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デフレの原因は流動性志向、貨幣の物象化もろもろ

 松尾匡ら「そろそろ左派は…」の論考の続き…本書の終わりのほうは補論②新自由主義からケインズ、そしてマルクスへと題されている、そこでなぜデフレになるかという話がありまして。
_0001_6松尾 しかし、90年代頃からケインズの読み直しが進みました。そして、ケインズが不況の原因として挙げていることの核心は、価格や賃金の「下方硬直性」ではなく、「流動性選好」という概念にあるのだということが発見されたのです。
北田「流動性選好」というのは、人には実は「貨幣そのもの」を欲望してしまうような選考構造(経済主体が複数の選択肢の中からある商品やサービスを選び、それを欲求すること)があるということですね。何にでも交換できる貨幣というのは、ある意味で一番流動 性が高い商品ですけれど、人は「流動性そのもの」を求めてしまう性質がある。(p266)

で、これがマルクスのいうところの貨幣の「物象化」「物神崇拝」なんだそうな。要は神さまみたいな位置に貨幣がある、という図式なんですよね。だから、マルクスはお金を貯めること自体が自己目的化してしまうという話をしているわけです。(p275)
で、お金を貯めるために節約するだけでは物足りなくて、資本として投下し、G-W-G’のサイクルを回そうとするわけだ。さらに横着すると❗G-G’という利子生み資本サイクル…自らは何にも生産しない…を回そうとする。
お金で持っていると、それは資本としても使える、増殖する(物で持っていると絶対に増殖しない)だから人はお金で持ちたがる…ということもあるわけだ。
 また、デフレであれば「金融資産」を持っている人はお金の価値が上がるので、だまっていても資産が増える。あと一般人も、賃金や年金は物価よりも遅れて変動するため、インフレよりもデフレを望むのだ。90年代にバブルが崩壊して以降、正規労働者は非正規に置き換えられ、賃金は上がらず、むしろ切り下げられる…って時に、物価が下がってくれたのでどれだけ助かったか❗てのが、労働者民衆の実感だろう。で、昨今は円安の影響もあって、食料品など輸入に頼らなければならない生活必需品がジリジリと値上がりしている(なのに賃金や年金は上がらない)すご~く痛手になっている。
 また、いったんデフレが始まると「合成の誤謬」…個人個人が合理的な行動を行うことが、かえって社会全体で悪くなること…もあいまって、だれもお金を使わなくなる。だからデフレが続くのである。

おまけ…松尾氏は「共産党宣言」でも「フランスにおける内乱」でも、「革命政権は中央銀行を国有化して信用を国家の手に集中するのだ」と言うんですよ。結局その場合、政府が通貨を自由に発効できるようになるわけです。(p291)という…確かに革命政権が中央銀行を制圧すれば通貨は自由に発効できるだろう(「内乱」の時代は、銀行券は金とリンクしてたハズだから、自由にいくらでも出せるわけではない)が、通貨を自由に資本に回さない、G-W-G’、あるいはG-G’に通過を供給しないという目的もあるのだ。そして通貨を「流通手段としてのみ使える通貨」=「労働証書(あなたはこれだけ労働したので、社会からこれだけのものを引き出すことができるということを証明するもの)」にすみやかに移行させるためなのである。ケインズのいう、総需要を増やすためにお金を発効するだけのハナシではない。

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