自民党が凋落した大阪
先日行われた第25回参議院通常選挙の、大阪府選挙区の状況を見てみよう…まず自民党だが、太田房江、元大阪府知事という知名度、実績等申し分のない候補者を擁立しながら、56万票の4位当選である。前回、前々回で自民党は76万票、82万票をとっていたのだが、前回から20万票も落としている。大阪府選挙区も投票率は49%程度と落ち込んでいるが、ポイントで―3.6ポイント、減った投票数は26万票くらいだから、組織票の自民党としてはすごく減っている。
対して維新のほうは、前回が2人合わせて140万票、今回も2人合わせて139万票と堅実だ…だが、総体として増えたわけではない。前々回の東とおる氏1人の得票は106万票、それに保守の「みんなの党」や「新党大地」の票を合わせても127万票となる。このことから、維新は6年前にすでに100万票超え、3年前に140万票もの票を集める力を有しており、これは最近に始まったわけではない。また今回自民党の票が維新に移ったわけでもなかろう。仮に自民党支持が維新支持に移っていたとしても、同じ分だけ維新を支えていた浮動票が維新不支持にまわったとも考えられる。
とりもなおさず、大阪の自民党の凋落はすさまじい…本当に体力を無くしているようだ。自民党大阪府連も凄い危機感を持っているだろう。維新ができて大阪で天下を取ってから10年、組織が維新に取られ、また「身を切る改革」その他で体力が弱ってきた、それが今年になって露呈したのが、春の大阪府・市長ダブル選挙の敗北であり、今回の4位当選なのだろう。
減らしたのは自民党だけでなく、公明党もそうだ。今回は現職の杉ひさたけ氏が59万票の3位当選…だが前回は68万票、前々回の杉氏は70万票である。前回より9万票ちかくも減らしている。今回、なぜか維新を意識して「身を切る改革…議員報酬20%返上」なんてことを訴えていたのだが、響かなかったようだ。ともかく組織票が命の公明党も減らしている、創価学会の掲げる理念と、現実の公明党の差がじわじわ来ているのではないだろうか。
ただそうは言っても、「新選組」から野原ヨシマサ氏という「刺客」を放たれた東京都選挙区では、公明党の山口代表は82万票とっている。公明党は前回が77万票、前々回も80万票とっているから、イザと言う時の「締め付け」はまだまだ効くのであろう…ちなみに野原氏は21万票で、当選はしないものの地盤も知名度もない割には得票しているが、公明党に仏罰を与えるには至らなかった。
対する立憲野党側だが、共産党たつみコータロー氏は38万票、前回は45万票も撮っているが、7万票も減らしている。前々回のたつみ氏は46万票だから、こちらも今回ガクンと落ちている。立憲民主党のかめいし倫子氏は36万票、国民民主党の13万票を合わせると49万票である。民主党・民進党の前回、前々回の得票は35万票、34万票だから、旧民主党の得票と考えればすごく”躍進”した!もっとも前々回は政権をうしなって直後、前回の現職は保守的なヤツだったので「安倍政権を許さない!」人たちからは人気が出なかったわけだから、知名度、地盤なしかつ投票率が下がって36万票を獲得したかめいし氏とその選対は大したものである。逆に共産党は前回、前々回は民主党・民進党に期待できない人の「受け皿」として得票もあがっていたのだが、今回は票も大幅に減らして、共産党「組織」の凋落が伺えるかもしれない。もっとも2010年は共産党の得票は37万票、前回、前々回が「民主党支持」から流れてきていた特殊情況が、ようやく今年になって「解消」されたとも解釈できよう。ただ立憲民主党、かめいし氏の”健闘”については、安倍打倒のため立憲野党の議席を守る!という大目的において、戦略眼のない投票行動をする人が相変わらず多いということも言えそうだ。
得票数の推移ををざっとみるだけでも、今後の課題も見えてこよう…維新は強く、今旋風を起こしているようだが、大躍進しているわけではない。組織としては3年前にほぼ固まっているのだろう。自民、公明は組織が弱っている、これはチャンスだ!だがこちらも共産党の組織が凋落している…力量のないところで、野党側が多数候補者を立てても勝てない。府知事・市長のダブル選挙でたたかえなかったことも踏まえ、きちんとした統一戦線、それも「リベラル」「左翼」の中で自己満足するものでなく、きちんと無党派層に訴えるものをつくらないとダメだ!ということである。
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