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「新選組」はどうなるか?

 さて今回の参議院選挙で特筆されるのは、山本太郎率いる「れいわ新選組」が(報道等では「れいわ」と略されており、これが定着するのだろうが、元号名は使いたくないので私は引き続き「新選組」と呼びたい。しかし「しんせんぐみ」って打ち込むより、「れいわ」のほうがカンタンなのも確かだ)ネットを中心に支持が広まり、山本太郎本人の当選はなかったものの、2名の候補者、それも重度の障害をもつ人を国会に送り込んだのである。

これは、快挙であります!
 多くの人がこのことについて書いている…ネットの「お友達」であるプレカリアートさんも山本太郎と一緒に日本を立て直そう! と、支持政党を共産党から「新選組」に変えたと言っている。SNSのお友達は、選挙区は自民党候補に入れたが、比例は「山本太郎」と書いたそうだ。「新選組」の主張はほぼ薔薇マークキャンペーン そのもの、あるいはそれをさらに精鋭化させたもので、薔薇マーク認定もやすとみ歩氏以外の全ての候補者が認定されている。
 単なる「反緊縮」的政策、格差是正、所得再配分政策を掲げるのであれば、程度の差はあれど共産党や立憲民主党、国民民主党と似たようなもの扱いだ…だが多くの無党派層、特にロスジェネと言われる人たち、これまで政治からないがしろにされてきた人達に届く言葉で「あなたは生きていていいんだ!」と訴える山本太郎…それは生活に直結する公約が、「生産性」だとか「効率」のためにあるのではなく、人間の尊厳のためにあるのだということ…に、多くの人が心を動かされたのである。最終的に資金を寄付で4億円集めたそうだが、その中には今日持っているわずかな所持金の中から千円、いや1万円!を出したという人もいるそうだ。
 もちろん選挙戦術も凄い…「拉致問題」と原発が専門のはすいけ透氏、元JPモルガン銀行で経済に強い太西つねき氏(いろいろな経済政策を動画で公開しているようで、観たことはないのだが松尾匡の政策とも近いらしい)、沖縄の創価学会員で、前の知事選挙で玉城デニー知事の応援をした野原ヨシマサ氏、元銀行員、コンビニオーナーでの三井よしふみ氏、元派遣労働者・シングルマザーでレイバーネット日本運営委員の渡辺てる子氏(社民党の大椿ゆうこ候補とかぶってるので私も困った!)などの、今問題になってることに対する「当事者」を選んだ。そして自民党が合区で減員になる議員の救済措置のために設けた「特別枠」2名を、ALSで体がほとんど動かないふなごやすひこ氏と、重度の障害を持つ木村英子氏をあてて、自らは比例3位になる…これは自らが確実に議員になることよりも、重度障害を持つ人を国会に送り込むことの重要性、メッセージ性と、山本太郎を応援したい人にハッパをかけるという意味もあった…という捨て身の戦術を取ったのである。
 「新選組」は政党要件を満たしていないので、選挙中はほとんどTVや新聞といったメインのメディアは取り上げない…もっぱら街頭演説と、それを録画した動画がネットで拡散されること、および週刊誌記事の電子版がポータルサイトで挙げられてようやく広まるといったものだ。選挙後は政党要件を満たすことになったので、山本太郎本人が「代表」ということで政治活動が報道されることになるが、その主張が”資本主義の根幹をゆるがす”からか、主要メディアには登場しずらいところもあるようだ(リテラの記事)本人は「放送禁止物体」として開き直っているようだが…
 
 さて「新選組」の今後だが、政党要件を満たすとはいえ、政党としての体はこれからである。綱領や組織もはっきりしていない…悪いことをした「党員」をどう処分するかとか、政党組織としては大切なことだ…そもそも今回の候補者が「党員」なのか?ということも怪しい。また、地方組織もなんにもない…政党立ち上げは山本太郎一人で行い、いわゆる議員・政治家は誰もそこに馳せ参じなかった…この辺は小池「緑のたぬき」百合子氏の「希望の党」と違う所なのだが、今のところ「新選組」もかつての希望の党と同じく、山本太郎の「私党」のようなものである。
 例えば立憲民主党なんかのように、綱領・規約を整備し、こつこつと地方組織をつくっていくのも一つの方法だが、世界に目を転じてみよう…オランダには「自由党」という一人政党があるそうだ。右派ポピュリズム政党でそこそこ議員数はいるのだが、党員は党代表、党首のヘールト・ウィルデスただ一人だそうだ。規約上そうなっているらしい…議員は自由党の同調者、サポーターという位置づけなのだろう。この組織を「未来の政党のモデルだ」と自賛する自由党議員もいる。ただオランダの法律では、政党助成が受けられないそうだ。
 さから「新選組」も既存のあり方にとらわれない、なんか市民運動かNPOの延長のような「党づくり」をしてもエエのではないだろうか?もちろん党の運営は「民主主義の原則」を徹底的に貫徹する…なんでも党員、議員、サポーターに開かれた討議でものごとを決める作風が必要だ。また、その方法はあくまでも山本太郎のキャラクターに縛られた政党しか出来ない…党の「発展」という方法ではかならずしもプラスではない。「反緊縮」を掲げてアベ政治、はたては小泉政権以降行われて来た新自由主義政策を転換し、息継ぎが行える政権ができるまでの過渡期の形態、ただしそれは議会内で台風の目となる…そんな政党になれば面白いだろう。

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