安倍だけが悪いのか?
日韓関係が悪化している。「徴用工」問題をきっかけに、日本は「半導体輸出規制」さらには韓国を「ホワイト国」から外す輸出管理強化を行うとしている。「輸出管理強化」の理由は明確に示されておらず、事実上の経済制裁、戦争の言葉で安倍政権は突き進んでいる。
先日の集会なんかでも、今の一線を越えた韓国敵視政策は安倍政権の特質…安倍政治が、相手を説得して議論を進めるというものではないこと、日本会議のようなイデオロギー団体を支持基盤にしていること…によるものだという論調が強かったし、韓国における「反日」行動も「反安倍」を掲げていることから、今進められている韓国敵視政策は、安倍政権の責任であり、日韓関係の正常化のためには安倍打倒が大切だということは必要条件であろう。
しかし、今進んでいる事態は、安倍だけが悪いのだろうか?
徴用工問題で韓国大法院が元徴用工に補償せよという判決を確定させた際、「これは日韓請求権協定を覆す判決だ!」などと朝日新聞などでさえも垂れ流す始末だった。何度も書いているように、日韓請求権協定でも個人の請求権は存在しており、個人が日本の企業を訴えて、日本企業に補償せよという判決が出ること自体、請求権協定違反でも何でもない。これは日本政府も認めている条約、協定解釈なのだ。だがそんな基本的な事実さえろくに報道せず、ひたすら政府や一部のコメンテーターによる「韓国(の判決)は国際法違反!」と繰り返し垂れ流される。だれもカウンターを起こさない。そして「約束を破る韓国を懲らしめろ!」「まともにつきあってはイケナイ!」などという「世論」がつくられる。事実、「ホワイト国外し」の輸出管理強化を行うに当たって経済産業省が行ったパブリックコメントには4万件の意見が寄せられた中、輸出管理強化に概ね賛成する意見が95%以上もあった(pdf)
単純に安倍だけが悪乗りして暴走しているのではない、韓国敵視政策を、民衆がしっかり後押ししているのだ。
慰安婦問題もしかり…2015年暮れの「慰安婦合意」なんぞ、当事者の意見も聞かずに勝手に「合意」したあげく、「これ以上文句を言うな!」とばかりに「最終的かつ不可逆的解決を確認した」などと文章にする、まさに「盗人猛猛しい」ことをやった。そんなものを、朝日新聞を始めとする多くのリベラル人士も支持したのである。
そして「慰安婦」を象徴するもの、思い起こさせるものの存在すら許さない…名古屋で開かれた芸術祭「あいちトリエンナーレ」での企画展「表現の不自由展・その後」に、慰安婦を象徴する「少女像」が展示されたことについて、名古屋市長、河村はじめは「どう考えても日本人の、国民の心をふみにじるもの。いかんと思う」などと述べた!そして「表現の不自由展」に対する攻撃が始まる…「撤去しなければガソリン携行缶をもっておじゃまする」などの、テロを明示する予告までなされた。そして「表現の不自由展」は中止に追い込まれる。
過去の植民地支配でかの国の人に多大な迷惑をかけ、苦しめたことを少しも知らず、反省もせずに日本は韓国と国交を持ち、隣国として付き合って来た…80~90年代にようやく少し反省し、謝罪のようなことをしたら「自虐史観だ!」などと文句を言われる…慰安婦問題なぞ、一旦は教科書への記述ななされるものの、「従軍慰安婦なぞいなかった」「ただの売春婦だ」というエセ言論がまかり通り、教科書からの記述が消えた…そのエセ言論に我々は対抗することもできず、あっと言う間に「慰安婦問題を言う韓国はケシカラン!」ということになってしまったのである。
韓国・朝鮮への植民地支配の悪を開き直り、あるいはあったことをなかったことにする「歴史修正主義」に対抗できず、韓国敵視政策をゆるしている日本民衆の全てが、今問われているのだ…決して安倍だけが悪いわけではない。だから先日の集会は、すごく「重い」のである。
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コメント
核兵器廃絶を日頃から叫んでいる左翼の方々が、核兵器転用可能な戦略物質の横流し疑惑がある韓国を必死にかばう不思議構図。
米国やヨーロッパ諸国クラスの優遇をやめるだけで、東南アジアの国と同じ待遇に落とすだけですよ?
これまでは顔パスだったけど、核兵器転用可能なフッ化物が行方不明になってるから、書類審査を厳しくしただけなのにね。
北朝鮮やイランへの核兵器拡散の可能性を放置することの方が問題でしょうに。
投稿: 通りすがり | 2019年8月10日 (土) 12時31分
■最近少し疲れて、日本の政治状況についてのコメントはさぼっていますが、あるみさんの主張に賛同いたします。
■日本の初等・中等教育の中で行われている歴史教育は、第一次安部内閣の辺りから、露骨に歴史修正主義の日本会議的な方向に偏り始めています。
■そのかいあって、近年、若年層の思想的右傾化が顕著です。
■勿論安倍や戦前回帰の政治を目指す保守政党が悪いのはもちろんですが、それを支えているのはまさに国民自身なのだということが問題の本質です。
■安倍同様、日本国民の多くがリトル・米国、リトル・トランプ的な極東における覇権主義を肯定的にとらえる風潮が問題だと考えます。
■一言付け加えますと、このような有権者国民の下でポピュリズムを肯定することは、私は出来ません。心ある政党は、街に出て国民に対する教育・宣伝活動を行うところから運動を再構築すべき時代なのではないでしょうか。
■ただ、残念なのは、既成の政党の中に信頼を置ける政党が、特に科学技術政策において、なくなってしまったことは悲劇だと思っています。
投稿: 近藤邦明 | 2019年8月10日 (土) 22時59分