりアナキスト!

 「そろそろ左派は<経済>を語ろう」シリーズ…先日は「独自の通貨を持つ政府は、政府債務残高がどれだけ増加しても問題はない」理論根拠、MMTを紹介 したわけだが、ホントに左翼であれば「借金しても大丈夫」ではなく、「借金は踏み倒していいんだ!」というほうがより「かっこいい」だろう。ブレイディみかこ氏の発言を紹介する。
_0001_5  「松尾さんって日本だとなんか「異端」みたいに言われているのを時折ネットで目にしますが、欧州だと超「普通のレフト」です(笑)。緊縮は本当にヤバイという松尾さんが抱いている感覚が、欧州には地べたに転がってますからね。
 わたしはアナキスト系のお知り合いもけっこういるのですが、「債務を帳消しにしろ!」「借金なんて踏み倒せ!」っていうのは一種のアナキストでもあります。実際、欧州の反緊縮運動はアナキストが引っ張って来たという側面もあります。アナキストっていうのは別に貯金とかなくてもぜんぜんいい人たちだから、みんな「財政黒字とか、国が人から集めたお金を貯金してどうすんだよ」とか言ってるし(笑)。(p125-6)」
 で、民進党代表(2017年当時)の蓮舫氏が「財政均衡を憲法に入れたい」などと述べたことを批判して、こう続ける…
「緊縮憲法とか提案している人たちもわかっているだろうから、別のアジェンダがあるんだろうなと思います。クルーグマンも書いていましたが、「借金を返す」というお題目が、「小さな政府」にして新自由主義を進めることのもっともらしいエクスキューズになるんです。だからアナキストは「借金なんか返すな!」とアジってるんです。そもそも借金を返すのが目的の国って何なんですか。それを「財政規律」だとか…アナキストは「規律」とかも大嫌いですからね(笑)。本当に、日本では左派がものすごくまじめで、「財政を健全化しないと」って言われると、そうか、それが正しい人の道だよな、と素直に思うから反緊縮運動が盛り上がらないのかなと。アナキストは、「道徳なんかぶっこわせ!」っていう人たちだけど、日本だと「道徳的に生きることが左派の道なんだ」って思われている。(p127ー8)」

 日本の左派が道徳的であるかはともかく、例えば自民党の「金権政治」や「政財官の癒着」…さらには「忖度政治」を批判するにあたって、彼らより「道徳的」にならないといけないという側面はあるだろう。だけど、「借金なんか踏み倒せ!」なんてアジは、なかなかしなかったなぁ~…おお、そうじゃ!80年代「国鉄分割・民営化」が臨調・中曽根行革という新自由主義政策のメインに掲げられたときは「国鉄は赤字でいいんだ!」と訴えていたと思うぞ。別に(ブルジョワ)国家が赤字で倒れてもいいんだ!と開き直っていた…そうか、そうゆう「開き直り」を許さないのも「国鉄分割・民営化」攻撃の目的であったんだなぁ~。
 で、次の章(補論1 来るべきレフト3・0に向けて)の中で、ブレイディ氏らの対談は、イギリス・ブレア政権の「ニュー・レイバー」下でのアナキストの状況にも触れられる。曰く、「アナキストの「自律」志向がブレア流の「第三の道」ではうまいこと市場原理を補完するものにされてしまった。(p144 松尾氏)」と…「国なんかいらない、仲間同士でやっていける」という主張は、「小さな政府」と意外と相性が悪くなかったのである。ひゃー…ブレイディ氏も続けて「そうなんです。わたしは、そこにはちょっとアンビヴァレントな気持ちを持っていて、「政府に頼らずに仲間をつくってやっていける人たちはいいけど、できない人も現実の世界にはいるよね」って思います。それに、勤めていた託児所が緊縮財政で潰れましたから、仲間同士でやっていくことの限界も体験しました。(p144₋145)」
 このブレイディ氏の体験は、安易に「生産協同組合」が成り立つことは難しいということも示しているのだが、もし「借金なんて踏み倒せ!」で外の経済が壊滅した場合は、これでやるしかない!というのも事実である。

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